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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック
第四章 神槍精製

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幕間 風璃、未知との遭遇

「ん~っ! 良い天気ね!」


 あたし──風璃は、エーデルランドの日射しを浴びながら、両手を押し上げるように背伸びをしていた。


「そうですね、風璃様」


 右手側には、可愛くアレンジした軍服姿のオタルちゃん。

 あたしはいつも楽な学校の制服のままなので、何でもオシャレに着こなすというのは見習いたい所だ。


「ふんふふ~ん♪」


 左手側には、真っ白なワンピースでスキップしながら、ツインテールをピョコンピョコン揺らすフリンちゃん。

 お婆ちゃんから送られてきたという金の首飾りを、テンション高めに振り回している。


「ところで風璃様、今日の行動に……その……フリン様を連れてきて良いのでしょうか?」


 町の中を歩きながら、オタルが疑問を投げかけてくる。

 あたしも、最初は反対したのだ。

 今日は事が事だけに。


「何か、あのアクセサリーを身につけて外を歩きたい……みたいな?」

「ブリシンガメンです! 今日はこれを使ってみたいんです!」

「ふふ、もうその歳でアクセサリーを使いたいと。フリン様はおませでオシャレですね」


 そんな雑談をしていたら、目的の場所に到着した。

 孤児院がある場所から、少しだけ離れているが、立地的にはまずまず。


「んだぁ!? おめぇら! ここがどこか、わぁってんのか!?」


 一見、普通のお店でも入ってそうな白壁の大きな建物。

 だが、その正体は犯罪ギルド。

 二階建ての頑強な作りで、入り口付近にはトゲ付き肩パットの男二人がたむろしている。

 私は、それに向かって一枚の紙を突きだした。


「これ、ここの権利書。正当なルートで買い取ったから。そもそも、自称で作った不法占拠な犯罪ギルドなんて認められるわけないでしょう」


 なぜこんな事をしているのか。

 それは、黒妖精の国という所に行っているランちゃんから電話……的なもので話した時、流れで何となく孤児院を広げた方が良いと思ったのだ。

 というわけで元々、計画していた区画整理を前倒し。


 孤児院で教育用に使っていた部屋を居住空間に改築し、別の所──ここにキチンとした学校を作る計画。


「あぁん? んなの知るかよ。代わりにもっと良い場所と金を用意するか……いや、でもお嬢ちゃん達が、俺達を満足させてくれたら考えなくも──」

「死ね」


 乾いた発砲音が響き渡る。

 どうやらオタルちゃんが、躊躇無く腰部ホルスターからハンドガンを抜き出して、トリガーを引いたらしい。


「この御方達に何たる暴言、非常に許しがたいものです。……が、フリン様の前では血を流せないのでゴム弾で気絶してもらいましょうか」

「さ、さっき死ねとか言わなかったか……」


 再び乾いた発砲音。

 男2人は地面に倒れた。


「すみません、本心が口に出ていたようです」


 そのまま、気絶している男の頭部をアーミーブーツでグリグリ踏みつける。

 オタルちゃん……外見年齢的には私と一緒くらいだが、まるで中身が別物だ。

 映司お兄ちゃんは気が付いてないのだが、このエーデルランドの実質的な管理をほぼ1人でこなすし、実働部隊を率いて国が滅ぶレベルの事を未然に防いでいる。


 映司お兄ちゃんが異世界序列の順位を押し上げる表の存在だとしたら、オタルちゃんはそれを管理維持する裏の存在。

 ただ、前も思ったのだが、何というか──。


「風璃様、フリン様、ご安心ください。前回の反省点を踏まえて、今日はさらに戦闘能力向上なオタルです」


 何故かヤケに張り切っているオタルちゃんは、さっき発砲したハンドガンをクルッと回した後にホルスターに仕舞う。

 そして胸ポケットから何かを取り出す。


 (てのひら)よりも小さい、ミニチュアの銃らしき物体。


「これは今、使用したハンドガンよりも小さいですが、非常に高性能なのです」


 かろうじて銃的な部分は、指がギリギリで入るトリガー部分。

 後はもう、銃本体と言える部分は市販のクッキー一枚分サイズだろう。

 しかも銃口は注射針に見える程。

 

「とある対異星人(エイリアン)組織が生み出した、ノイジークリケットという最新式の異世界銃です」

「何か知ってる、それ」


 黒い背広着た組織メンなインっぽいブラックが、ピカッとやって記憶を失わせるような映画で見た事がある。


「本当ですか!? 地球の情報もなかなか侮れませんね……」

「たぶんあの映画監督が宇宙人と知り合いなんだよ、うん」

「ということで、この銃まで用意したのです! また、以前のような巨人が現れても絶対に遅れは取りません!!」


 ──何か前も同じパターンで、色々と自分達の戦力を過信して大変な眼に合ったような。

 私個人として数えると、足ペロ魔女、山賊頭領で二度……もし今度もそれだとしたら三度目になる。

 いや、まさか……ね!


