4・5話
『──という事で、基本的な手続きは終了です。人間の役所などで必要な書類や戸籍は後々お送りしますね』
「クロノス様、ありがとうございます」
一応、代理とはいえ地球の神様っぽいので様付けしてみた。
話してみると、とても丁寧で良い感じの好青年だし。
若干、ブラック企業に勤めている、独特の死相が見えているのが玉に瑕である。
『ははっ、様は止してくださいよ。そういうの、ガラではないんです。それに、キミ達も異世界序列に連なるエーデルランドの管理者なので、立場は私と一緒ですよ』
序列? またその言葉が出てきた。
良さそうな神様だし、ここは聞いてみるか。
「あの、異世界序列とは何でしょうか? まだ異世界体験してから一日も経ってないので……」
『ああ、そうなんですね。では説明しましょう。──といっても、長かったり、実際に体験してみないと分かりにくい事もあると思うので、リラックスして話半分で聞いてくださいね』
クロノスさんは懇切丁寧に説明してくれた。
──約36万ある異世界。
神の国、妖精の国、巨人の国、悪魔の国、死者の国など多種多様な異世界。
それらに序列が付けられている。
地球も、その序列の中に含まれ、割と上位にいるらしい。
……というか、フリンという神様が実在していて驚いたレベルだったのに、巨人とか悪魔まで本物がいるのか……。
『というわけで──異世界序列第二位、巨人の国スリュムヘイムは、スリュムという霧の巨人の王がいて、これまたのじゃのじゃうるさくて──』
……話が長い。
どうしよう、こちらから聞いてしまったから、もう結構ですとは言いにくい。
『──であって、地球の娯楽などが評価されています。この日本も異世界の方々に大人気ですね』
序列の上げ方とかサラッと言っていた気もするが、これも実行する時に思いだして考えれば良いか。
『ただ、集まった力ある存在達が自由気まますぎて星破壊なんて事もありえるので──』
あ、これは耳が痛くて聞き流せないやつだ……。
変な脂汗が出てきた。
『映司様や、フリン様を含め、地球滞在中はその能力を人間か、それよりちょっと強い程度に制限させて頂いてます。フリン様のお爺様には大変お世話になりましたが、これだけは決まりですので』
「わ、わかりました。いいよな、フリン?」
「うん、今も異世界への干渉力は残ってるから問題無いです!」
つまり、地球ではチート発揮できないが、異世界に降り立てば再び俺TUEEE出来るという事だろう。
俺も、ちょっとした拍子で地球全滅とかやらかしたくないし丁度良い。
……それと気になった事がある。
フリンのお爺さんは、さぞ名のある神だったのだろうか?
後でフリンに聞いて──いや、やめよう。
死んでしまったお爺さんとの思い出が蘇ってしまうかもしれない。
『では、これで地球に住むことは問題ありません。フリン様の滞在に必要な資金は──日本円を口座に入金でよろしいでしょうか? ご希望があれば純金や宝石の現物も可能です』
フリン用の資金っておまっ……身分的にはどこかのお姫様みたいなものなのだろうか。
疑問系で聞かれても、判断が難しいぞこれ。
「えーっと、それはお任せで──」
と最後まで言おうとした瞬間、妹の風璃が押しのけてきた。
まるで人間火力発電所のようなパワーで。
「現金!? 純金!? 宝石!?」
金目の言葉を早口で捲し立てる風璃。
この守銭奴っぷりさえなければ、裏表も無く良い妹なのだが……。
『え、あ、はい。その世界で必要なものを用意するのも私達の仕事なので』
「すごい! 神様すごい!」
頬を赤らめ、発情したような表情で画面に食い付いている。
このまま眼に¥マークか、ハートマークが入っていても驚かないテンションだ。
薄い本なら、間違いなく危ないお小遣い稼ぎ枠。
色々、兄として心配である。
『あ、最後に。異世界に災いをバラ撒くと言われている、神殺しの狼にだけはご注意ください。天文学的な確率なので、滅多なことでは巻き込まれないとは思いますが──』
「そんな事より、神様の年収っていくらなんですか!?」
何という事を聞いているんだ我が妹は。
たぶん重要そうな話だったのに、酷い遮り方である。
『で、では地球をお楽しみ下さい。また何かあったら、いつでもどうぞ』
ちょっと引き気味な表情で消えたクロノスさんの映像。
何か悪い事をしてしまった気がする。
きっとすぐ胃に穴が空くタイプだ。
「風璃、相手は一応神様なんだから……」
「ごめ~ん。でも、神様って信心がどうとか、力だけがすごいみたいなイメージだったから……。あたし、結婚するならお金持ちの神様も良いと思うの!」
ダメだこの妹、早く何とかしないと。
……いや、まぁそれはそれとしてだ。
色々と話を聞いていたら、俺達の異世界エーデルランドの序列を確認しておきたくなった。
悪い異世界ではなさそうだったし、序列も大丈夫そうだが……一応だ、一応。
そう、一応確認しておくだけだ。
色々とやってしまった事がフラッシュバックしてくるが、たぶん気のせいだろう。
「な、なぁ、フリン。エーデルランドって異世界序列で何位なんだ?」
「ふぇ……?」
話が長かったのか、フリンは若干眠たそうにしている。
やはりまだ子供なのだろう。
そう、無邪気な子供だ。
色々疲れただろうし、この後は寝かせてあげてしまった方が良いかもしれない。
「んーっとね、上の方からの検索では~圏外みたいです」
「ま、まぁそうか……トップ10だけ発表のランキングとか結構あるもんな、うん」
何か嫌な予感がした。
「──下から検索すると~。あ、出た出た。異世界序列で約36万位中──最下位になりました!」
無邪気な答えが痛かった。
……まぁ、あれだけやらかした後に、リセットかませばそうなるよな。
「よし、フリン! 今日は寝て、明日から本気を出そう!」
「ふぁ~い」
傾国幼女様は、眠そうに欠伸をした。
程々のやる気で、しょうがないから最下位から成り上がるか。
【異世界エーデルランド】
【現在、異世界序列359605位中……最下位】
【最下位実績ボーナス解放】
【スキル:巻き込まれ体質を三段階強化……SR巻き込まれ体質】
【新規スキル獲得】
【シンカ:消費コスト─※※※※※※※※※※※─】