Episode.1 (part.9) 再戦
忍と買い物に行った次の日、普通の学校と同じように2日の休日の後は5日間学校。
悠徒は朝早めに起きてベット横の台にある眼帯を着けて、ジャージに着替え、朝のトレーニングをしに行った。
寮の玄関を出ると、忍が準備体操をしていた。
「いつもの朝練か?」と悠徒は聞くと、「体力が落ちたら副部長は務まらないし、習慣化しているから・・・ダイエットになるし。。。」と最後の方がごにょごにょとなっているが、まあ、習慣になっているだと言う事だな。
「じゃあ、一緒に走るか。」と悠徒は忍に提案すると、忍は、かぁっと顔を赤面し、「うん。いいよ。」と頷いた。
悠徒と忍は学園内をランニングすること30分。
忍はさすがという感じに全然息切れをしていないが、悠徒は完全にスタミナ切れで近くの芝生でぶっ倒れていた。
「30分も走り続けるとキツイ。よく忍は息切れをしずにいられるな?」と悠徒は感心して忍に言うと、「まだ朝練は終わってないよ。次は悠徒の剣の鍛錬を手伝ってあげる。」と忍は言い、寮の玄関前の階段に立掛けてある竹刀2本持ってきて1本を悠徒に渡した。
悠徒は、「2本が良いけどまあ、しょうがない。」という独り言を忍は耳にして、いきなり悠徒に「2本!?悠徒、もしかして一昨日の時も2本でやっていたの?」と忍は言うと、「ああ、あの時は緊急事態だったし、二刀流がすぐに思い浮かんだからな・・・」と悠徒は忍が睨んでいたので視線を逸らしながら言った。
「バカじゃないの?竹刀もろくに握っていない人がいきなり二刀流でやるなんて腕を痛めるだけ。」と忍は怒りながら言い、さらに、「どんな時でも1本でやる事。解った?」と忍は言って右手を出して指切りのポーズをした。
悠徒も右手を出して指切りをして約束をした。
悠徒の剣の稽古をすること30分、朝練を終了して自室に戻りシャワーを浴びて制服に着替えて、携帯をポケットに入れて朝食を作ろうとしたとき、部屋のベルが鳴った。
ドアを開けるとそこには忍がいた。
「悠徒、朝食食べた?」と忍は聞くと悠徒は、「今から。忍もいる?」と言って、忍はうんと頷いてダイニングにある椅子に腰掛けた。
悠徒は手際良く調理して、洋食を作った。
内容は、バケットにスクランブルエッグ、ヨーグルトに紅茶。
「悠徒って紅茶派?」と忍は聞くと、「いつもはコーヒーだけど、忍は苦手かもしれないと思って紅茶にしたけど、コーヒーの方が良かったかな?」と言うと、「紅茶で良い。」と少し怒鳴る感じに答えて悠徒が作った朝食を食べ始めた。
朝食を食べ終わって少し休憩を取って、皆が寮から出で行く音がだんだん多くなっていくのを聞いて、そこから少し時間がたって、寮から出て行く人が少なくなっていったのと同時に悠徒と忍は悠徒の部屋を出た。
悠徒の部屋は2階で、忍の部屋は4階に位置するので忍が悠徒の部屋に行くのが効率が良いのだった。(実際の所、悠徒が女子の部屋に居座るのが嫌だったからだけど・・・)
部屋を出て階段に向かう途中、「お二人さんおはよう。」と、突然側面から挨拶されて忍はびくっとして、二人は声を掛けられた方を振り向くと、そこには短髪のスポーツマン選手みたいな体型のクラスメイトがいた。
「おはよう。」「おはようございます。」と悠徒と忍は挨拶をすると、「お二人さん。今、同じ部屋から出てなかった?もしかして・・・・ふふふ」とニヤケながら言った。
忍はカァっと顔を赤面にしながら、「朝練をした後で、悠徒の部屋で朝食を食べてただけで、それ以上のことは何もしていません!!!」と忍は言い返すと、短髪のクラスメイトは「それ以上って何なのかな~?」と知ってて聞いている感じで言うと、「それは・・・・・」と最初のところ以外まったく聞き取れず、その後ぼふっという効果音が聞こえ忍の顔が真っ赤になって床にへたり込んだ。
