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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック
第一章 異世界を手に入れたので、名所や特産品使って序列300000位上げ(仮)

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20話 ハッピーエンドへのサインポスト(2)

 私──フリンは地球にきて、しばらくした後に彼と出会った。

 彼は小学生で、映司のお隣さんのサラリーマン家庭の息子だった。

 映司達がいない平日の日中など、色々とお世話になっている。


 名前は眞国(まぐに)。ちょっと変な響きではあるが、性格などは至って普通。

 学校での成績は優秀……いや、優秀すぎたらしい。

 全ての教科において飛び抜けてナンバーワン。


 よく少女マンガに出てくる完璧王子様のようなスペックだった。

 だが、性格は普通。

 そんな普通な彼が、天才的なスペックを持ったらどうなるか。


 答えは、眞国が平日の日中に家にいる事で、既に出ている。

 優秀な人間は、優秀な性格まで求められる。

 優秀な性格とは何か?


「だああああああああああ!! このクソゲーぶっ壊してやるです!!」

「お、落ち着いて!」


 百回近く繰り返した、理不尽な攻撃によるゲームオーバー地獄。

 運良く難所を抜けても、増えて行く敵と、無常にそれを打ち砕く一発のドット弾。

 そして、また時間をかけてのやり直しだ。


「このトーヘンボク円盤に足を舐めさせてやるんです!! 真上からバキって! バキッテエエエエ!!」

「何か言葉遣いまで変になってるよ!?」


 風璃のアレや、オタルの毒舌の影響かも知れない。

 そうだ、眞国の言うとおりいったん落ち着こう……。


「ふぅ~、ふぅ~っ」


 獣の威嚇の如く鼻息が出てくる。


「どーぅ、どーぅ」


 眞国も、それに合わせてか調教師みたいな落ち着かせ方である。

 これはいけない……神としての威厳が。

 何とかせねば!


「ま、まぁ茶番はここまでにしておきましょう。私には腹案があります」

「あ、それ政治家おとなが言うフラグ……」


 ぐぬぬ、何も考えていないのがバレてしまった。

 ここは……困った時の……。


「ちょっとトイレ!」


* * * * * * * *


「というわけで、ユグドラシルお願いです!」


 トイレの個室の中で浮かぶウインドウ。

 映るのは困り顔のオペレーター。


『えーっと、ゲームがクリア出来ないから助けて欲しいと……』

「うん!」

『そうですね……ゲームの改造等というものは容易いですが……』

「出来るんです!?」

『それではゲームに対して失礼になります。クリア出来るゲームなら、改造せずにクリアするのが良いでしょう。私もそのゲームクリアしましたし』


 意外とプレイされてるんだ、このゲーム……。


『ですが、フリン様にとっては少し時代が違うのかもしれませんね。分かりました、ゲームの難易度はいじらない程度に異世界バージョンアップしましょうか』

「やったー!」


* * * * * * * *


「フリンちゃん、何かゲームが……」


 部屋に戻った私は、恐ろしい光景を目の当たりにした。

 ゲームオーバー画面で放置していたのだが、その場面で倒れている主人公がモニターの外に出ている。

 まるで実在の人間のようにリアル……。


「え、えーっと、思い出した。これインターネット経由で自動バージョンアップしたんです……裸眼3Dってやつです」

「そ、そうなんだ」


 部屋の中心に、吐血しながら『弾を避けるんだ……』と言い続ける主人公。

 異様な状態である。

 もしかして、ユグドラシルは見た目だけいじったのだろうか。


 年齢制限がさらに上がりそうだ。

 ちょっと引き気味だった私に、眞国は冷静な顔を向けてきた。


「フリンちゃん、僕考えてみたんだ」

「どうしたです?」

「このゲームのクリア方法を」


 もうあれだけ敵の弾を突破出来ないと試したのに、まだ何か手があるのだろうか?


「ちょっと僕にプレイさせて」


 そう言うと、眞国はコントローラーを持ちゲームをスタートさせた。

 あの地獄のアクションクソゲーの方を。

 主人公に必要最低限の動きをさせて、その場からほとんど動かずに弾だけを避けている。


 スタート地点なので、敵が一体のみで攻撃をしのぐことは出来ている。

 だが、その先はどうするのか。


「眞国、このままじゃタイムアップになっちゃうよ」

物事ゲームを攻略すると言う事は、多様性と洗練性だと思うんだ。僕達はまだ簡単な事を試していなかった」


 とても小学生とは思えないような言葉遣いで進めていく。


「この減って行く数字──ゼロになったらタイムアップとは、どこにも関連付けるワードは出てきていない。アクションゲームという枠組みの錯覚に囚われていたんだ」


 数字が減り続け、ついにはゼロになった。


「こ、これは……」


 その瞬間、画面外から他のキャラらしきドットが現れた。

 そして『助けに来たぞ!』の文字が表示されてステージクリアーとなった。


「後は簡単、制作者達の姿がゲームから透けて見えてくる」


 そこからはトライアンドエラーの繰り返しだった。

 アドベンチャーモードの理不尽な選択肢によるBADENDと、アクションモードによるトンチじみた開発者との知恵比べ。

 だが、前と違って無理ゲーというものではなかった。


 やっていけば何とかなるという、着実に進めていけるゲームとなった。


「眞国、すごいです! ハイスペックです!」

「すごい、か。学校じゃ、その言葉は気持ち悪いとしか意味を成さなかったかな……」


 眞国は顔をうつむけて、ぽつりぽつりと語り始めた。

 その表情は、私には分からない。


「テストで百点が続いた時はカンニングかと疑われ、百メートル走のタイムでは奇異の目で見られた」


 何故かは分からないが──私はその言葉を聞いていて、耐えられなかった。

 そして自然と感情的な、大きな声を出したい衝動が溢れてくる。

 もしかしたら、これは映司の影響かも知れない。


「私は……、ッ私は! 良いと思ったものは称賛し、駄目だと思ったものは全力で止めてあげます! だから──」


 私は、うつむいていた眞国の顔をグッと掴み、無理やり真っ正面に向かせた。

 ほぼ密着状態で対面する2人、眞国の瞳には私が映っていた。


「眞国がつまらない事でめげているのを止めさせます! 死んでも眞国を元気にしてみせます!」

「う、うわわっ!? ちょっとフリンちゃん!?」


 顔を真っ赤にする眞国。

 そういえば気が付いたが、吐息すら感じてしまう距離で力説しているのだ。

 あと少しでも近付いてしまえば──。


「ひゃああっ!?」


 私自身も驚いて、そのまま飛び退くように距離を離してしまう。

 赤面し、お互いに背中を向けてしまう2人。


「も、もしかしてフリンちゃん。今日も僕を元気づけようと……?」

「そ、そんな事ないですよ……。本当に暇だっただけです……」


 ゲームはその後も続き、BADENDを数十パターンは見せられた。

 だが、それらを乗り越えての──最高のHAPPYEND(ハッピーエンド)が待っていた。


「僕、BADENDも好きになったかも。これがあるから幸せが分かるんだなって」

「リアルにBADENDは勘弁です!」


 私は家に帰った後、ゲームを持ち出した事がバレてBADENDを迎え……そうになったが、ユグドラシルから『神年齢と人年齢は基準が違うので』とフォローが入ってNORMALEND(ノーマルエンド)となった。

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