「外が騒がしいと思ったら……ククク。可愛らしいお客さんではないか」


 赤目をした、緑色の髪の男が建物から出てきた。


「我が部下達が倒れているのは、こちらへ敵対したいという事か?」

「いえ、できれば平和的にこの建物を──」


 あたしが口を開いた瞬間、オタルちゃんがミニチュア銃を構える。


「ええい、問答無用! 吹き飛べぇーッ!」


 引き金を引くと、ピロロロロロロとオモチャのような電子音が鳴った。

 そして、緑髪の男は爆発──建物は衝撃で半壊。

 オタルちゃんは、反動で後ろへ吹き飛んだ。


 唖然とするあたしと、周りを気にせずアクセサリーをいじっているフリンちゃん。


「やったか!」

「……オタルちゃん、それ」


 オタルちゃんは地面を転がったため、埃まみれでガッツポーズ。

 緑髪の男がいた場所は、爆発によって発生した煙幕で視界が確保できない。

 何となくフラグが構築されまくっている気がする。


 あたしと一緒で、きっとオタルちゃんも肝心な所でピンチになる星の下に生まれたのだろうか。


「ククク……その程度の武器でこの『魔王』を倒そうとは。……だが変装が解けてしまった」


 煙幕が晴れ、その中からずしりずしりと一歩ずつ近付いてくる巨体。

 声は一緒だが、明らかにさっきの男と姿が違う。

 6メートルを超える巨体に、ギョロリとした赤目が6個、おまけに腕も6本。

 頭蓋骨で作ったネックレスを首にしているという、確かに魔王っぽい外見の存在。


「そんなっ!? このノイジークリケットが効かないなんて!?」

「よし、オタルちゃん逃げよう」


 あたしは視線を退路へと向けた。

 だが、オタルちゃんはミニチュア銃を投げ捨て、魔王へと近付いて行った。


「風璃様、フリン様……ここは私が足止めします」

「いや、普通に一緒に逃げよう! ね!」

「あの御方に頼まれていたというのに……舞い上がってしまった私の失態です! もうこうなったら、私をビーコン代わりにして、衛星軌道上に待機させている『超弩級位相変換型兵器(フェイザーカノン)』で町周辺を焼き払います!」

