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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック
第一章 異世界を手に入れたので、名所や特産品使って序列300000位上げ(仮)

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15話 その名は──フェリ(偽名)

「たっだいま~」


 転移陣を通り、我が尾頭家へ辿り着いた。

 時計を見ると、こちらの時間は夜中となっていた。

 リビングではパジャマ姿のフリンと、風璃がテレビゲームを楽しんでいた。


「あ、映司お兄ちゃんおかえり~。コンビニ行ったからご飯買ってきておいたよ」

「ふぁ~あ、おかえりです~」


 どうやら睡魔を我慢して待ってくれていたのか、夜中に慣れていないフリンは若干おねむのようだ。

 欠伸を噛み殺しながら、口に手を当てている。

 だが、俺に続いて出てきた存在を認識すると、眠気を吹き飛ばして覚醒した。


「おじゃましまーす……。あ、靴脱ぐ? 脱いだ方が良いよね……」


 歩く世界災害──今は借りてきた猫、もとい借りてきた狼のようになっている。

 他人の家にあがるというのは抵抗があるのだろうか。


「あれ? 映司お兄ちゃん、その人は?」

「好みのタイプだったから家にご招待した」

「え、映司いいいいい!? それダメ、それだめぇぇぇええ!!」


 何かフリンが面白いリアクションをしている。

 もしかしてアレか。

 俺が取られちゃうのがショックみたいな、そんな可愛い嫉妬か。


『夜分遅くに失礼します。こちらはクロノスですが、何か変な反応を捕らえたもので一応確認に……』


 急に浮かぶウインドウが現れ、苦労人クロノスさんが表示されていた。

 何だろう? フリンの時みたいに手続きだろうか。

 色々管理してるクロノスさんは大変だなぁ。


「えーっと、1人連れてきちゃいました」

『はは、そうですか……ところで、その後ろに見え……ひぎいぃぃぃいいいい!? その方はあああああ!?』


 こっちまで面白リアクションを取っている。

 何だろう、訳が分からない。


「あの……やっぱりワタシ帰った方が……」

「いや、俺が招待したんだ。クロノスさん、問題無いよね?」


 うむむ、と苦悶の表情を浮かべるクロノスさん。

 しばらく考えた後、何かに気が付いたように目を見開いた。


『そうだ、私は何も知りません。知らない人の居住を受け入れるだけです。ええと、そこの方のお名前は──』

「ワタシはフェンリ──」

『フェリさんですね! フェリさん! そうです、あなたはフェリさんです! その名前でいきましょう! はい、決定!』


 すごい慌てようとテンションだ。

 何か名前もどこかで聞いたことあるような感じだが……気のせいだろう。


『フェリさん、いいですか? 居住は許可しますが、いきなり地球に住む神々を食い殺したりしないでくださいね?』

「うん、たぶんしない」

『録音しましたよ! カセットテープとMDとICレコーダーで録音しましたよ! 絶対ですよ! では、これにて終了ですおやすみなさい! ……胃薬どこだったかな』


 そこで通信がプツンと切れた。

 何かまた悪い事をしてしまったような。

 クロノスさん……俺は中間管理職だけは絶対に止めておこうと思う。


「ええと……エイジ……でいいのか? なんかワタシは地球に住む事になったみたいなのだが?」

「俺もビックリだ」


 何だろう、この展開……。


「え、映司。フェンリ──いいえ、フェリは噛まない?」

「フェリは、意外と良い奴だから平気じゃないかな」

「で、でもエーデルランドを襲って……」

「ごめんなさい、それには訳が」


 フェリは申し訳なさそうな顔をして、耳と尻尾の角度を下に向けてしまった。

 感情と一緒に動く耳尻尾が気になって、ついつい触ってみたくなるが空気的にダメかもしれない。

 まずは先にやることをやろう。


「よし、フェリ! 勝負の続きだ!」

「エイジ、地球では力が制限されている……解除しようと思えばできるけど、さっきの人に迷惑がかかりそう」

「ふふふ……勝負とは移り気なものよ!」


 そういう事にしておこう……おいてください。

 戦いでは勝てないし、全力勝負して地球が真っ二つになるギャグオチも勘弁だ。


「地球の食べ物を食べて、フェリに美味いと言わせたら勝ちという勝負はどうだ!」

「よし! 受けた!」


 これなら勝算はある。

 日本は食にかけてのプライドがありまくる。

 どんな食べ物でも、魔改造を施してしまう日本人パワーにかかれば異世界の狼少女など容易い。


 それに、苦労して異世界活動をした兄を労うために、風璃が何か代わりの食べ物を買ってきてくれているだろう。

 俺が食べ損ねた上海亭のラーメンまでとはいかなくとも、何かそれクラスのものを!

 ──必勝、まさに必勝だ!


「風璃、俺に食べさせるはずだったラヴュンを、このフェリへやってくれぇ」

「え、あの……映司お兄ちゃん、本当にいいの?」

「ああ、お前を信じているからなぁ!」


 フェリの眼前にスッと差し出されたモノ──それは。


「カップ麺に見えるんだが、風璃」

「うん、ラーメンの代わりにカップラーメン」

「……そうか」


 これでフェリが大激怒したら、あの滅茶苦茶な歩く災害が再び──。


「地球が危ない!」

「ええっ!?」


 だが、ダメもとだ。

 素早くお湯を沸かし、表記されてる作り方を熟読。

 先にかやくを入れて、後で液体スープを入れるというシンプルだが絶対的な手順を遵守する。

 

 たかがカップ麺、されどカップ麺。

 この1手順で地球が破壊されるかもしれないのだ。

 お湯が沸く頃には、スマートフォンを使って秒単位で時間管理が出来るようにしておく。


 ──かやくとお湯を入れて三分後。

 銀色のフタをスピーディに取り去り、切り口を作っておいた液体スープをスッと流し入れる。

 その時間、わずか1秒。

 これがカップ麺の鮮度を分ける。


「すごい……パサパサに乾燥してたのに、お湯を入れて3分で」


 フェリは興味を持ったのか、眼をキラキラさせて楽しんでいた。

 俺はそれを横目に、箸でグルッと麺をほぐすと同時にスープを浸透させる。

 そして、あの一言で完成だ。


「おあがりよ!」


 これを言っておけば大抵は美味しくなる。

 あと、急に服が脱げたりする。


「い、頂きます……」


 フェリは未知の物として観察していた。

 昔ながらの醤油ラーメンと書いているパッケージ。

 たぶん、そこから読み取れるものはないだろう。


 だから自然と香りが先行する。

 食欲を誘う、程よい醤油の香り。

 それと同時に襲いかかる視覚。


 ラーメンという海に浮かぶ少量の香味油が反射し、漂う麺に色気を与える。

 それによって薄っぺらなチャーシューすら絶世の存在に姿を変える。

 ゴクリと息を飲み、手に持った箸をチャプリと沈める。

  

 ツッと一口分の麺を絡め、引き上げるとそこには黄金のロードが出来ていた。

 そして、スープが絡まったそれを味覚の集中する場所──舌の上へと運ぶ。

 瞬間、フェリの表情が変わった。


 すする。

 そのまま一気にすすり上げる。

 フェリの満面の笑みを見て確信した。


 地球は救われた。


「風璃、これ……なんですか?」

「フリンちゃん、あたしにも分からない……」










【異世界エーデルランド】

【現在、異世界序列348129位→97627位】


【ユニット獲得】

終焉をもたらす神殺し(フェンリル)

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