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名も知らない君に。  作者: つぼみどり
春の訪れ
3/19

突然

中学時代も僕は友達の多い人間じゃなかった。

ただ、少ないとも言えない。友達が居なかったと表現するのが正しいだろう。

誰かの傍にいたら迷惑がかかるのではないか、そんな

気持ちもあって誰とも関わろうとはしなかった。

勿論そんな僕に興味を示す人間や関わってくるような物好きなんていうのも居なかった。


今までもそれはそうだし、これから先もずっとそうだろう。

きっと僕は誰かを愛すようなこともないし僕が誰かに愛されることもない。

人間関係で揉めるようなことだってないから居もしないような神様を恨むこともない。


高校生になったとはいえ、僕が僕で在る事には

これから先も変わりはない。


ただ、何かの拍子に僕の運命が変わるようなことでもあれば。そう例えば恋愛とか。

そんなことがあれば僕の中身はほんの少し変わるかもしれない。


ひらりはらりと舞い散る桜の花弁にそんな想いを馳せてみる。


澄み切った青空に、ソメイヨシノの白みががった桃色の花弁はよく映えていて不思議とこれから僕にいい事が起こるのではないかという夢さえ見させてくれる。


そんな夢から僕を現実に引き戻したのはこれから

何百回も聞くであろう鐘の音だった。

それと伴いがたがたと座席に座る音や教師がドアを開ける音もする。


「これから君たちは入学式で──」


スーツに身を包んだ若い女性教師が滑らかに

話を進める。

その教師の優れた容姿に見惚れ、鼻の下を伸ばす輩もいた。

話が終わると体育館に移動するよう放送が入る。


長く脈絡もない校長の話とか、やたら声の大きい生徒会長から新入生に向けての話とかとにかく退屈な入学式だと思っていた。

それだけならいい。耐えられるものなのだが

ただ、どうにも腹が痛い。

こっそりと列から抜けて適当な先生に声をかける。

「腹が痛いんでしばらくの間トイレ行ってきます」

先生は心配そうに僕のことを見つめ、了承してくれた。

腹痛自体はトイレに行ったら治ったが今更

あの重苦しい空気に飛び込むのは僕にはできない。


なんとなく校内をふらついて時間を潰そう。そう思った。

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