「ごめんごめん。」と言いながら忍の腕を持って持ち上げて支えてあげて、悠徒もやれやれと思いながら悠徒は忍をくいっと持ち上げて抱えた。
クラスメイトは少し顔を赤らめて口笛を吹いて、「お姫様抱っこをするなんて大胆なんだね朝倉君は。」と言うと、「じゃあ、持ってってくれますか?」と悠徒は言うと、「女性に任せるなんて男子としてあるまじき行為だよ。」と言いながらも、「私のせいだからまあしょうがないけどね・・・・私が運ぶから朝倉君は先に行ってて。」と言ったが悠徒は、「いい」と言って階段を下りていった。
「その、朝倉君と言う呼び方を止めてくれないか?」と悠徒は言うと、「悠徒君なら良いの?」と言ってくるので、「悠徒で良い。」と悠徒は言い、「わかった。」と返答した。
「ところで私の名前を言わないところがあやしいけど、もしかして悠徒は私の名前覚えてないとか?」と言うので、「あれだけ多くの人に自己紹介されると顔と名前が一致しないとか覚えてないのが普通じゃないのか?」と悪びれる様子も無く悠徒は言うと、「ひっど~い。」と言っているが、自分もその立場だったらと想像したのであろうか顔は引きつっていた。
「私の名前はエリス。エリス・スタッフフォード。ヨロシクね。」と言い、階段まで差し掛かっていたのでエリスは大きく跳躍して踊り場に着地した。
悠徒はゆっくり忍を抱えたまま降りて行き、ようやく玄関まで着いた。
「う~ん。」と忍はうなされて、目を開けると、そこには悠徒の顔がアップで映っており、忍は一瞬殴ろうと思ったが、運ばれて来たことを理解して抵抗するのを止めた。
「悠徒、もう大丈夫だから降ろして。」と忍は恥ずかしそうに言うと、悠徒は素直に降ろしてやり、「本当に大丈夫なんだな?」と聞くと、忍はコクリと頷いた。
登校中、忍はエリスと会話しており、悠徒は二人の会話を聞きながら微笑ましく見ていた。
廊下を歩いていると、悠徒のクラスの方から騒ぎ声が聞こえた。
しかし、悠徒が教室に入ると突然空気が一変した。
「みんなおはよ~」とエリスが悠徒の後ろから教室に入ると女子から挨拶があった。
悠徒は明らかに様子がおかしいと思った。
「負け犬さんが登校してきたよ。うざぁ。」という声が教室に響いた。
悠徒は声の聞こえた方を見ると、そこにはセルティウムがいた。
悠徒はセルティウムの言葉を無視してクラスメイトに挨拶をしていたのが気に入らなかったのか、「負け犬が無視してんじゃねぇ!」とセルティウムが怒鳴るので、悠徒は、「騒がしい奴がいるな。」と明らかに挑発するように言った。
「また負けたいのか負け犬!そんなに負けたいなら決闘してやるよ。」とセルティウムが悠徒の挑発を聞いて決闘を申し込んだ。
「別に良いけど、場所は学校の武道場でやらないか?ここじゃ被害が大きすぎる。」と悠徒は余裕な感じで言うので、セルティウムはついには血管が浮き出て完全に狂気状態になった。
生徒の一人が廊下で聞いてたらしく、先生があわてて二人の間に入って、「またやるの?」と呆れた感じに言うと、先生は諦めたらしく二人について来るように言った。
武道場の中はとても広く、観客席がフィールドの周りにあり、観客席とフィールドの間には観客の被害を無くす為に大規模な結界が五重にも張られてある。
かつてガルドが決闘を申し込まれたときにここでやったのだが、あまりにもガルドの破壊力が高くて三重もの結界が一発で破壊されたのをきっかけに、五重に結界を張ることにした。
悠徒とセルティウムが決闘場に着くとそこには溢れんばかりの生徒が見物に来ていた。
「先生、何なんですか?この生徒の数は。見世物じゃないでしょう。」と悠徒は聞くと、「先生にお前達の事を言いに来た生徒が広めてしまったのだろう。」と先生は少し驚いた感じに言った。
