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荒廃ジュブナイル  作者: 乃々森愛支
6/7

長い始まり

 「お、お疲れさまです。み、皆さま」

「どもー」と莉子だけが特殊者の受付に応じた。

「早くしてくれ。会長が待ってる。分からんか」 「は、は、はい」

凌癸は受付の少女を焦らす。


「あ、あ、伝言がございます」 「何だ?教えて。急いでる」

ファンテが歩みを止められ、少しムッとしつつ応答した。

 「会長様がたった今お出かけに。急用ができた、と」 「それで」


「すぐ戻るから、部屋に入っていなさいだそうです」

全員が顔を見合わせた。会長が私達に連絡せず突然出ていくのは、よほどのっぴきならない事態が発生したのか。


「もう会長もピンボケなのかなぁ」

「不吉。やめろ、人類同盟がピンボケだなんて」

上昇する四角い塊に乗り込んだ莉子は、下らない妄想を抱き始める。

「だってさぁ、必ずあたしらに言ってくれたじゃん。忘れちゃったのよ」

「忘れただけで、その物言いか。言いがかり、そのレベルだな」

「いいよ、別に言いがかりで」 「何が、言いたい」

「え?ひまーーってこと」

ファンテが深々とため息をついた。 「頭に、何も、無さそうだな」


「一体何があったんだろうか」凌癸はユタにぼやいた。

「さあ。でも、大変ってことだよ」

「だろうな。俺達の仕事、増えるかな」

「そりゃ困るね。今でもういっぱいいっぱいなんだから」

「まあなあ」

凌癸は会話しているのにどこか心にあらず、といった感じで自分に返すのを、

ユタは鋭く感じ取った。


人類同盟の本部はこの高層ビルの五階分を占めている。

そのうちの三階__ビル全体の18階に位置する居住スペースに、四人が入った。


「お疲れさま。だいぶ派手にやったって聞いたけど」

「間違いじゃないです」

先に来ていた女性に、凌癸は苦笑いして答えた。


 メイサ・ドューナー。人類同盟の古株で、参謀から実戦まで大抵のことをこなしてしまう、超のつくエリート。

その昔、警察でアンドロイドの対策をしていた経験もあるらしい。

 四人からみれば「強くて優しいかかぁ」という認識だ。


「あなたたち、会長の急用に心当たりはなくて?」

「ないですねぇ。メイサさん見たんですか?会長のこと」と莉子。

「ええ。でも会長に呼ばれて、来たらもういなかった」

「つまり、俺らがアンディーの駆逐から帰ってくることを見越して、受付のヤツに伝言したわけだ」

ユタは凌癸の言葉にうなずいた。

「そしたら、連絡の手間が、省けるのか」ファンテが納得した。


「メイサさん、会長は何て」莉子が訊く。

「何があってもとにかく急いで来いって。とても慌てていたわ」

「情報が、無さすぎる」

ファンテがムッとする。

「それだけ急いでいたってことか」凌癸はいよいよ会長を不審に思った。


「あと、救急車のキーを取ったって、受付の子が」

「何で?警察に、頼めばいい」ファンテが眉をひそめる。

「それが出来ない、特殊な状況だってこと?」

「例えば」

「さあ。アンディーとか」

「なら普通にホバーカーでいいだろ。人間か、動物か」

「どうなんだろう」

莉子と凌癸は唸る。


「ユタはどう思う」

「ど、どうって…なんも」

ユタはそう言いつつもぽつぽつ持論を漏らした。

「さっき凌癸は人間か動物かって言ってた。救急車ならまず人間だと思う。

だって動物だったら特殊車両を使えばいい」

「あれか。まあそうだろうな」凌癸が頷く。


「うん。僕ならそうする。重要なのは、人類同盟の会長が行った、ってこと。

普通に怪我した人間とかなら警察だよね?でも違う。

警察に話が行ったんだけど、この事案なら人類同盟が適任、てなって出払ってなかった会長が行ったんじゃないかな?

でも、どんな人なんだろう。自分をアンドロイドだって言って憚らない人?」

ユタはそこで口をつぐんだ。

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