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戻ってきた日々の輪郭

作者: ごはん
掲載日:2026/06/04

気づけば、あの頃の時間は遠くに置き去りにされていた。


朝が来ても、体は動かず、心だけが遅れてついてくるような日々。

何かを失ったというより、世界との距離の取り方が分からなくなっていた。


それでも、完全にひとりだったわけではない。


画面の向こうから届く「元気?」という短い言葉。

返せない日があっても、責めずに待ってくれる人がいた。

そのやりとりだけが、外の世界と自分をつなぐ細い糸だった。


季節が変わる頃、少しずつ空気が変わった。

新しい職場は、思っていたより静かで、思っていたより優しかった。


「最初は覚えること多いから、無理しなくていいですよ」

その一言に、肩の奥に入っていた力が抜ける。


できるかどうかではなく、ここにいていいかどうか。

その不安が少しずつ薄れていく。


休みの日には、久しぶりに友人と会うようになった。

以前と同じように笑っているはずなのに、どこか違う。


当たり前だった時間が、当たり前ではなくなっていたからだ。


「元気になってきたね」

何気ないその言葉に、胸の奥が静かに揺れた。


戻ってきたのは、過去そのものではない。

でも、それでもいいと思えた。


失った時間があったからこそ、

誰かと過ごす何気ない日常が、こんなにも温かい。


帰り道、夜風の中でふと思う。


あの頃の自分も、確かにここへ続いていたのだと。

遠回りに見えた時間も、今の自分へとつながっていたのだと。


日常は特別な奇跡ではない。

それでも、確かに戻ってきたものだった。

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