「まあ、負け犬の見世物としては良い所じゃないか。ここで負けれは学校中に広まるからな。」とセルティウムが言いながら馬鹿笑いをしていた。
「二人とも準備が良いなら始めるけど大丈夫?」と先生が言うと、「負け犬君にはまたあの剣を―――」「剣ならあるからいらない。」とセルティウムが言うのを掻き消すように言った。
「ほぉ、準備万端じゃないか。はじめからそのつもりだったのか?」とセルティウムは言うと、右手に着けている指輪が光り、前回悠徒に渡した剣を出した。
悠徒も戦闘するために右目の眼帯を外した。
「眼帯着けてると思ったら、そんな目になったのか!」とセルティウムが言って、「まあ、前と大して変わらないようだから、少しはハンディキャップをやるよ。」と言いながら来いと手で招いていた。
悠徒は腕慣らしという感じにセルティウムに突っ込んで行った。
セルティウムは悠徒が丸腰で来るので体術で来るのかと思ったが、悠徒の右手が光りだしてそこには刀が握られていた。
さらにその刀を悠徒はしっかり握ると刀が光り出し、悠徒はセルティウムにその刀を振りかざした。
セルティウムは自分の剣で弾こうとしたが剣が真っ二つになった。
そんな光景を見たセルティウムは慌てて後退し、もうひとつの十字架の剣を出した。
そしてセルティウムは接近戦ではなく遠距離で戦おうとしたが無駄であった。
悠徒はすでに紅を発動させて、紅の能力のオートガードが働いて、遠距離攻撃は悠徒には当たらなくなっていた。
「ありえない、ありえない!!!」とセルティウムは今起こっていることに理解できていなかった。
そしてセルティウムは悠徒に我武者羅に攻撃魔法を浴びさせたが、ひとつたりとも悠徒には当たっていない。
「あっアレがあった。」とセルティウムが小言を言うとポケットにしまってあったブレスレットを着けて発動させた。
発動した瞬間、武道場にいた全員に悪寒が走った。
「これならどうだ。負け犬がぁ!!!!」セルティウムの声だったがそこにあるのはまるでバケモノだった。
「試合は中止。直ちに朝倉悠徒君は退避して下さい。」と言う先生のアナウンスが聞こえ、フィールド内に先生と上級生が侵入してきた。
「試合の中止?まだ終わってねぇ!手出しした奴は俺が倒す!!!」と悠徒は大声で怒鳴った。
次の瞬間、観客も鎮圧部隊も一瞬にして恐怖感を覚えた。
そこには悠徒のような者がいた。
そして悠徒が一瞬にして消えたことで、セルティウムは必死に目で悠徒を追ったがどこにもいなかった。
見物人の上級生の一部は悠徒の威圧感をなんとも思わず、そして悠徒の動きを魔力察知をして観察していたが、あまりにも速いスピードで移動していることに驚愕して口が閉じなくなっていた。
セルティウムは悠徒がどこにいるかも判らず周りに攻撃魔法を連発するが、悠徒にはまったく当たらなかった。
さらにセルティウムのバケモノ化が進み、咆哮したと同時に鎮圧部隊の方に突進していったので、悠徒はセルティウムの背後で殺気を出した。
セルティウムは慌てて剣を後ろに突き刺したがもうそこには殺気は無く、目の前にそれはあった。
「雑魚が・・・」と悠徒は言うと右手に突然刀が出てきて、漆黒の光に包まれると同時にセルティウムにその剣が振りかかった。
刀はセルティウムの右肩から左横腹にかけて一閃を喰らわせてセルティウムは気絶をした。
そしてセルティウムのバケモノ化も気絶と共にきれいに消えていた。
しかし悠徒は刀をセルティウムに突き立てて串刺しにしようとしたが腕が動かなかった。
「――――しょっ、しょ、勝者は、朝倉悠徒!」と突然フィールドに現れた先生が言ったが、生徒はその状況が読み取れなかった。
先生総勢6名が出てきて、2人の先生が悠徒の腕を魔法で止めて、一人がセルティウムを看病して、残りの3人が悠徒に武器を向けていた。