沈黙
その入学式から一週間が経った。
委員会も決まり、僕はなんとなくで
学級委員を務めることになったが
仕事は特に何も無い。というのも、男女一人ずつ
構成される各委員会だ。僕の仕事の分も
もう片方の学級委員、若山さんがしてくれている。
そういうと僕が仕事を押し付けているみたいで、
悪者のように感じるかもしれないが、
僕が仕事をする前に終わらせて
しまうのだから仕方がない。
元々仕事の少ない僕らの役目は今のところ
雑用係、と言ったところだろうか。
今もこうして僕ら以外誰もいない教室で
机を三つ並べて書類を綴じる作業をしている。
こればかりは二人でやるのしかないのだが
何故か現状は三人いる。
僕の前に若山さん、そしてその間には何故か彼女がいて、女二人に男一人というなんとも奇妙な構図だ。
カーテンが閉まっていても明るい昼時。
本来ならもう僕ら新入生は帰っている時間なのだが。
お互いの息遣いが聞こえるくらい教室内は静かだった。
「……ねえ」
その重苦しい沈黙を破ったのは僕だ。
「なんで……こうなったの」
僕がそういうと彼女はくすくすと笑う。
「樹くん、いちいち理屈なんて
考えてたら息が詰まっちゃうよ? 」
ね、と同意を若山さんに求める。
どうやら彼女達は前から友人関係にあたるようだ。
彼女とは反対に髪を一つに結い上げた若山さんは冷静に答える。
「理屈も何も、作業をしていたら椿が
プリントとりに教室に来ただけじゃない」
呆れた様子で答える若山さんに、彼女はそうだっけと恍ける。
「ごめんね千春ちゃん。でも樹くんが
学級委員やるとは思ってなかったなぁ」
「誰も手を挙げなさそうだったからね」
僕の答えに彼女はふーんと適当な返事をする。
「まあ実際、雑用係だしね」
若山さんがそう付け加えると確かに、と彼女は笑った。