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名も知らない君に。  作者: つぼみどり
芽吹く
9/19

提案

たかが書類と思っていたが、なかなか量がある。

先生によると保護者会やら職員会議だかで使う教員用の資料らしい。

紙はページごとにそれぞれ周りの机の上に置いていた。

その膨大な量の紙を五枚一組で綴じては積み重ねる。


三人で進めてから三十分ほど経ったが

まだ三分の一程度しか冊子は完成していない。

気が遠くなる作業だと残りの紙の枚数を見て実感させられた。


ホチキスの芯とホチキス自体は机の引き出しから取っていいと言われたが

この使いかけの芯の量だと、どう見ても足りない。

それはもう僕らが使う前に半分近く消費されていた。


「芯、無くなりそうだね」

カチカチとホチキスの無機質な音が教室内に響く。

声を発したのは僕の前に座る若山さんだった。

身体を伸ばす呑気な彼女を横目に僕は話す。

「どうする? 今職員会議で

職員室は入れなさそうだし」

その僕の言葉に若山さんは手を動かしつつそうねと応じた。

僕達の間に座る呑気な彼女は腑抜けた声を

息に乗せて喋り出す。

こうしていると病弱というより健康的に見えるのだが。


「そうだ。ついでに息抜きしようよ」


彼女は勢いよく立ち上がり机を叩いた。

その衝撃によって椅子ががたんと音を鳴らす。

目を輝かせる彼女に、僕は問う。

「息抜き? 」

若山さんは僕の方をちらりと見てから何がなんだか、と言いたげな表情を浮かべている。

彼女は吐息がかかりそうなほど僕の顔に近づきにぃっと笑う。


「外に出よう」


僕らがその言葉を理解する前に彼女は前を既に歩き出していた。

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