「いやいやいや……落ち着いて」


 なぜかオタルちゃんの、その小さな背中が漢の征く道的なものに見えた。


「大丈夫ですよ、きっと倒して、このオタル戻ってきますから……! 映司様、どうかご加護を!」


 そもそも、町周辺を焼き払ったら私とフリンちゃんだけではなく、一般市民も巻き添えという。

 どれだけオタルちゃんは死亡フラグ引き寄せマシーンなのだろうか。


「え、あの……魔王でも慈悲はあるから、ちょっと待とうかお嬢さん達……」


 魔王さんも、こちらのやり取りにどん引きして顔を引きつらせている。


「これ以上建物壊れたら、寝る場所も無いし……あの! 本当に待とうよお嬢さん達!」


 魔王さんの警告を無視して、死地に赴くオーラ全開のオタルは歩みを止めない。


 ……どうしたもんかな。

 まさか、建物の不法占拠の交渉だけで、ここまでこじれるとは。

 普通に彼らの再就職先を用意したり、相手への緩やかな対処(そでのした)も考えていたのだが。


「安心するです、風璃。ここはこのフリンに任せるのです」


 グッとサムズアップを見せられた。

 そういえば、最近すっかりと忘れていたが──。


「んーと、『ブリシンガメン』……? よ。その力を……」


 フリンちゃんも、それなりに問題を起こす存在だった。


「ええと、詠唱省略!」


 その手に持つ金色の首飾りは一瞬で椅子に変化した。

 城に備え付けてあるような玉座を、黄金満載で作った様な美しい一品。

 フリンちゃんはそれに座ると、背もたれに身体を預けて、両腕を組んで女王のような自信満々の笑み。


 そして魔王を無理やり見下す。


「この二代目フレイヤとなる、フリンの力を見せるですよ」


 黄金椅子はふわりと浮き、その周辺に球体状のフィールドが発生する。


『簡易起動確認。モード選択、対巨人(ZYX)? 殲滅(YR)?』


 黄金椅子から無機質な声が響く。


「うーん、おばあちゃんの見てたけど、でっかい姿も可愛く無いし、このままでいいです」

『了解致しました。ご自由にどうぞ』


 周辺に見た事の無い文字が渦巻き、魔法陣となって黄金椅子を覆う。

 それは幾何学模様に包まれたボールのようだった。


「それじゃあ、んーっと、えーっと……まず、敵をもっと強そうにするです!」


 とんでもない発言と共に、黄金椅子から迸る閃光。

 それは魔王をかすめた。


「ひえっ!?」


 場に圧倒され、ビビる魔王。


「チッ、慣れてないから照準が甘いです。初弾ヘッドショットを決めないとKDで煽られるです!」

「フリンちゃん、ちなみにアレが当たるとどうなるの?」


 とてもとてもやばそうな雰囲気なので一応聞いてみる。


「この前やってたゲームの敵みたいな感じに、存在を創り替える魔法です」

「……へぇ」


 あたしは、閃光が当たった部分を見て納得した。

 かすめただけの、魔王のドクロ首飾りは……乾燥状態から半生の眼球付き生首へ。


「ヒャー!? お気に入りのネックレスが!?」


 直撃してしまった建物内部は、何か脈動するエイリアンの卵みたいなものが増えていたり、毒の沼がコポコポと沸騰していた。

 本当に創ってしまったのだろう……。

 あたしとオタルは、それを見て呆然としていた。


 だが、それを向けられた魔王は心底やばいと思ったのか、近くに居たオタルを引き寄せて拘束した。

 人質というやつだろう。


「こ、これ以上、やっと手に入れた平穏な生活を壊さないでくれ! この娘がどうなってもいいのか! マジで助けてください!」


 必死な魔王の叫びと、その腕の中でもがくオタルちゃん。


「わ、私ごと撃ってください!」

「何か凄くデジャヴが……」


 やはりオタルちゃんは死亡フラグに呪われているのでは。


「フリンちゃん、その……ちなみに人を撃つとどうなるの?」

「今のイメージだと、四つん這いで飛びかかりながら、口から冷気を噴射する手長なクリーチャーです!」


 詳細な図は浮かばないが、オタルちゃんが巻き込まれたらお嫁に行けなくなるのは確かだ。


「ひえぇ。そんな恐ろしい姿、魔王やだー!」


 元から巨体の六本腕なのにダメらしい。

 あと、一人称がいつの間にか魔王になっている。


「あ、あの……私も出来れば、巨乳とか事故で、あくまで事故でフェンリルクラスの映司様好みの体型に変化してしまうなら~しょうがないかなーと……」

「気持ちは分かるけど、冷静になってオタルちゃん」


 巨乳でも、飛びかかって口から冷気はモテないと思う。

 どうしたものか、長引かせるとフリンちゃんなら本当にやりかねない。

 勢い余って、この建物周辺だけじゃなく、エーデルランドごと創り替えてしまう可能性すらある。


「──もう、こうなるから僕が呼ばれたのかな」


 いつの間にか、溜息を吐く男性が存在していた。

 まるで最初からそこにいたかのような、落ち着いた風体で。

 ──魔王の真横に。


「危ないから、ここは解決しましょうか」


 男性は、目にも止まらぬ早さで杖のようなモノを振るい、魔王の手を殴打。


「ぐわっ!?」


 魔王はひるみ、オタルは一瞬にして解放された。


「どうです、鹿角の味は?」


 杖だと思っていたが、鹿の角だったらしい。

 なぜ鹿の角を持ち歩いているのか、という疑問はあるが、オタルの攻撃にも無傷だった相手を簡単にひるませた。

 かなりの存在なのだろう。


 改めて、どういう方か冷静に観察すると……その、裸マントだ。

 かろうじて、白い腰布で大事な部分は隠されているが、後は鍛えられた腹筋等がチラ見している。

 普通なら犯罪臭だが、テレビで見る俳優より数段整った爽やかハンサム顔と、金色の小麦畑のような深みのある長い髪、見る者を無条件で魅了する蒼玉(サファイア)の瞳。

 それと、ギリシャ彫刻で見るような肉体美でギリギリセーフっぽい雰囲気もする。


「フリンも、ブリシンガメンを収めなさい」


 裸マントさんは、鹿角をフリンちゃんに向ける。

 それだけで幾何学模様の球体は弾け、中の黄金椅子は地面へと着地した。


「まだ僕の妹よりエーテル量は少ないけど、その特性はメチャクチャなんだから気を付けないと。……ブリシンガメン、君自身も多少は抑えてあげなさい」

『了解致しました』

「え~、せっかくの神器なのに~」


 ぶー垂れてしまうフリンちゃん。

 裸マントさんと知り合いなのだろうか?


「ええと、フリンちゃん。この方は?」

「おばあちゃんの、おにいちゃんです!」


 ということは、フリンちゃんの大叔父という事だろうか。

 外見はクロノスさんに負けず及ばずの美青年だが、寿命が違う存在なので年齢はおじいちゃん的なものなのだろう。


 裸マントさんは、こちらを向くとニコリと笑った。


「風璃さんには、異世界序列第三位──アールヴヘイムの主、と言った方がわかりやすいでしょうか」

「あ、スキールニルの幼馴染みさん!」

「はい、フレイです。直接会うのは初めてですね。彼女が大変お世話になりました」


 スキールニル経由で、黒妖精の国への転移など色々と手を回して貰ったが──。

 まさか裸マントで鹿角を振り回すへんた……紳士だったとは。


「あ、この鹿角、気になります? 格好良いですよね」

「え、あ、はい……」


 しまった、つい見てしまっていた。









【名所獲得:アルマ学院】

 後に増築され、数々の偉人達を排出する事となる伝説の場所。

 名前の由来は魂を司るアルマという異世界語か、校章にもなっているアルマジロという謎のモンスターとも言われている。

 たまにお忍びで異世界の管理者達も登壇していた。

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