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どこかの異世界で

しろぜめ

作者: 浮月重月
掲載日:2026/07/27

ある意味、伝説となった攻城戦がある。

【白濁の攻城戦】

ブランカ要塞という小規模の砦に、一万もの大軍が敗北した戦いだ。



攻城戦は一般に、守る側の方が有利とされている。

砦や城を落とすためには、兵力にして最低三倍から五倍、

必勝を期すならばさらに大戦力を集めねばならない、と言われる。

この要塞へと攻め込んだ将軍も、それは十分に理解しており、

要塞の兵力約五百名に対し、一万の大軍で事に当たった。


攻城塔も投石器も最新型を複数準備し、優秀な魔術師も複数揃えた。


あまり派手に攻撃して要塞を破壊してもまずいのだが、

要塞後ろには深い谷が広がっており、要塞の奥にある橋を通らねば、

相当遠回りしなければ隣国へは進めない。

どうしても落とす必要があった。



少し気になる報告が本陣にいる将軍の元へ届く。

ある獣使いが、ブランカ要塞防衛に協力するらしい、と。


特異な才能を持つ相手は、警戒に値する。

英雄と呼ばれる人物が、死に体だった弱兵を奮い立たせることもある。

たった一人の大魔術師によって、有利不利が逆転した例も数多い。

暗殺者が腕を振るい、指揮系統が機能しなくなった話も聞く。

用心するには越したことはない。ないのだが…


獣使いである。

魔獣使い、というのなら侮れないだろう。

ベヒモスやヒュドラなど操られれば、こちらの被害は計り知れん。

しかし、例えばクマなどが襲ってこようが対処は難しくもない。

助っ人として役に立つのだろうか?


そう思っていると、要塞側に動きがあった。

拡声の魔術を使ってこちらに問いかけてくる。


「軍を引かれよ!そしてもう戻られるな!

 さすれば我々も追わぬ!貴公らも敗北を知ることなし!」


怒りよりも呆れが来た。挑発しているのか?

たかだか五百でどうするというのだ。

こちらも拡声の魔術で返答する。


「引くことは出来ぬ!無駄死にしたくなくば直ちに門を開けよ!

 降伏すれば、捕虜として丁重に扱う事を約束する!」


さて、どう出る?

興味を持った将軍は、留まって相手の出方を待つ。


要塞から、何かが噴き上がってきた。白っぽい何かだ。

それはどんどん膨れ上がり、大軍の上空に留まっている。

鳥である。無数の小さな白い鳥である。

そして。


空から白い雨のようなものが大量に降ってきた。

鳥の糞だ。途切れない。後から後から落ちてくる。猛烈に臭い。

矢でも、魔術で落とそうとしても、射程圏外で届かない。

一万の大軍は、あっという間に白濁した。


なんて嫌がらせだ。

将軍を含めた一万人は、何とも言えない不愉快さを感じた。

もうすっきりとしたのか、鳥達は要塞へと戻っていく。


癇癪を起こしたりはしないが、将軍は攻め込む意思を固める。

攻城塔を前に進ませようと指示を出したのだが。


第二陣がまたしても降ってきた。

しかも今度はひとつひとつがかなり大粒だ。

まともに目も開けられぬままどうにか仰ぎ見ると、

先程より大きな鳥が無数に飛んでいる。

やはり矢も魔法も届かない。


もう許さん。奴らは降伏しようが詫びようが全員処刑する。

腹に据えかねた将軍、全軍に指示を出そうとした。


そこに第三陣。

今度の鳥はたった一羽だが、空を覆うような巨大な鳥だった。

とてつもなく巨大な白い塊が落ちてきて、攻城塔を直撃した。

次々破壊される攻城塔。投石器も使い物にならない。

その破片は兵達へと降り注ぎ、辺りは白い地獄へ。


兵の七割以上重軽傷者を出して、軍は撤退を余儀なくされた。

将軍は「鳥の糞に敗北した男」として、歴史に名を残した。


この一帯は長い間悪臭で人が寄り付かなかったが、

半年後、優秀な肥料の産地として世に広まっている。

学生時代、同級生が鳥の爆撃を受けましてね…思い出したのでこれを書いてみました。

いっそ四部隊で、バーティ隊、イーグル隊、アルバトロス隊、コンドル隊とかでも良かったか。

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