Episode.1 (part.8) 安息の一日
次の日、悠徒は忍を誘って学校の外に出た。
悠徒と忍だけでは危ないと思ったガルドは、護衛兼、荷物持ちとして同行した。
「今日は何を買いに行くの?」忍は悠徒に尋ねると悠徒は、「眼帯買わないと、このままじゃいけないからね。」と悠徒は答えると、「眼帯とかのアクセサリーはあそこしかないな。」とガルドは言うと、こっちだと言ってガルドは人気の無い街角にある店に入った。
悠徒と忍はガルドの入った店に入ろうとしたときに、入り口のところにあった二つの甲冑が突然動き出して、悠徒と忍の入店を拒むように槍の切先を向けた。
悠徒は一瞬、紅の力で対抗しようと眼帯を外そうとした時、ガルドが悠徒と甲冑の間に一瞬で入り、眼帯を取ろうとした手を抑えて、「こいつは俺が紹介した悠徒と忍だ。」と言うと、甲冑が元の位置に戻り、動かなくなった。
ガルドは何事も無かったような感じに店内に入っていくので悠徒たちも恐る恐る店内に入って行った。
店内に入ると、豪華な衣装や宝石、指輪やブレスレット、剣や銃まで色々な物があった。
「マスター、コイツに合う眼帯をくれ。」とガルドは撫し付けに言うと、「また、お前か・・・今回は眼帯だって?いつもは一級品の魔法具か大剣しか買わないお前さんがねぇ、ガキにプレゼント・・・っぷ、笑わせるねぇ。」と奥から出てきたやけにガタイの良いオジサンが出てきて言った。
「コイツのか・・・コイツの周りの空気の流れが妙だが魔法具系か?」とマスターは聞くと、ガルドはニッと笑い「国宝級以上。」と言うと、マスタの目が輝いて「見せてくれ。」と悠徒にねだってきた。
悠徒はガルドに許可を求めると、OKしたので眼帯を外してマスターに見せた。
「こりゃ、本当に国宝級以上じゃないか。どうやって手に入れたんだ?」とマスターは悠徒にしつこく迫って来たがガルドが詮索するなと言う感じに手でマスターを制止した。
マスターは少し残念そうな顔をしたがすぐにいつもの顔に戻り、「これに見合う眼帯は・・・あれしかないな。」と言い、店の奥にある商品倉庫に入って行き10分間。
頭にクモの巣を付けて出て来たマスターの手には小さな宝箱があった。
「これは、封印箱じゃないか。この中に入っているのは魔法具か?」とガルドは少し驚きながら言うと、「付けている者の魔力を半分に見せるマジックアイテムだ。値段は・・・」と言い、値段の所だけガルドに耳打ちするとガルドの目が大きく開いて、「5億ぅ?まあ、良いか」とガルドは言うと、ポケットから携帯電話のような器械を出してそれをレジにある薄い円柱型の機械に向けて翳した。
悠徒と忍、そしてマスターはガルドの言動に呆気に取られ、マスターはともかく悠徒と忍は5億と言う数字が円なのかそれとも違う単位なのか疑問に思い、ガルドに尋ねると、「この世界では円ではなく、『C』を使う。1Cは日本円で350円だったかな?」と言うと、忍は「1750億円!?」と即座に計算して言うと、悠徒と忍は頭の中がパニック状態になった。
「そんぐらいか・・・最高位ランクの依頼の約5回分ぐらい程度かな?」とガルドは言うと、忍は即座に計算し、あまりにも莫大な金額が出てきたので再び驚愕し頭を抱えてしまった。
ガルドのありえない話を聞いた悠徒たちは、もうガルドの話は聞かないでおこうと肝に銘じた。
悠徒はガルドが買った眼帯を付けると、ガルドに30分ぐらい店内を自由に見ててくれと言い何処かに行ってしまった。
悠徒と忍はガルドが行ってしまった後、店内を見て回った。
ガルドは行く前に忍にブレスレット型電子端末を渡したので、その中に電子マネー機能と電話機能、インターネット機能が搭載されている。
「この刀良いな~」と忍は店内に飾られている刀を見て言った。
「良い刀とは思うが、どんな価値があるか判らない。」と悠徒は言うと、忍は興奮したように悠徒の方を向いて、「これは作った人は判らないけど、これはかなりの良い刀鍛冶師が鍛錬して出来たものだよ。刃は鋒両刃造で、普通の刀と違ってかなり重たい。多分、鉄ではない物質で作っていると思う。あと、刀に何か入っている感じで持っただけで力が抜けていくような・・・」と忍は言った瞬間、電池が切れたように刀を置いて床に座り込んだ。
忍が座り込んだ音に気づいたマスターが駆け寄ってきて、「お嬢ちゃん、その刀を握ったね?」と聞くと忍はコクリと頷いて、「こりゃ、魔力が高い人用に作られた刀で、持った人の魔力を吸って刀の力にする物だよ。普段はガラスケースの中に入れといたのに・・・バカ掃除用妖精が間違えて外に飾ったな。ゴメンな嬢ちゃん。」とマスターは詫びながら店においてある一つの指輪を出して忍の右手人差し指にはめて上げた。
「これは魔力の少ない人や消費が多い人が愛用する魔力高速回復だ。お詫びにあげるよ。」とマスターは言い、店内の掃除を再び始めた。
悠徒は忍が持ったその刀に興味が出てきて、自分なら使えるだろうと思い、悠徒はその刀を握った。
マスターは仕舞い忘れたと振り返ったら、悠徒がその刀を握っていた事に驚き止めようと怒鳴ろうとしたとき、マスターは目を疑った。
悠徒が握っていたその刀の刃のところが黄色の膜のような一種のビームサーベルのようになっていた。
「こりゃ魂消た。この刀そういう風に使うのか・・・お前さんかなりの魔力を持っているね。おじさんもビックリだ。」と言い、悠徒の方に駆け寄り刀を返してもらってすぐにガラスケースにしまった。
悠徒は少し不満だったが、商品でも触ってはいけない物もあるからしょうがない。と思い諦めた。
が、悠徒ががっかりしていた所に、突然暗くなったと思い後ろを振り向くと、そこにはガルドがいた。
「今のスゲーな。俺にも試させろ。」と言い、マスターはすぐさまガラスケースの中にある刀を出してガルドに渡した。
ガルドはその刀を握って精神統一するように呼吸を整えて、「ハッ!!」と気合を入れると刃の周りに赤い光が出てきたが、数秒も経たずに光が波を作り、すぐに光が消滅した。
「俺には向かない武器だな。」と言い、マスターに刀を返すと、「これは今のところ悠徒しか使えないな。よし、お前に買ってやる。」と言い、ガルドは会計をしてしまった。
悠徒に刀を買ったあと、忍にも指輪とネックレスを買ってやった後、店から出て近くの喫茶店で忍が万全の状態になるまで休憩をした。
喫茶店を出てからガルドは、「行きたい所はあるか?」と聞くと、忍は恥ずかしそうに「服屋に行きたい。」と言ったのでガルドは街中で最も目立っているサッカーグラウンドぐらいの大きさの服屋に入っていった。
中はとても広く、文化や季節、種族によって色々な種類のものが店においてあった。
そこで忍に合う服を6・7着買い、悠徒のも5・6着買って、店を出たときにはもう夕暮れだったので、ガルドのお勧めのレストランでディナーをしてこの日は終わった。