Episode.1 (part.16) 災難
「居たわ!あそこです!」
「やばっ!見つかった!」
真昼間から刑事ドラマのような展開を拡げているのは、そう、悠徒であった。
昨日、UBCの3番隊の部隊長マッケンス・ハーベルトによって悠徒は国際指名手配犯になった。
悠徒の懸賞金は日本円にして約3億2000万円。(こっちの世界では320円で1ビル。よって懸賞金は100万ビルとなる。こっちの世界での一般的な平均年収の20倍ぐらいである。)
っで、町の住人は懸賞金の欲しさで店を臨時休業したり、仕事を投げ出して悠徒を追いかける人が絶えなかった。
そのせいで悠徒は帰ってきて早々、鬼ごっこ状態でもう3時間ぐらい走り続けている。
「待て~!!!犯罪者なら早く捕まってくれよ。この俺の手に!!」
「私の犯人よ!これで店を拡大するの!!」
「俺は犯罪者じゃね~!!!!」
「犯罪者じゃなきゃ国際指名手配されんわ!!」
「悠徒、大変だね?俺も裏の方では懸賞金が付けられてるから。あと、学園は安全地帯だから、まだ逃げたいなら走り続けろよ。」
何回も同じ感じのやり取りをしている間に、ガルドが悠徒の真横に忍び入るように来て励ましとアドバイスを言ってすぐに消えた。
悠徒はガルドのアドバイスどおりに学園を囲っている城壁のような高い塀を魔力を込めた一っ跳びで塀を飛び越えた。
「これで付いて来れないだろう・・・」と悠徒は息を切らせながら言い、左右を確認すると、悠徒の目の前に小柄な少女が尻餅をついていた。
悠徒は自分が少女の目の前に飛んできて、少女がビックリして尻餅をついたという事に気付いて謝罪した。
「ごめん。ビックリしたよね?怪我してない?立てる?」と言い、少女に手を差し伸べた。
少女は悠徒の手を取り立ち上がるとズボンの埃を落とした。
「君ね~、急に僕の前に飛んできたからビックリしたじゃない。」
「ごめん。ちょっと町の人たちに追いかけられてあの塀を飛び越えてきたんだ。」
悠徒の一言を聞いた少女は口をポカンとあけて絶句してしまった。
「また追いかけられるかもしれないから。じゃあね!」
悠徒は少女が我に返る前に走り去ってしまった。
我に返った少女は悠徒がもういない事に気付き、まだ言いたい事があるのに行ってしまった悠徒に怒りが芽生えた少女は目の前に悠徒が落としたであろう代物が落ちていた。
「これは・・・一見、ブレスレットに見えるが、これは刀だね。レベルはSS+・・・最上級レベルじゃないか。フフフフフ・・・・」
少女の背中からは暗黒オーラが立ち上ったと思ったら、スッとオーラが消えた時にはそこに少女はいなかった。
「あれっ、ブレスレットが無い。」
悠徒がブレスレットを失くしたのを気付いたのは自分の寮部屋だった。
自分のポケットなどをくまなく探したが、見つからない。
「あっ、そう言えば!学園内に飛び込んだ時に落としたのかも。」
悠徒は記憶を辿って、自分が落とした事を気づいた。
悠徒は自分が着地した場所に急いで行ったが、周囲には魔力反応が無かった。(悠徒の刀のブレスレットは微量だが展開用に魔力が蓄えてある。)
「もしかしてあの時に居った人が届けてくれたのかな?」
悠徒はそう思い、急いで学園の落し物保管所まで行ったがそんな物は預かっていないと言われてしまった。
「はぁ、じゃあ、あの子が持っているって可能性が高いな。」
「あの子って、誰のことですか?」
「あの子って、俺が学園の塀を飛び越えた時に学園側で俺の着地地点に居った子の事だよ・・・って、チア。何でここに?」
「うんとね、悠徒に用事があったから、悠徒の居場所を予測して見つけたの。」
「チア。その力は多用するなって言われなかったか?」
「ううん。言われてないよ。だって悠徒のは特殊だから多用するなって事だと思うよ。私が思うに・・・」
悠徒の独り言を言っている傍で眼の力で来たチアが悠徒の独り言に介入して来たのだ。
「っで、チアはその眼の能力を使ってまで俺に用があったんだろ?」
悠徒は生徒の名前も学年も分からないので一時休憩がてらチアの用件を聞いた。
「そうそう!悠徒に渡したい物があったのを忘れてて、ついさっきその事を思い出したから探し出したのだけど・・・」
「それで、用件は何なんだ?」
「これを渡せって村長から。魔法を押さえ込む袋に入れてあるから魔法具だと思う。」
