3話 異世界の食べ物は注意しようね
「…異世界?」
緑の草原を進みながら、ボクはリノンの言葉に耳を向ける。
時折吹く風が、ボクの頬と髪を撫でていって、セットしていない髪が風にたなびいていた。
そんな髪を書き上げて、リノンの顔を見ると、プーっと膨れた表情になっており
「聞いてるの!?」
と言われてしまった。
ええ、ちゃんと聞いてます。
ひとしきり、ボクに注意をした後、スッキリしたのか、自慢げにしながら次の説明を始める。
「この世界はね、イグドラシルって言う大きな大木に支えられた世界なの。人間が住むミドガルズ、神々の世界のアースガルズ、死者の国のヘルヘイムに別れてるわ」
「世界樹ねぇ・・・」
「そう…。それで今から行くのが、ルーンミッドガッツにある首都プロンテラよ」
胸を張りながら、説明を終えたリノンを放置し、ボクは今までの情報を纏めた。
ここが、ボクの知っている世界ではなく、異世界である事。
世界樹という、北欧神話?に近い世界である事。
プロンテラに行って、なにかをするらしいって事。
この世界に来たのは偶然ではなく、必然だったという事。
そして…、何より重要なのが……
くぅうううううう
お腹がすいたって事。
「リノン…。お腹…すいた」
涙目一杯で、右斜め上にフヨフヨと浮いているリノンを見る。
途端に顔を赤くして頭から煙を出したリノンは、
「あ、あそこにある城壁外屋台で食べればいいでしょ!! コレはこの世界の通貨でZって言うの、大切に使ってよね!?」
と言って、ボクの手に金貨を置いてそっぽを向いちゃった。
なんで臍を曲げるかなぁ~…。
「おじさ~ん、なんかおいしいの!!」
そう言ってボクはその屋台に入る。
出てきたのは、40台くらい?の金髪ダンディーなオジサマ。
「今日はね、フェイヨン産の良いの入ってるからね!!」
そう言ってお待ち!!と出されたのは、白い皿一杯に盛られた円柱状のお肉炒め。
コリコリしてて、それでいてジューシー。
うん、鶏肉の軟骨に似てるかも?
他に入っているカリカリした硬い物も香ばしくてグット!
うん、うまぁああああい!!
その料理を完食した後、やっと機嫌が直ったのか戻ってきた。
「花音…それ、初めてでよく食べれたわね」
うん?おいしいよ?
そう思って、リノンの顔を見るボク
リノンはボクの心が読めたのか、深くはぁ~…と溜息を吐き、地獄へと叩き落した。
「それ…サルの尻尾とサソリの尾の炒め物よ……」
あまりの衝撃に、慌てふためいて吐き戻そうとする。
しかし、その行動は不意に止められた。
「お嬢ちゃん、食べ物は粗末にしちゃいけねーぜ」
ダンディーなオジサマに。
目が笑ってませんでした。すみませんー。
結局、料金の644zを払ってそそくさと退散したボクたちは、当初の予定通りプロンテラの城壁内へと足を進めた。
城壁に入るまで再度、この世界の事をお勉強。
この世界には冒険者と呼ばれる魔物退治やトレジャーハンターなどを主にしている人と、街中で暮らす人に分かれてるらしい。
冒険者は、それぞれの武器や特性に合わせたギルドに所属して、そこで依頼などを請け負うんだって。
冒険者が所属するギルドは全部で6個。
剣士の集まるギルド【無限の剣盾】
弓士の集まるギルド【彗眼の狩人】
盗賊の集まるギルド【闇の狩手】
魔法使い(マジシャン)の集まるギルド【魔法の猫宿】
修道士の集まるギルド【プロンテラ大聖堂】
商人の集まるギルド【幾万の金冠】
があるらしい。
で、この上に上位職っていうのもあるらしんだけど…。
「これ以上話したら、あなたがついていけないわね」
とリノンが言っていたのです。
ああ、頭が熱いわ……。
め、眩暈が。
「前見なさいよね!!ボーっとしない!!」
そんな声で、ボクは意識を取り戻し、前をみる。
城壁の入り口は人が多く、数多くの冒険者や商人のキャラバンが出入りしていた。
「で、何処行くんだっけ?」
「だから~。この世界には職っていうのがあってね。冒険者は自分にあった職について戦うのよ。それを調べにいくの!!」
そうでしたー。
「いたいよー!? 頼むから首筋を蹴らないで!!」
少しだけボケてみたボクに、容赦なく蹴りをしてくるリノンを連れて、ボクはプロンテラに入っていった。