友以下、家族以上
アンドロイドの駆逐から数十分。
ユタと凌癸の懸命な説得により、警官と女子ふたりを何とか納得させることができた。
「もういいか。帰るぞ」という凌癸の声に、
「うへー、なんでもあんたが決めようとしないでよ。もうちょっと」
「アンディーは、どうする?はまらない。新しい車を、買え」
と、いつもどうりの返事が帰ってきた。
凌癸とユタは最後の強行手段をとった。
「じゃ、俺達だけ帰る」
「…うん。そうするよ」
そう言うと、二人は大人しくついてきた。
「こいつらもガキだな」
「それ、いっつも言ってる」
と重いトランクを持ちながらぼやいたユタに、凌癸ははっとした後、顔をしかめる他なかった。
人類同盟で最も大きなワゴンホバーカーにぎゅうぎゅうと四人|(と、アンドロイド)が詰めこまれた。
「せっま。ファンテの言う通りさー、新しいの買おう?」
「なんで」 「今、あたし言ったよね。まあいいよ。あとさ、皆成長期だし」
「お前の成長期とっくに終わっただろ。ユタぐらいじゃないか」
「…ご、ごめん」
トランクを抱き締めるようにして抱え込むユタは、確かに青年とは呼べない、
と心の中だけで凌癸は思った。
「会長、多分、怒ってる」
「十中八九そうだろうよ。まあ、俺らが悪いんだし」
「でも、ちゃんと、殺ったじゃないか」
「ファンテ、世の中には規則ってもんがある。いっつも破ってばっかりじゃいけないだろ。たまに、怒られなきゃ」
「たまに、じゃなくて、いつも」
「まあな。言葉の綾だよ、そんなもの」
ファンテはホバーカーの微かな揺れに自らも連動させながら、「ほお」とだけ
呟いた。「言葉の綾」の意味が分かっていないようだった。
「あー、もう、行きたくないわー」
莉子がホバーカーいっぱいに響く声で愚痴を吐いた。
「お前、今さっきファンテに言ったことをもう一度__いや、バカだから聞いてなかったか。なんでもない」
「あ!?もっかい言ってみな!?」
「え?__バカ」
「や、やめようよ…無意味だよ…」
「友達に、バカかって、それはいけない!」
もうこうなると誰にも止められない。
凌癸は早く着くようにと、ホバーカーの速度を規制ギリギリまであげた。