チアは手に持っていた小さな袋を悠徒に渡した。
「俺に武器でもプレゼントして・・・・って、これは、くっ、紅の欠片!!!」
悠徒は袋の中を確認したらそこには紅の欠片が入っていた。
『間違いないな。これは我の欠片だ。』
紅がそう言うと、悠徒はその欠片に触れた瞬間、欠片は悠徒の右目に吸い込まれていった。
『此度の欠片には検索、隠密、精度補足の機能が付いた索敵。』
「スナイパーか・・・検索スキルがあるなら俺のブレスレットを持ったあの子も探せるだろ?」
『無論。出来るだろうが・・・』
「よし!じゃあ、試しに使おう!」
悠徒はそう言って右目を覆っている眼帯を外して紅を発動した。
そして紅の指示の下、右目の周りに文字を描いた。
すると、悠徒の目が段々、黄色になっていき、そして薄い黄緑色になって眼の色彩変化が終了した。
悠徒の右眼に見えているのは膨大な情報の塊。
簡単に言うと、人の周りに色々な数値や箇条書きで言葉が浮かんでいる状態。
「何だこれは・・・顔の右横にチアの個人ステータスみたいなのが書かれてる。」
「うそっ!それって個人情報まで見えないでしょうね?」
チアが悠徒に緊縛した表情で迫り寄って来るのを見て、悠徒はニヤリと笑った。
「残念ながらチアが青の縞パンツを履いている事ぐらいしか判らないよ。」
「きゃあ~~~!!!」
チアは悠徒に今履いている下着の色を当てられた事による無意識の防衛本能で悠徒に最大魔力の篭った平手打ちが炸裂した。
「少しからかってやろうと思い、やってしまいました。すみませんでした。」
悠徒はチアの平手打ちを受けた後、土下座をしながらチアに謝罪した。
「もう良いって。こんな所で土下座されても私が苛めているみたいだからもう頭を上げて。もう気にしてないから」
「本当に申し訳御座いませんでした。」
悠徒はさらに頭を下げた。(おでこが地面にめり込むほど・・・)
「もう良いって!!でも、一つだけ聞きたいことがあるの。」
「何なりと命じてください。死ねと言う命令以外なら何でも聞きます。」
「・・・・。そのスナイパーと言う眼の能力で、私のぱっ、ぱっ、パンツを見たでしょ?それって普段から見えるって事?」
「・・・・・・カァ(顔が赤く染まる音)。見えない。見えない。見えないよ!意識を集中するとその人の隠している物が見える機能があって、それで見えただけです!」
悠徒は垂直立ちになりながら、早口でそう言った。
「・・・なら良いの。でも、今度そんな事をしたらさっきのじゃ済まないからね!」
チアはそう言って、悠徒の方に人差し指で注意した。
チアと仲直りをした後、すぐに本来する事を思い出した。(念のために言うが、パンツを覗く事ではない。)
「改めて。検索。俺のブレスレット。」
悠徒は眼を閉じてブレスレットの魔力の感じを意識すると、半径10kmの詳細な地図が悠徒の右眼に映し出され、その地図に魔力を表す点が表示され、その中の1個が点滅した。
「これか・・・俺たちの学園寮の10階。学園側から4つ目の部屋だ!」
悠徒はチアに別れを告げて猛スピードで寮に戻った。
現在、悠徒がチアに土下座をしていた同時刻。
悠徒のブレスレットを拾った、もとい持ち去った少女は白衣を纏っていた。
「じゃあ、検査しようか。」
そう言って少女は何所からともなく機材を自分の周りに置いて検査をし始めた。
「まずは形状から。見る限りブレスレットにしか見えないが、魔力が展開用に蓄えられているのがこの私に掛かれば簡単に判明するのよ!」
少女はそう言って、ブレスレットに意識を集中し、ブレスレットを展開させた。
そこには綺麗な刀が展開されていくのを少女は見蕩れていながら、手は次の作業の準備をしていた。
「次は、この武器の機能について見て見ましょうか。」
少女は、壁に吊るされてあったゴーグルを付て、魔力カット手袋を身に付けて刀に触った。
だが、悠徒の刀は魔力カットの手袋を突き破り、少女の魔力を吸い上げ始めた。
「なんっ・・・だ。まりょくが吸い・・・と、ら、れる・・・」
少女はすぐに魔力が枯渇し、その場に倒れた。
「この部屋か・・・すみません。」
悠徒は一応ノックしたが全く返事が無い。
ドアノブを捻ってみるとドアが開いたが、部屋は真っ暗の状態だった。
「人の気配はするけど真っ暗だな・・・」
悠徒は恐る恐る中に入って、部屋の明かりを点けた瞬間、目の前の光景に唖然した。