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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック
第一章 異世界を手に入れたので、名所や特産品使って序列300000位上げ(仮)

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26話 辿り着いた桃源郷(手錠)

 勝利者……そう、俺は勝ったんだ。

 この長くけわしい巨人族の試練に打ち勝ち、真の勇者となる資格を得た。

 普通の野郎共には為し得ない権利。


「く……くくく。ふふははは!」


 この遥か高み、自然と笑いが漏れてしまう。


「エイジ殿、公共の場ではお静かに」

「あ、はい。すみません」


 ベルグと一緒に立つこの場所、それは伝説の混浴というエルドラドの脱衣所だ。

 ここと、戸一枚隔てた空間に待っている。

 乳! 尻! 太股!


 おっと、いかんいかん……。

 混浴だとは知らずに入った風体を装わねば。

 あくまでクールに、悪魔のように偽るんだ。


 チェック。

 服は脱いでいる。

 フリン対策に腰にタオルも巻いている。


 表情もシュッと、シュッとだ!

 自然に……江河に広がる大自然の水墨画のように、何もかも達観した自然体。

 ラッキースケベの神よ、力をお貸し下さい。


 俺は、戸に手をかけた。

 ──いざっ!

 勢いよくスライドする楽園への扉。


 その先に見えたモノは──。


「あえ?」


 男、男、男、お婆ちゃん、男、おばちゃん、男、お婆ちゃん。

 うら若き女性はいなかった。


「どうした、エイジ殿?」


 全裸にヘルメットのベルグが横に立ち、フルチンで聞いてくる。

 俺もそれに問い掛ける。


「ここ、混浴だよね?」

「うむ」

「混浴って、女の子と一緒に入れる温泉だよね?」

「うーむ……どうやら若い女性には不人気のようで、結局は男湯みたいな感じになってしまっているのだ」

「しょんなぁ……」


 俺は力無く倒れ込んだ。

 いや、でもそうなると女性陣はどこへ……。


「ちなみにオタル達は、普通に女湯へ行ったから安心するのだ」


 絶望の中、とりあえず身体を洗ってから湯船に浸かることにした。

 残念な事は残念だが、目の前に温泉があるのだ。

 とりあえず、入らなければいけないと日本男児の血が言っている。


 途中、おばちゃんと目が合って、照れながら視線を逸らされてしまった。


「死にたい……」

「どうしたエイジ殿、何か悩みでもあるのか?」


 結局、ベルグと仲良く並んで湯船に浸かっているのであった。


「フェリの素肌を見られるかなーと思ってて……」

「なんだ、そんな事か。それなら、代わりに我の素顔を見せてやろうではないか! エイジ殿のお望みなので、特別にな!」

「……いや、出来れば女の子のですね」


 ベルグは、謎の煙を出しながらヘルメットを複雑に稼働させ、ハゲ頭だと思われたパーツが割れて素顔が現れた。

 そこにいたのは、艦長や、司令官という肩書きが似合いそうなフサフサ美中年であった。

 無駄に顔が整っていて、瞳がキラッキラしている。


「ベルグ、中身は意外とイケメンなんだな」

「ふむ、これをイケメンというのか……。我としては威厳がいまいち足りぬ。厳つさがもっと欲しい所だな」


 何だろうこの雰囲気。

 ホモルートにでも入ってしまうのだろうか。

 何か不思議とドキドキしてき──。


 いや、違う。

 視界の隅に映っていたのだ。


「あ、エイジ様。偶然ですね。偶然、ぐ~ぜん混浴でお会いしましたね」


 バスタオルすら付けていない、一糸まとわぬ姿のオタルが混浴内に入ってきていた。

 さすがに吹き出しそうになった後、慌てて目を逸らした。

 中学生くらいでまだ小さいとはいえ、女の子の裸というのは、ちょっと色々とまずいと思うのであった。


 あからさまに見せつけられているので、湯煙ガードや謎の自然光が無い今は描写すら危うい。


「お、オタルさんんんん!? ど、どどどどどぉおおしてここに!?」


 凄まじく冷静に、オタルに向かって問い掛けた。

 大丈夫、誰から見ても冷静だ。


「ふふ。エイジ様も、結局は胸以外もちゃんと見てるじゃないですか」


 あ、ああああああかん。

 いいいい色々とあかん。

 ききっきいいいんきゅう自体だ!


 俺はとっさに転移陣を空中に作りだし、それに向かって飛び込んだ。

 座標は──この辺りを適当に指定した。


「あ、逃げられちゃった」


 ……ふとオタルは、周りから集まる視線に気が付く。


「う……」


 急に恥ずかしくなり、表情は自信満々のドヤ顔から180度変わり、残念な涙目に。

 軽いパニック状態に陥り、とっさに真っ赤な顔を両手で隠した。


 ──ベルグから、そっと手渡されるコスプレマスク。


* * * * * * * *


「ふぅ、危なかったぜ……フリンに顔向け出来ない所だった」

「私にです?」


 何故か聞こえてくるフリンの声。

 これ、どこに転移したんだろう……?


「映司お兄ちゃん、ここ女湯なんだけど……」


 木桶を構える全裸の風璃。

 小さい頃と変わらず、いつも通りぺったんこである。


「エイジ、これは悪戯ではなく犯罪だ。罰しなければならない」


 フェリ……嗚呼、ボリューミーな二つの……。


「ウボァッ!?」


 お目当てのフェリを視界に入れた瞬間、俺は神殺しのエーテルに吹き飛ばされて成層圏近くまで上昇していた。

 そして、全裸(フルチン)のまま街の中へ落下した。

 ──その後、警官に捕まっていた所を、オタルが事情を話して何とかしてくれた。


 何故か手にベルグのコスプレマスクを持ち、その顔は真っ赤だった。


* * * * * * * *


 後日。

 

 家の女性陣の誤解も解こうとしたが、なかなか機嫌が直らずで、家での風呂の時間は手錠が装着される事となった。

 ちなみに、あのスパ的な物も機械部分を魔法でアレンジし、エーデルランドに取り入れられた。

 アミューズメントパークの如く繁盛し、異世界序列の順位に貢献してくれた。





【異世界エーデルランド】

【現在、異世界序列53381位→50121位】


【名所獲得:巨人式混浴温泉】

 とある巨人の国発祥とされる温泉。

 特徴としては、ジムや球技場等の施設があり、食事も巨人式の娯楽性が高いものとなっている。

 過去に覗きが発生した時は、防犯装置によって犯人は即逮捕されたという話もあり、セキュリティは万全であるらしい。

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