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紅の魔眼と白銀の刀  作者: 櫻庭空
Episode1
24/34

Episode.1 (part.23) 暴走・覚醒

 1回戦2試合目のガルモンド・スフェルVSバレンティーナ・リセはバレンティーナの圧勝で勝負が決まった。

 2回戦は、バレンティーナ・リセVSアルティベートで、悠徒たちは2回戦目を観戦していた。

 結果的に言えば、2回戦はアルティベートの圧勝で決着した。


『第2回戦、試合、開始!』

 司会の合図でバレンティーナはアルティベートの懐まで一気に詰め寄ると、右手に持ったナイフでアルティベートに斬りかかった。

 だが、アルティベートは避ける行為もしずに、バレンティーナの攻撃を喰らった。

「美しい物には棘があるのよ。坊や。私のナイフには麻痺毒が塗られてるの。だから坊やはもう動けない。」

 バレンティーナは警戒するのを止めてアルティベートの方に歩み寄り、体を倒そうと手を出した瞬間、バレンティーナとアルティベートの間に真っ赤な花が咲き誇った。

 アルティベートは赤い花が散る前にバレンティーナの後方、数m後ろに移動しており、バレンティーナはアルティベートが移動したのに気付いて後ろを向いたが、意識が朦朧としてその場に倒れた。

『第2試合、勝者、アルティベート選手!あと、早く医療部隊!』

 バレンティーナの倒れた原因は、アルティベートを倒そうと出した右手がアルティベートの魔法によって右腕が消失して、そこから出た血が花のよう形を変えて散っていったという、可憐で残酷な第2試合だった。


『第3試合は明日の11時から始めます。』

 司会のアナウンスで観客の全員が会場を後にした。

「最後の試合、見ててムカついた。」

 忍がいきなり立ち上がって大声で言った。

 そして忍は悠徒を指差しながらこう言った。

「悠徒、次の試合、絶対に勝ってよ!!あんな奴なんてボコボコにしてやれ!!」

 悠徒はポカンと口を開けながら頭を縦に振った。


 その夜、悠徒は眠れなかった。

 勝ち上がったアルティベートという少年はつい最近に会ったような記憶がボンヤリとあったが、考えれば考えるほど、アルティベートについての記憶が希薄になっていった。


『ただ今から、第3試合を始めます!両名、フィールドに上がってください。』

 悠徒は眼帯を外し、刀を最初から出してフィールドに上がった。

 一方のアルティベートの方は昨日と同じで、武器類は手に持たず、ブレスレットや指輪のようなマジックアイテム類も所持しずにフィールドに立った。

『第3試合、アルティベート選手VSアサクラ・ユウト選手、試合、開始!』

 司会の開始合図と共にすぐさま動いたのは悠徒だった。

 悠徒は抜刀と同時に魔法詠唱を終了させて、刀に青い炎を纏わせた攻撃をアルティベートにお見舞いした。

 アルティベートは開始直後から動かずに、悠徒の攻撃を直に喰らったと思いきや、アルティベートは風の防壁を鎧のように纏っていて、刀は金属の研磨するような音を出し、最終的に刀は刀身の半分の所で真っ二つになった。

