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この作品は前アカウントで書いていた物です。かなり書き直しています。
照りつける太陽、肌を焼く熱気、響く怒号
いつもの風景いつもの日常。一つだけ違うとすれば休憩時間中に酸っぱい物がこみ上げてきたぐらいだろう。
「やばい…呑み過ぎた…死ぬ…」
二日酔い。昨日久しぶりに同じ高校の馬鹿やってた仲間に出会った俺は次の日仕事があるにも関わらずつい呑み明かしてしまっていた。それが今のトイレの惨状だ。
「はぁ…昨日に戻れるならぶん殴ってでも呑むのを止めるのに…やっぱ人生ってままならねぇなぁ…」
そんな事をぼやいてる俺は如月 樹貴、足場建設会社の一社員だ。容姿、性格、成績、何もかも普通の俺は…ああ、少し違うか。
体力と力だけは強かった。それはもうゲームのステータスで言う極振りってぐらい。だからこそ建設業でやっていけてるのだが、まぁ置いておこう。
酔いを紛らわす為に1人でそんなナレーションをしていたら休憩時間が終わっていた。
「もう少し休憩長くてもいいんだけどなぁ」
憂鬱な気分になりながらヘルメットを被りながら立ち上がった瞬間、衝撃と共に視界が揺れた。
「樹貴ぃ!いつまでへばってんだゴルァ!綺麗な姉ちゃんにアピールする為に店の酒全部飲み干して二日酔いにでもなったのかぁ??」
「社長…冗談きついっすよ。俺が女の人苦手なの知ってるっすよね?あと俺の頭が叩きやすいからって挨拶がわりに叩くの止めて下さいって。
俺は気にしないんすけどまた周りからパワハラって言われるっすよ」
そう言いながら振り向くとにやりと音がしそうな表情を浮かべた社長が立っていた。
「はんっ、パワハラパワハラ言うなら樹貴みたいにいっちょ前に働いてから言って見ろってんだよなぁ?
うちにはうちのやり方があんだからよ、8手も投げれねぇ新人がぴーちくぱーちく喚いたって屁でもねぇわな」
「そんなんだから新人が育たないんすよー、社長の考え方は古いですって。てか8手投げるとかあんま言わない方がいいんじゃないすか?確か本当はダメじゃなかったっすけ」
気分が悪いなか社長が昔の精神論を語り始めたのでつい反論してしまい、やばいと思った時にはさっきより強い衝撃が頭に走った。
「しゃ、社長、マジでやばいですって。今日の現場、高所なんすからもうちょい加減を…」
「ーーーーッ!!ーーーーッ!」
社長が何か言っているが二日酔いの頭をメット越しに殴られた事でくらくらしてしまい足場から足を踏み外してしまった。
安全ベルトを付けていたから吊り下がる際の痛みだけで大した事は無いだろうと思った俺が感じたのは浮遊感だった。
(あれ?おかしいな。なんで、なんで安全ベルトをしてないんだ?…あぁ、さっき休憩時間中苦しいからって外したんだったっけ…)
「……ゔぁ"ぁ"ぁ"ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
誰か分からない絶叫が二日酔いの頭に響く。誰が叫んでいるのかと思ったがどうやら自分の声みたいだった。
社長がケチって半分しか買わなかった安全ネットが貼られていない場所に落ちる。
(あー、結婚したかったなぁ…)
死ぬ寸前にそんな馬鹿な事を考えながら俺は意識を手放した。
閲覧ありがとうございます。ちなみに8手とはクサビ式足場の1800手摺の略です。足場の部材はトラックの荷台から上に投げて組み立てるのですが8手は安全面から投げてはいけないことになっております。まぁ主人公の会社では投げているのですが




