雨の日
※篝火さんの創作である「因果律」に登場する朝霧、夜霧の記憶喪失ネタです。誠に勝手なことですが、所々捏造しています(と思います)。
また、同性愛的な描写があるかもしれません。
本家様とはなんの関係もありません。
雨が降っている。しとしとと、地面を濡らしているのが家の中に居てもわかった。
その静かな雨音に対比するように、声が反響する。
「だから、夜霧くんは僕の心配しなくていいからっ。」
椅子に座ったまま、威嚇をする小動物のように体を震わせる少年が、俺にそう言った。いつもの独特な、間延びしたような口調ではなく、必死で自分を抑えるような口調に変わっている。
「心配とかじゃないんだよ。」
自分の、酷く冷静で、思った以上に冷たい声が部屋に響いた。
「じゃあ…何なの。なんで僕のやり方に口出しするのさっ。夜霧くんは、自分のやり方が一番正しいと思ってるんでしょ!」
そう言った目の前の少年、朝霧は立ち上がった。座っていた椅子が、立ち上がった拍子に倒れる。倒れた椅子が床にぶつかる重たい音が響いた。
「だから…」
俺は言葉を吐き出そうとしたが、朝霧の声によって掻き消されてしまった。
「もういい。夜霧くんなんて大嫌い!」
目の前の少年は、その言葉を残し部屋を飛び出していった。
大嫌い、その言葉もまた暗い部屋に反響し、雨音に掻き消された。
この喧嘩の原因は2つある。
俺が朝霧のやり方に口出ししたこと。それと、朝霧のことを必要以上に心配したこと。
一つ目は、彼の銃の使い方だ。
「危なっかしい。」
たしか、俺はそう言った。
それに朝霧は「でもねぇ、これが僕のやり方だからぁ。曲げる気はないよぉ。」と、いつもの口調で言った。
朝霧は銃の使い方に関しては、俺の意見を聞かないところがある。
俺はそのとき、少し語気を荒げ、怪我をしてからでは遅いことを話した。しかし朝霧が聞き入れることもなく、その話は終止符を打った。
二つ目が一番の原因だと、俺は思っている。
過保護になりすぎた。朝霧を必要以上に庇い、それに余計なことまで口走ってしまった。
「あの時は必死だった」そう言ってみても、それはただの言い訳にもならない。
俺は暗い部屋の中で、後悔の渦に飲み込まれ、そのまま消えていってしまうのだろうか。
そんなことを考えていると、いつの間にか眠ってしまった。
僕は走っていた。ありったけの体力と土地勘を振り絞り、地面を蹴りあげる。
一体僕はどこに向かっているのだろう。雨足は強くなるばかりで、僕の体を容赦なく打つ。
そして僕は、少しずつ治安の悪い地域に近づいていることに、今更ながら気付いた。
無我夢中だった。振り絞っていたはずの土地勘が空回りしてしまったのだろうか。
程なくして、僕の体力も底をつきはじめていた。足が金属のように重い。
どこかで雷鳴が響き、あたりは一瞬だけ黄金に染まる。僕は怖くて、荒い息を吐きながらボロボロの建物の物陰に腰を下ろした。
とてつもない鈍痛を肩に感じ、僕は目覚めた。寒さにより、身体中に鳥肌が立つ。
どれほど眠っていたのか考える余裕もなく、二発目の鈍痛が僕の身体を打った。
痛みで呻き声が漏れる。
混濁する意識のなかで、四人の男達が僕を取り巻いているのがわかった。
「おい、こいつは高く売れるぞ。絶滅した種族の末裔だ。まあ混血だろうけど、なっ。」
男に言葉に合わせ、腹あたりを蹴られる。空気が一気に口から出てきた。
「どんくらいで売れるんだ。値段によっちゃ、傷物には出来ねえぞ。」
そうか、彼らは人売りか。だとすると、僕はこのままでは売られてしまう。ふと、夜霧くんの顔が浮かんだ。暗い部屋で喧嘩をした。彼に、何か酷いことを言ってしまったかもしれない。これはきっとその罰だ。
ふわふわと漂う意識の中、蹴られた肩と腹が痛みだけが、執拗に僕を苦しめる。
「ざっと俺らが三ヶ月暮らせるくらいだな。」
「どうする。ここでいたぶって楽しむのと、売っちまって後から楽しむのと。」
ぼやけた視界に男達が映る。
四人とも僕を見ていない。
僕は気付かれないように、ゆっくりと銃を取り出す。そういえば、夜霧くんに二丁拳銃は危ないって、注意されたな。今になって、僕の脳や心は夜霧くんが大半を占めていることがわかった。
銃には薬莢が詰められている。僕は素早い動きで彼らを撃った。
しかし、あやふやで朦朧とした感覚や意識の中ではまともに撃てず、弾は狙ってもいない方向にいってしまった。
「おい、こいつ銃持ってるぞ。」
「まてよ、こいつ…政府のやつじゃねえか。」
一人が気付いた。
「よし、決まりだ。こいつは売らずにここで始末する。」
きっと、政府のものであることで始末するわけではないだろう。撃ってきたことに苛立ちを感じ、こうなった。僕はまた墓穴を掘った。
また、夜霧くんの顔が浮かぶ。彼には庇われっぱなしだった。
「足手まといになるんだ。後ろに下がってろ」
冷酷な声音で言われた一言。僕だって気づいてた。
「おいおい、お坊ちゃん。よくもこの俺を撃とうとしたな。当たると思ったか糞が。」
その言葉を合図に、たくさんの蹴りや拳が飛んでくる。
痛みで気を失いそうになった。そのとき、これまでに経験したことない痛みが頭の外と中で爆発した。
その痛みにより、僕は真っ暗な意識の中に突き落とされた。
つづく
書かせていただきました、野津です。
Twitterの一言によりこうなりました。
ちゃんと完結させたいです。