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記憶の彼方  作者: 野津
2/4

雷鳴の中

暴力的表現が含まれます。

前を誰かが走っている。俺はそれを追いかける。

何故かは、わからない。

ただ、前を走る誰かを連れ戻さなければ、という焦りが俺の足を加速させた。

しかし、どんなに走っても、どんなに急いでも、前を走る誰かに追いつけない。

待ってくれ!止まってくれ!





空を割るような雷の音で、俺は目覚めた。

どうやら、眠ってしまっていたらしい。

寝起きの所為か、宙を漂うようなふらふらとした感覚が残っている。

それにしても変な夢だ。夢というのは、後から思い返すと、とても馬鹿馬鹿しいものに感じる。

前を走る誰かに追いつけない…。そういえば、朝霧はまだ帰ってきていないようだ。

先程の雷を思い出し、急に不安になる。大丈夫だ、と言う自分と、何かあっては遅い、と言う自分。さて、どちらを取るべきか。

念のためだ、探しに行こう。そう思い、俺は椅子から立ち上がる。

首を回すと、寝違えたのか鋭い痛みが走った。



腰に愛用の刀を差し、外に出る。空を見上げると、真っ黒な雨雲が空を支配していた。

きっと、朝霧のことだから、無我夢中で走ったに違いない。だとすると、どちらの方角かも考えぬまま、真っ直ぐ走っただろう。

俺は、以上のことを想定し、真っ直ぐ続く道を歩いた。相変わらず、雨は弱くならない。おまけに、雷はすぐ近くに落ちているようだ。傘を差していたら、雷に打たれてしまいそうなほど近い。

朝霧のやつ、雷に打たれてないだろうな…。

暫く歩いていると、寂れた町にでる。そこには、一昔前までは繁華街として軒を連ねていたであろう建物が、忘れ去られたように残っている。

少し雨が弱くなってきた。

「おい、こいつ死んじまったか。」

「息してんだから生きてるだろ。」

「ピクリとも動かねえぜ?」

そんな声が、雨音に混ざって聞こえた。

声のした建物の陰に近づくと、四人の男達が何かを取り囲んでいた。

今の会話からして、取り囲まれているのは恐らく人間だ。

男達は人売りだろう。

よくまあこんな人のいない所に来たな…。

雨がまた強く降り出した。

雷鳴が響く。

ここに朝霧はいないと思い、この場を去ろうとしたとき、俺は気づかれた。

「おい、誰かいるぞ。」 

四人の男の内の一人が言った。

どうやら、戦わなければならないらしい。

俺はゆっくりと、刀身を鞘から抜いた。



「あー?なんだ兄ちゃん。俺らに用か?」

薄汚い男がそう言った。 

特に用もない。無言で刀を向ける。

「おい、その兄ちゃんのことまだ殺すなよ。結構美形だし、高く売れそうだからな。」

男の内の誰かが言った。

「なあ、兄ちゃん刀持ってんじゃん。そういや、この坊やと格好とか似てるし、政府のもんじゃねえか?」

格好が似ている?

その坊やと呼ばれて奴は、男の陰に隠れて見えない。

雷に打たれたような衝撃とともに、確信する。朝霧だ。探していた物がやっと見つかった安堵感と、未だかつてない自分の無力さに辟易する。

あの男達の調子だと、相当暴力を振るわれただろう。早く助け出さなければならない。助け出さないと…。

また、雷鳴が響いた。近くに落ちたようだ。

ここまで来たのだ。容赦はしない。

男に向けていた刀を両手で持ち、よそ見をしていた男を斬る。

剣道の構えの方が刀にも力が入るため、男は顔を真っ二つにされた状態で後ろに倒れた。

男達がどよめく。

一人が立ち上がり、銃を俺に向けた。何か喚いている。

その銃には見覚えがあった。朝霧の銃だ。

刀を両手から右手に持ち替える。

男は銃を発砲した。しかし、その銃は腔発し、男の手を黒こげにする。

隙を見て、俺は素早く踏み込み、刀を横に凪払った。

男の首が飛ぶ。主を無くした体は、ふらふらとしたあと前に倒れた。

真っ赤な液体が、雨に濡れた地面を侵略する。

すっかり怯えきった男二人が、朝霧を抱え逃げようとした。金になると思ったのだろう。しかし、そうはさせない。

両手で刀を持つ。男達の震える声で交わされる会話が、雨音によって掻き消される。朝霧を抱え背を向ける男達。俺は大きく一歩足を踏み込み、一人の男の心臓があると思われる箇所を、一突きした。

男は口から血を吐きながら倒れる。

残るは一人。朝霧を抱えた男は、腰が抜けたのか、へたり込んでしまった。

「そいつを離せ。」

朝霧を離さない小太りの男に命令する。

「嫌だ…嫌だ!し、死にたくない!死にたくない!生かしてくれ!!」

男は無惨なことに、失禁した。

「なら、そいつを離せ。」

男は片手で抱えていた朝霧を離し、両手を挙げた。

刹那、男の頭が飛ぶ。きっと状況が理解できなかったのだろう。飛んだ頭に付いている目は、見開かれていた。


 

全員殺した。地面は真っ赤だ。

刀を鞘に戻し、朝霧に駆け寄る。浅い息をする朝霧。命はあるようだ。華奢な体は呼吸に合わせ、小さく揺れる。

気を失っているのだろう。瞼は堅く閉じていた。何故だか俺は、白い睫毛に縁取られた瞳は一生見られないような、そんな虚しさに襲われた。

首を振り、それは無い、と自分に言い聞かす。

朝霧を抱え、急いでそこを後にした。




やたら暴力的になってました。

夜霧くん怖いよ。でもヒーロー夜霧くんですね。

かっちょいい。


しかし、腔発による被害ってどれくらいなんでしょうかね?

朝霧くんは手袋はいてるし、傷くらいですみそうですけど(手袋ズタズタだろうけど)、今回のリンチ野郎は素手だし…

教えてーエロい人ー!

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