Episode.2 (part.24) 帰還
大会が終わり、悠徒と忍はガルドと裕奈に魔法の知識と戦闘技術を教わりながら、魔法学校での生活を満喫していた。
そして、悠徒達が魔法世界に来てからもう半年ぐらい経った。
魔法世界と悠徒達がいた世界が時間が違うと言っても、魔法世界で半年も過ごした悠徒と忍にとっては他の学園にいる同級生と半年も年を取ったのだ。
悠徒は魔法世界に来るまでは脂肪はそんなに付いていなかったが、今では脂肪は必要最低限しか付いてなく、身長も175cmになった。
忍の方は、元々、剣道部に入っていたので身体つきが良かったが、半年の生活で女性としての気品を失わない位の筋肉と、|胸が少し大きくなっていた《・・・・・・・・・・・・》。
「お二人さん、そろそろこっちの世界とはおさらばだ。」
二人をいつもの応接室に事前に呼んでおいて、ガルドは応接室に入って早々にそんな事を言った。
悠徒と忍は目を丸くし、驚きの余り返事が出来なかった。
「おいおい、そんな事、判り切っていただろ?」
ガルドはやれやれといった感じに両手を目線の高さに上げた。
「ガルドさん、それは悠徒も判っていると思いますが、なんで今になって帰ると言ったのですか?」
忍は引き攣った顔で言った。
「いや、だって、昨日思い出したんだから・・・仕方ないじゃない。」
しゅんと体操座りをしていじけ始めた。
「あぁ、一応、言っておくが、他の世界に滞在できる期間は1年が限度だと言われてるぞ。」
いじけたガルドがさり気無く爆弾を投下していた。
「・・・ガルドさん、そう言う事は、前もって言ってください。」
悠徒は拳に溜めた魔力を解放させて、拳の周りに波状の衝撃波を生み出し、ガルドにお見舞いした。
だが、ガルドは避ける事もせずに、掌で防いだ。
そして、お返しとばかりに悠徒の眉間の方に腕を伸ばし、でこピンのポーズをした。
ガルドと悠徒との距離は離れているので、でこピンは当たらない。
しかし、ガルドがでこピンをした瞬間、悠徒はライフルでも撃たれたかのようにふっ飛び、壁に激突した。
「まだまだ修業が足りないぞ!」
ガルドはそう言いながら悠徒の首根っこを持って立ち上がらせた。
「ガルドさんの攻撃は達人以上の一種のバケモノクラスの攻撃なんて避けきれません。」
悠徒はそう言うが、自分が避けれなかった事に悔んでいた。
そう、さっきの攻撃よりもアルティベートの攻撃の方が断然速かったのだった。
「まあ、半年で何とかなるレベルの問題じゃないから、地道に頑張れよ。」
ガルドはそう言って、応接室の扉の方に歩んだ。
「悠徒、忍、これを最後に渡しておく。それは、世界が違っても話せるように出来ている携帯電話みたいなものだ。」
ガルドが二人に渡したものは、ペン状の機械だった。
悠徒は横に棒状の突起を引っ張ると、巻物状の形になった。
「その画面にタッチして操作するんだ。携帯電話やパソコン、魔法発生機にもなるから大切に使えよ。」
ガルドはそう言いながら応接室のドアを開けた。
いつもなら学園の廊下に出るはずなのだが、ガルドの魔法によって元居た世界に通じていた。
「あと、魔法世界に行くための鍵だ。」
ガルドは悠徒にそれを渡すと同時に悠徒と忍は元の世界に戻った。
出て来た先は自分たちの教室だった。
辺りは暗く、時計を見ると、もう5時を回っていた。
「忍、俺たちがあっちの世界に行った時間は昼前だったよな?」
悠徒はガルドからこの世界と魔法世界の時間について聞いていたので疑問に思った。
「確か、魔法世界での時間とこの世界の時間は別だから、時間の経過が起こらないって言ってたよね。」
「じゃあ、これはどう言う事だ?」
悠徒は急いでガルドから渡された携帯を開き、予めガルドが登録してくれていた番号をタッチして電話をかけた。
『ゆ、悠徒か・・・ザザ・・な、んか、ザ、・・・魔、ザザ、だから、・・・気を――――――』
電波状態?が悪いのか、ガルドの声がノイズで殆ど聞こえず、仕舞いに通信が途絶えてしまった。
「くそ!!」
悠徒は近くにあった机を蹴った瞬間、地震のような揺れが悠徒たちを襲った。
忍は地震ではないと冷静に判断し、揺れの起こった窓側に近づいて、グランドの方を見た。
「何なのよ!あれは!!!」
忍は驚愕の余り怒鳴る感じに言うと、悠徒は急いで窓の方を確認した。
「こっちの世界にはこんなの居るか!」
悠徒はそう言いながら、窓からグランドに急行した。
グランドには生憎誰もいなかった。
悠徒は教室が3階にあるにも拘らず飛び降り、地面に着いた瞬間、空中で魔力を足に溜めていたのでその魔力を爆発させて一気にそいつとの距離を詰めた。
そいつは悠徒が飛び降りた瞬間に気付いていたが、悠徒のスピードに追い付いておらず、突進の態勢の状態で悠徒の一太刀で息の根を止めた。
忍は悠徒が刀を仕舞ってすぐに来て、悠徒と忍はそいつを見た。
「こんなのがこの世界に存在したか?」
悠徒は悪ふざけの感じに言った。
「いるわけないじゃない。そもそも、こんなのがいたら、世界が終わるよ!」
忍はそう言いながら自分の携帯を取り出して、ガルドに連絡を取ろうとしたが、返事がなかった。
「―――お~い!」
忍が携帯を仕舞ったと同時に何所からか声が聞こえた。
悠徒と忍はその声のする方を見ると、そこにはクラスメイトの羽田拓哉がいた。
「拓哉!この状況は何だ?」
悠徒は拓哉の方へ走りながら言うと、拓哉は頭を下げながら言った。
「2人が原因不明の失踪が半年前に噂になって、1ヶ月ぐらい経った後に世界中にあいつ等が出て来たんだ。」
「半年だって!」
悠徒は驚いた。
「じゃあ、あのモンスターの発生した原因は?」
「一部の報道ではキメラを誰かが秘密裏に作っていたのが脱走したのか、解き放ったと言ってた。それと、学校のみんなは体育館に全員隠れている。軍の人が周りを守ってくれてるからひとまず安心だから、2人も早く逃げよう。」
そう言って拓哉は体育館の方に向かった。
が、拓哉が体育館の方に振り向いた瞬間に、拓哉の目の前にモンスターが出現して、襲い掛かっていたが、忍の刀でモンスターは跡形も無く切り裂かれた。
「悠徒もそうだけど、澤井さんも何で刀を持っていて、何でそんなに強いの?悠徒なんか体育の成績は俺と変わらないのに。」
「まあ、それはまたの機会でな?」
悠徒はそう言いながら体育館に向かった。