 悠徒は刀が破壊された事に驚いたが、アルティベートに近づき過ぎたので、悠徒は慌てて距離を取った。

 悠徒の回避行動が幸いだったのか、悠徒が後退した瞬間に、さっきまでいた悠徒の場所を中心に大きな穴ができた。

「君って何所かで見た事があるけど、何所だか分かるかい?」

 アルティベートが言った一言で、悠徒はガルドに言われて行った任務で出会ったフードの少年だと思い出した。

「手前、今度は何しに来たんだ?」

 悠徒は睨むが、アルティベートは顔色一つ変えずに悠徒を見ていた。

「・・・・やっぱり会った事があるのか・・・いや、自分より弱いのは憶えていなくてね。君はそこそこやるみたいだ。」

 アルティベートはどう見ても不自然な笑みを見せた。

「そういや君の右目は特殊な目をしてるね。・・・・あっ、君は同年齢の女性と一緒にいた少年か。」

 アルティベートは『あぁ』という感じの顔をしながら言った。

「それで、俺の右目か命を貰いに来たってか?」

 悠徒は臨戦態勢をとったまま言った。

「いや、まだ(・・)、君の右目は貰わないよ。ただ、今回の優勝賞品が必要だから参加したまでさ。」

 アルティベートはそう言いながら悠徒との距離を一気に縮めた。

「まあ、今ここで君の目を貰っても良いけどね?」

 アルティベートが右手を前に突き出すと、悠徒目掛けて地面から岩の棘が無数に飛び出した。

 悠徒は迅風で棘の上を滑って避け、アルティベート目掛けて竜巻を起こした。

 竜巻がアルティベートに襲い掛かったが、アルティベートはそれより早くに岩の壁を出現させて全くもって悠徒の攻撃が当たらなかった。

 悠徒は紅に戻し、岩壁目掛けて竜の息吹(ドラゴンブレス)をした。

 マグマのような熱さを持つ息吹は岩の壁を一瞬に真っ赤にして溶かした。

 だが、アルティベートはそこにはいなく、悠徒の攻撃は無意味に終わった。

「君の魔法は素晴らしいよ!だけどね、人形である僕にはあまりにも非力だ。正直がっかりしたよ。」

 アルティベートはそう言いながら右手を上にあげて、その手を下に振り下ろした瞬間、悠徒は地面に吸い寄せられるように倒れこみそうになった。

 悠徒はギリギリの所で態勢を保ったが、頭上から両手を握りしめたアルティベートが叩き落とそうとしていたので、悠徒は足をスライドさせて回避した。

「俺はお前に評価される筋合いは、ねぇ!」

 叫びながら悠徒は回し蹴りを顔面にお見舞いした。

 だが、アルティベートは右腕でガードして、隙の出来た鳩尾に左ストレートが入り、悠徒は再び地面に倒れそうになった。

 悠徒の体は地面にゆっくりと落ちて行くが、悠徒は受け身の姿勢も、していなかった。

 悠徒は鳩尾の時点で意識が飛び、気を失っていたのだ。

 だが、地面に突っ伏す前に悠徒の足は再び地面を踏みしめていた。

 悠徒の左目は閉じた状態。

 だが、右眼は開いており、紅い炎が眼から溢れ出ていた。

「やっと、自由が手に入ったわ。あの小僧の意識があっては目覚めても封印されてしまうからな。」

 悠徒?は腕や首などの関節を鳴らし、自分の体の確認をした。

「散々弄んでくれたな。」

 悠徒?はそう言いながら、アルティベートの知覚スピードより速いスピードで攻撃を与えた。

 悠徒?は今までの戦闘とは違い、完全の肉弾戦、近接戦闘で猛攻撃を繰り広げた。

 一方、アルティベートも攻撃を喰らいながら、魔法を次々と発動させた。

 悠徒の体は引き裂かれ、切り刻まれ、圧縮され、焼却され、凍結されて、体の原型を留めていなかった。

 観客からは悲鳴が上がり、司会の方も試合終了の合図を言おうとしたが、悠徒?は阻止した。

 悠徒の体は黒い霧に包まれて、霧が晴れた時には悠徒の体は元に戻っていた。

「さすが、紅の内なる力・・・・ですが、私の相手ではありません。」

 アルティベートは右手で指を鳴らすと、アルティベートの周りに大量の魔法陣が出現して、そこから悪魔という表現が最も近いモンスターが100体以上出現した。

 紅は薄ら笑いをし、次の瞬間、爆風が紅が居た所から発生した時には、紅はそこには居なく、モンスターは1体も残らずに肉片と化して、黒い霧となって消滅した。

 紅はアルティベートに歩み寄り、アルティベートも紅に歩み寄った。

「君は凄いよ。僕のコレクションを全て破壊した。それだけでも称賛に価する―――」

 アルティベートの話が終わる前に紅はアルティベートに殴り掛かった。

 アルティベートは後ろに回避して、距離を空けたと思いきや、魔力を足に込めた状態で、地面を蹴って跳躍した。

 そして、アルティベートは魔法で作った氷の剣で紅目掛けて突いた。

 だが、紅の炎で一瞬に融解して、水になった。

 アルティベートは紅に向けて、3個の上級魔法を同時発動したが、紅の魔力の壁に阻まれて失敗に終わった。

 紅は悠徒の持つ魔力以上の魔力を使い、15個の最上級魔法を発動させ、その内、12個はアルティベートに攻撃を行い、残りの3つは自分の体に付加能力を与える魔法を使った。

 12個の魔法攻撃はアルティベートを襲ったが、回避されて魔法が掠った程度しかダメージが無かった。

 紅は、強化した体でアルティベートに渾身の一撃を与えようとした。

 だが、アルティベートはいつの間にか紅の懐に入り込んで剣で顔面を切り落とそうとしていた。

 しかし、アルティベートは糸が切れたように動かなくなった。

 紅はアルティベートの右手に持つ光り輝く剣が、右眼のほんの数mmしかなかった。

 アルティベートは急に剣を仕舞い、紅から離れた。

「運が良かったな。たった今、主人から招集が掛かった。君とのお遊びも此処までだね。」

 アルティベートはそう言うと、左手の指を鳴らした瞬間、アルティベートはそこには居なかった。

『・・・・どう言う事でしょうか?アルティベート選手の魔力反応がありません。』

 司会の言葉に会場もざわざわと騒がしくなった。

 司会の下に一人のスタッフが表れて耳打ちをすると、司会の口から悠徒の勝利宣言が言われた。


「ガルドさん、大変でしたよ!」

 悠徒は学園に戻ってガルドに愚痴を溢していた。

「そうですよ。悠徒なんか一回死んだんですよ!」

 忍もここぞとばかりにガルドに愚痴を溢した。

「大変だったな。ご苦労さん。」 

 ガルドは悠徒と忍の奮闘に関心が無く、タバコに火を点けていた。

「っで、優勝賞品は?」

 ガルドはタバコを灰皿に置くと、悠徒に問い掛けた。

 悠徒は優勝賞品が入った箱をガルドの前に出した。

「何ですか優勝賞品って?」

 悠徒はガルドに言われて優勝賞品を確認していない。

 その代わりと言ってはいけないが、優勝賞金は悠徒の懐に入っていた。

「これはなぁ・・・」

 ガルドは忍にこっちに来るように手招きして、悠徒一人がソファに座っている状態にし、悠徒だけ(・・・・)に見えるように箱を開けた。


「そう言う事でしたか・・・・はぁ。」

 悠徒は大量の汗を掻いていた。

 時間的には一瞬の出来事だった。

 開いた箱の中身は紅の欠片が入っており、悠徒は精神の中で数時間の闘いの末に舞い戻って来たのであった。

 悠徒の右眼の眼帯は効力を失って、大会後からは眼帯を付けていなかった。

 その右眼は普段は赤色の眼の色をしているが、箱を開けた後の悠徒の右眼は青色に輝いていた。


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