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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック
最終章 主神が消えた日

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114話 異世界序列崩壊級の巻き込まれ体質(妹バージョン)

「――で、無事に逃げ帰ってきたというわけね」


 あたし――尾頭風璃は深いため息を吐いた。

 孤児院に辿り着いて、異常事態に巻き込まれていると気が付いた後に、さらに複数の新種モンスターが付近の森に発生したという報告を受けたからだ。

 今まで、孤児院のために邪魔な障害を潰してきたため、何かのアクシデントを解決する便利な異邦人とでも思われているのだろうか。


 さすがに、人外の問題を持ち込まれても困るのだが、全てから孤立した今――あたし達でどうにかするしかない。

 そう思い知らされたのは、少し前の事だった。 


* * * * * * * *


「やっほーぅ。みんな元気してた~?」

「あ、風璃さんだ!」

「かっざり~!」


 映司お兄ちゃんが行方不明になった後、あたしたちは孤児院に到着した。

 相変わらずランちゃんは、視線をどこか遠くにさまよわせたりしているが、デリケートな問題そうなので、相手から話してくれない場合は待つのが一番だ。

 あたしは、いつもと変わらない調子を心がけながら、出迎えてくれた孤児院の面々に笑いかける。


「そこの奴に変な事されなかった~?」

「な、なんだと!? ボクはいつでも紳士だ!」

「紳士……ねぇ」


 前に映司お兄ちゃんが連れてきた『イーヴァルディの息子』という変な名前の、背の小さい男性。一応、ドヴェルグという種族らしい。

 どんな事をやらかしているかを聞いているため、注意をしながら孤児院で働かせている。

 でも──。


「大丈夫です。イーヴァルディの息子様は、大変真面目に仕事をこなしていますから」

「カノちゃんが言うのなら、間違いは無いか。うんうん、愛の更生って素晴らしい」


 こちらも、映司お兄ちゃんが前に連れてきた双子の片割れ──カノちゃんだ。

 赤毛の髪で、まだ幼い割にしっかりしている。

 勉強はもちろん、鍛冶や剣技を意欲的に学んだりと、将来有望な女の子である。


「え、今……イーヴァルディの息子……と? もしかして、どこかにいる……?」


 ランちゃんが、頭に疑問符を浮かべながら聞いてきた。

 そういえば、黒妖精の国という所でランちゃんとも顔を合わせていたのか。


「ええと、ランちゃんは久しぶりに出会ったから気が付かないかもだけど……この細身の奴が、それ(・・)

「ボクの事をそれ(・・)扱いするな!」


 イーヴァルディの息子は、この孤児院に来た当初はデップリとした背の小さい男……。

 丸々太ったポークハムと例えたい人物だった。


 ──それが今や、痩せて程よく筋肉が付いた、背の小さい、耳トンガリ可愛い系の男子となっていた。


「私が出会った時は、おっさん臭が酷い人物でしたが……」

「ふんっ! 酒を止めて、規則正しく生活して働いていたらこうなったのだ」

「えぇ……? 確かあなた、女とみれば見境無く~という女の敵みたいな」

「ボクは元々、女なんて何かの手段で使う程度だ。今まで私的に手を出した事もない」


 最後の一言は、映司お兄ちゃんと同類のアレという事なのだろうか。

 ……童貞(ピュア)的な。


 ランちゃんは、その言葉で察してどん引きの顔をしている。

 ちょっと男性への扱い的に可哀想とは感じるが、何かに落ち込んだような状態のランちゃんよりは良いだろう。


「ま、まぁ異性へ奥手とか、どこの世界でもあるって事だよ、ランちゃん」


 映司お兄ちゃんへの特大ブーメランとして跳ね返ってきそうな発言をされる前に、フォローを入れておいた。


「そ、そうですね……男性が男性を好きというのは昔からありますし」

「ランちゃん、それ違う。たぶん違うから」


 盛大な勘違い。

 どこで知ったのだろうか、そんな事を。

 汚染元はランドグリーズだろうか、もしかしてそうなのだろうか……。


「あ、でも、それも有りかも知れませんね!」

「ちょ、ちょっと! カノちゃんまで! 影響されちゃダメだからね!」

「ふふ。は~い」


 おちゃらけた雰囲気で、カノちゃんも話に乗ってくる。

 将来、『映司×イーヴァルディの息子』とか言い出さないように注意しておかなければ……。


「ん、そういえばオズエイジはどうしたのだ? 今日、奴がここに来ると聞いて金属強度の限界について議論でもしようかと思ったのだが」

「あ~、それが来る途中……いなくなっちゃって」

「ふむ、残念だ。早く奴に追いついて、ママ……ではなく、母の元へ戻りたいのだがな」


 これの母親──イーヴァルディさんの事を思い出す。

 たくましい……いや、筋肉がたくましすぎるビジネスウーマンと言った感じの方だった。

 こちらの世界に合わせて黒スーツをぴっちりと着こなし、息子を預けるときに、とてもとても丁寧に挨拶をしにきてくれた。


 同時に、こちらへの援助なども申し出てくれて、まさに大人の女性の貫禄。

 身も心も強そうで、正直あこがれてしまう。

 ……まぁ、どうしてそこからこの息子が生まれてしまったのかは、母子家庭的な苦労でもあったのだろう。

 

「あの、風璃様……少しお話が」


 到着してから今まで、喋ってなかったので存在感の薄かったオタルちゃん。

 よく見ると、何か深刻そうな顔をしている。


「どうしたの?」

「ええと、何かの故障ならいいのですが、その……先ほど観測した結果、現段階で……この世界は、いえ──」


 その時、カノの兄──ケンが全速力で走ってきた。


「た、大変だ! 風璃姉ちゃん!

「ええ? ケンもどうかしたの?」


 息を切らしながら、こちらも深刻そうな顔で私に向かってくる。

 同時に何か起きるとは、今日は厄日なのだろうか。

 ノストラダムスの大王でも降ってきて、世界が滅亡でもするのだろうか。

 ……ムゥ、さすがにそれは古いか。


「風璃姉ちゃん、森でモンスターが大量に!」

「風璃様、このエーデルランド以外が滅びました……」


 ……こういう大ごとは、あたしではなくて映司お兄ちゃんに任せたい所である。

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