Episode.1 (part.11) 封印されしモノ
アルティベートと名乗る少年が消えた後、忍の使っていた鎧が破壊されたと同時にガルドに信号を送る役割があったらしく、ガルドが超特急で駆けつけた。
「大丈夫か?怪我は無いか?あと、物は?」とガルドが心配した感じで聞くと、悠徒は突然脱力して尻餅をついた。
「怪我は無いですけど、大変でしたよ!」と悠徒はガルドに愚痴を溢すとガルドは、「まあ、任務は特Sランクだが、それは物の中身が高価な物だからで、実際はBランク以下のはずだったが、俺が渡した鎧が破壊されるとなるとSランク以上になるな・・・」と言い、「わはは」とガルドは笑っていたが、悠徒と忍からしてみれば笑い事ではなかった。
なので、悠徒と忍は立ち上がって、ガルドの目の前に立ち、ガルド目掛けて鳩尾にパンチをお見舞いした。
学園に戻り、応接室にハイドが待っていると言われて悠徒と忍は応接室に向かい、応接室の扉を開けるとハイドが、「悠徒君、忍君、お疲れ様。今回は大変でしたね。」と心配と言う感じが微塵も感じない言い様だったので、悠徒はハイドを蹴り飛ばそうとしたが、忍に制止されて失敗に終わった。
「頼まれた物はこれでいいのか?」と悠徒は不機嫌な状態で机に物の入った箱を置いた。
「悠徒君。開けて下さい。私共は触れないので・・・」とハイドは言った。
悠徒にはハイドの言った意味が分からず疑問に思っていたが、しかないので箱の蓋を開けた。
その中にあったのはボロ紙の巻物であった。
「これは?」と悠徒は聞くと、「これは封印の巻物だ。もう使用済みだから封印されることはないが、この中に入れられたのを使うことができる。悠徒、この巻物に触ってみろ。」とガルドは言うので、悠徒は何の躊躇なく巻物に触れた。
「悠徒、触ったな?これでお前はこの中で新しい技の習得に命がけで勤しんで貰う。」とガルドが言った瞬間、悠徒は巻物の中に吸い込まれた。
悠徒は目覚めるとそこは暗い場所であった。
どんなに目を凝らしても何も見えない。
悠徒は歩き始めたが、進んでいるのか戻っているのかも分からない状態だった。
歩くのを止め、途方に暮れた悠徒は、桜華学園にいた時のことを頭の中で考えた瞬間に、暗闇の世界が崩れ去り、桜華学園の正門前の風景になった。
「これは、俺の頭の中にイメージしたのが再現されると言うことなのか・・・」と悠徒は一人理解し、うなずいていた。
『我が名は紅。封印されし物の抜け殻だ。汝、何を求めてここに来た?』悠徒以外誰もいない場所なのに、頭に響くこの声。
悠徒はその声の内容に疑問を持った。
何で紅と名乗るのか、そして抜け殻とはどう言う意味なのか。
悠徒は考えたが当然ながら知識がないので解らない。
「俺はここで新しい技を手に入れろというガルドさんから言われてここに来た。紅と言ったよな。俺は紅を持っている。お前は何なんだ!紅とは何だ!お前がその抜け殻とはどう言う意味だ!」悠徒は自分が疑問に思っていたことを言うと、紅の抜け殻は悠徒の目の前に人の形で出てきた。
「汝の紅は欠片。そう、欠片の中でも小さい粒。元々、紅というのは大きな赤玉だった。それが何者かに砕かれ封印された。我が抜け殻と言ったのは、我はこの紅の中で端の方にあった一部だからだ。それでも、汝の紅よりは大きいがな。」と言い、紅は口元に手を当てながら笑った。
「汝、我が力を欲するなら、くれてやろう。だが、今のお前では紅の力を使えない、ただの物だ。我の最後の遊戯にしてやろうぞ。」と紅は言い、悠徒から距離を離した。
「今から、我が汝に稽古という御遊戯をする。汝、これに付いて来れなければ汝に憑依し、我が体にして貰う。」と言い、紅は悠徒に向かって氷の槍を投げた。
悠徒は眼帯を外し、紅を発動するも紅が反応しない。
悠徒は何がどうなっているのか分からない状態になっているが、氷の槍は待ってくれない。
悠徒は急いで横に跳び、地面に倒れたが、悠徒の右肩には切れた後があった。
「いい反応だ。でもこの調子だと体がもたないぞ。」と紅の口調が変わり、若い男の声で紅は言いながら自分の周りに風の渦が生まれ、渦が消えた瞬間、紅は悠徒の目の前に現れ、悠徒の胸に手を当てたと思ったら悠徒は急に肺の中の酸素を抜かれ、そのまま校舎の昇降口の扉に激突した。
悠徒は大きく空気を吸おうとしたが、その前に紅が悠徒の目の前に現れて、雷属性の魔力で作られた手刀に纏った剣が悠徒を真っ二つにするように上段から振り下ろされた。
体に十分な酸素が行き渡っていない体は自由が効かず、横に倒れるぐらいしか出来なかったが攻撃は避けることが出来た。
だが、紅は悠徒が避けた瞬間に周りに氷柱の雨を作り、悠徒が倒れた瞬間、氷柱の雨が降り注いだ。
