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荒廃ジュブナイル  作者: 乃々森愛支
2/7

人類同盟

 幸せそうな家族。

ふらふらと街の雰囲気を楽しむカップル。

まっすぐ視線を泳がさずに歩むサラリーマン。

大声で笑う外国人の観光客。

 人々が互いに干渉しあうわけでもなく、街のほんの一部分に溶け込み、自分たちの行きたいところへ行きたいように行く…

大都市で繰り広げられる、毎日の大して変わらぬ風景。

 いわゆる「日常」。


 そんな日常の一コマに。

「皆さーん、人類同盟でーす。

アンドロイド発見につき、ただ今からアンドロイドの駆逐をはじめまーす。

皆さん、動かないで、アンドロイドに頭ぶち抜かれないようにしてくださーい、ほら、早く!」

 少女のけたたましい声ががあん、と響いた。


「アンドロイド」 「人類同盟」 「動かないで」この三つの言葉で、懸命な人々がとっさに動き出した。

 全員がしゃがみ、そして人類同盟の姿を探そうとする。

「はーい、写真撮ってもいいから、自分の身は自分で守る!いいね!

ちなみにトウキョウ放送局のビル近くにいるよ!」

さっきと同じ、元気な声が喧騒に突き刺さる。


若い女性たちが一気にその声に反応した。

どこ? あれ? いや、違う… 絶対あれだって!

一気にざわめきが増え始めた。

「ぽんこつ凌癸!どこに目をつけてるの?

アンディーは10時、看板に和久井ビルってあるやつの屋上!」


 その声が聞こえた途端、黒い影がびゅっとスクランブル交差点の横断歩道へ

飛び出した。

「感謝する、莉子」

青年は横断歩道の向こう側の少女__さっきから大声を出している__莉子へ、

誰にも届かない位のわずかな声で呟いた。


青年__凌癸が腰のホルダーから光線銃を取り出した。

その姿に気付いた彼のファンから嬉しい悲鳴。

 「ファンテ!」 「分かってる、気付いてる」

莉子が一般人に紛れてしゃがみ、待機していたファンテを呼んだ。

ファンテは自分のショルダーバッグから鳥のくちばしのように銃口の尖った、光線銃を出す。

「いける?」と莉子。

「出来る、ナメるな」とファンテ。ゆっくり立ち上がる。

ファンテのその銃が、凌癸の狙うアンドロイドを照準に定めた。

「行け」 彼女の真っ白な髪が、美しく風に揺れた。


 そんな人類同盟がアンドロイドを駆逐するのに跳梁跋扈する最中、

交差点がわずかに見える位の裏路地で、

彼の頭にはいささか大きすぎるヘルメットを被ったユタが、うんざりした顔で警察を呼んでいた。

「もう勘弁してよ…なんで皆そんなに行動力の塊なの…

また会長に怒られるってば、絶対そうだよ」

「ったく、人類同盟って、人類のためになってるから悔しいよな、

あーあ、僕、なんでこんなちんちくりんな組織に入っちゃったんだろ」

やだやだ、と鬱な思考ばっかりが、彼の頭を占めていた。


 パスッ、という乾いた銃声。ファンテの銃からだ。

ファンテの銃はショックモードと光弾モード、二つのモードにショルダーバッグについたボタンで切り換えられる。

今撃ったのはショックモード。

当たればアンドロイドの回路をショートさせられる。

ファンテの狙い通り、アンドロイドの右耳に電気が直撃した。

 「よっしゃ!」 「喜ぶな、まだ」

はしゃぐ莉子をファンテが母__あるいは父のように、優しく宥めた。

 「後は頼む、凌癸。ユタ、まだ、来なそうか?」

凌癸がファンテの叫びに反応し、ユタが裏路地から歩いてきた。

「うん。あと、五分くらい?」 「上出来、良いな」 「そう?」 「うん」

ファンテが微笑む。

「もう、こうなったら、私達の、勝利だから」

ファンテの指差した先に、疾走する凌癸の姿があった。


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