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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック
第一章 異世界を手に入れたので、名所や特産品使って序列300000位上げ(仮)

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9話 ナイトメアー・ビフォア・シンデレラ(深夜0時)

 あたし──尾頭風璃は、自室で秋の夜長を満喫していた。

 深夜0時のワクワク感、誰しも体験する日常の冒険だろう。

 夜中に起きてると怒られたりする、リスクを伴った快感。


 まぁ今は映司お兄ちゃんにバレなきゃ平気だし、たぶん見付かっても軽く注意されて終わりだろう。

 ……普通の事をしているのなら。

 現在、あたしは誰かに見付かったらいけない事をしている。


 可愛い神様に見付かってもいけないし、ちょっとへんてこな兄にも見付かってはいけない。


「うーん、やっぱり変な気分になっちゃう……」


 高ぶる気持ち、背徳感、荒くなる呼吸。

 たぶん、誰しもこんな気持ちになってしまうだろう。

 自分の指1つで見えてくる新しい世界。


「この貴族の弱みはっと……」


 そう、自分の指1つで異世界エーデルランドを覗き見る快感。

 秋の夜長にぴったりである。

 この情報収集が金儲けに繋がる……最高だ!


 け、決して私利私欲でやっているのではない。

 これがエーデルランドの問題解決にも繋がるのだ。

 ちゃんとその旨を伝えて、フリンちゃんから異世界管理の権限をもらった。


「ふふ。今やこのあたしの部屋が、異世界の運命を握る司令所……なんてね!」


 部屋の大きさ的には普通で、映司お兄ちゃんの部屋と間取りは一緒。

 ベッドが置いてあり、ノートパソコンが乗っている勉強机、タンス等の家具を設置してもスペースがまだあるくらい。

 アイドルのポスターみたいな女の子らしいものは無い……いや、1つだけあった。


 昔プレゼントされた、大きなクマのぬいぐるみ。

 邪魔で邪魔で仕方が無い。

 かといって捨てるわけにもいかない……珍しくアイツからの贈り物だから。


 そのクマをクッションのように押し潰し、ベッドに寝転がっている体勢。

 何か落ち着く。

 昔、アイツに似たような事をしていたからかな。


「お、貴族の屋敷で何か起こってるな……」


 大きな街の大きな屋敷……となれば、そこに住む者の権力も大きくなるのが道理というもの。

 男女が何かを言い争っている。

 男の方が興奮して喋り、勢いでつばが飛ぶ。

 

 格好的には貴族だろう。

 高級そうなブラウスにきらびやかな上着、装飾品。

 女性の方は、いかにも貴族といった感じで髪を盛りまくっている。

 

 現代のアゲアゲな女性にも通じる物があるのかもしれない。

 服装は、これまた高級そうな生地のドレス……流れるような光沢からしてシルクだろうか。

 そして、普通は気が付かないであろう部分に異様な物を付けていた。


『このガラスの靴を履ける唯一の存在、この……このワタクシに指図をするっていうの!?』

『い、いや。そんな事は無いんだスノー……』


 男は、その一言で押し黙ってしまった。

 ガラスの靴、おとぎ話では聞いた事がある。

 絶世の美女が装備したら、王子様がホイホイと入れ食いになる伝説の舞台装置だ。

 

 もし現実であっても、履き心地とか、ガラスが割れた時を考えると恐くて履けない。

 だが、この貴族の女性──スノーは実際に履いているのだ。

 それもかなりふくよかな体型で……度胸がすごい。

 

 靴のサイズが大きく、ガラス製。

 確かに体型と度胸が無いと履けないだろう。

 それに関しては、彼女は唯一の存在と言っていいかもしれない。


『わ、わかった! 何でも言う事を聞く! だから婚約破棄をしないでくれ!』

『ふんっ、立場が分かればいいのよ。そうね、まず軍備を──』


 このスノーという貴族の女性、間違いなく悪役ポジションだろう。

 何か弱みを握って男性を操っている。

 男女関係とか、フリンちゃんに聞かせてはいけない大人の話だろうか。


 やはり、あたしがこの問題を解決するしか──。


『スノーのガラスの靴を舐められなくなったら生きていけない……』


 もっとフリンちゃんに聞かせちゃいけない変態の話だった。

 乙女の夢も何もあったもんじゃない。


『ふふ。ワタクシのガラスの靴に比べたら、他の靴なんてクズ同然ですものね!』


 ……ふーん、なるほど。

 このプライドをガラスのように打ち砕くのも面白そうだ。

 つい、心の底から楽しげな笑みが浮かんでしまった。

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