悠徒は倒れる瞬間に空気を出来るだけ多く吸い、反撃体制に入ろうとしたが、頭上に氷柱が大量に構えてあったのが見え、一瞬、悪寒が走り、急いで攻撃範囲外に逃げた。
「紅を使う者ではないのか?俺はそんな物は持っていないが、今のお前には楽勝に勝てるぞ!」と紅は言い、地面を踏みつけた。
紅が踏んだ地面が抉れて悠徒目掛けて地面の抉れが襲いかかった。
悠徒は短期間で鍛えた筋力と紅から使役している魔力で高く飛び上がり、校舎の屋上まで避難した。
悠徒は屋上に着地するのと同時に先ほどの紅が言った言葉に疑問を持った。
『そんな物は持っていない』どう言う意味なのか。
先ほどまで紅の抜け殻と言っていたのに、紅ではないと全否定している。
悠徒は悩んだが、悩む途中で紅からの攻撃が来て、悠徒はまた攻撃を避けるのに専念することになった。
「もう、かれこれ2時間ぐらい遊んでいるが、そろそろ痺れを切らすぞ。早く力を見せろよ。」と紅は少し苛立ちを見せながら言った。
悠徒は紅の攻撃を避けながら、紅の言葉について考えていた。
そして、悠徒は一つの仮説を作った。
「お前は紅じゃないな。誰なんだ?」と悠徒は半信半疑で聞くと、「今頃名前聞くの?遅くないか?まあ、良いけど。俺は遠藤君(仮)で。」と答えた。
「遠藤君(仮)って、まんま偽名だろ!もうちょっとマシな名前を付けろよ!」と悠徒は突っ込みすると、「じゃあ、フォン・ユエで。」「じゃあって、思いっきり偽名ですよね!」とユエが言うと、悠徒が即座にツッコミをいれた。
「じゃあ、ユエさん。あなたは紅を持っていないと仰りましたね。どう言うことですか?」と悠徒は聞くと、ユエは攻撃体勢を止め、「俺はそんな物を使わずにして最強だから必要がないから持っていない。」ときっぱりと言うので、悠徒はますます意味が分からなくなるので話を逸らした。
「ユエさんは何故ここにいるのですか?」と悠徒は聞いたが、「思い出せんな。だが、お前を鍛え上げるのが俺の今の役目だ。」と言ってユエはそれ以降あまり話さなくなった。
「雷鳴に轟く我が心に創られし一本の槍。雷光槍!!!」悠徒は唱え終わり右手に持ったその槍でユエに特攻し、ユエの手刀を弾くと、すぐさまユエの胸目掛けて槍を投げ放った。
槍は音速のスピードでユエに襲い掛かるが、ユエは一瞬で攻撃範囲外に瞬間移動し、氷柱の雨を降らし、悠徒にダメージを蓄積させていった。
ユエの攻撃で傷だらけの悠徒から多量の血液が流れ出ている。
悠徒の体は限界に近く、意識も朦朧としていた時、心臓が痛む感覚が襲い掛かり、悠徒は立っていられなくなった。
ユエはここぞとばかりに大魔法の呪文を唱え始めた。
5分間ユエの詠唱が続く中、悠徒は必死に逃げようと体に力を入れるが、指先が少し力が入るだけで、魔法を出すための魔力も尽きていた。
ユエの詠唱が終わり、悠徒の回りに大きな魔方陣が現れて、悠徒は魔方陣の中心で浮いている状態になった。
「これで最後だ紅の持つ者よ、この魔法で最後にする。」とユエは言うと、「我、紅の名に於いて、汝に力を分け与え、風月の迅風を授ける。」とユエが言い、魔方陣が一番の輝きを見せ、魔方陣が砕け散ると、なんだか右目に違和感のような感覚があったが、それはなぜかそよ風に吹かれている感じの居心地の良い感覚だった。
「これで終わりだ。念のため、感覚を手に入れるために一回だけ本気で闘ってやる。剣を持て悠徒。」とユエは言うと、無詠唱で悠徒の周り半径100メートル以上あると思われる氷柱の雨がさっきの時より数段速い、音速を超えるスピードで倒れている悠徒に襲い掛かった。
悠徒は、無理だと思い、目を閉じたがそこにはダイヤモンドダストがあった。
『面倒かけるなお前は。』と紅の声が頭に響いて悠徒は驚いた。
こっちに来てから紅の声どころか、悠徒から紅がなくなったと思い込んでいたのに、急に出て来た事に悠徒は驚いた。
悠徒は紅の帰還?に続き、悠徒は力を込めると、体中から魔力が滲み出て来て、さらに腰には愛刀があったことに、悠徒から勝機が芽生えた。
「さっきのお返しをしないといけないな。」と悠徒は言うと、刀を抜き、魔力を刀に注ぐと、刀の周りに淡青緑色の魔力が纏い、悠徒は突きの構えをして足に魔力を込めた。
すると、悠徒の足の周りに風の渦が生まれ、悠徒は踏み込んだ瞬間、ユエの目の前まで一瞬で縮めると、ユエに一撃を与えた。
ユエは咄嗟に屈み込んで回避できたと思ったが、悠徒の魔力で纏った刀は風の刃を持つ能力を所有していたらしく、ユエの額に一筋の傷が出来た。
そしてユエは、「これでお前はこの力を自由に使える。これでお前の守りたいものを守れ。紅はお前の思いに答えてくれる。お前が思ったことはたとえどんな悪い事にでも答えるから注意しろよ。後、発動の仕方とかは、紅に聞いてくれ。それじゃ!」と言い、ユエの体は桜の花びらになり、空に舞っていった。