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私の同族は死ぬ事を運命付けられている。

掲載日:2026/04/06

 私の同族の多くは、生まれた時から自己の内面に時限爆弾がついている。


 要らない祝福と、呪いのハーフ。

 私達は最初から壊れている。


 内面の痛みを増幅する装置が最初から付いているのだ、そしてある時気付いてしまう。


 自分はこの世界にとって異物である事に。

 私達は他の人と同じように笑うのに。


 だが内面は泣き続けるのだ、他との差に。


 才能は私達の擬態の邪魔をする。祝福すら私達を呪うのだ。

 私達は嫌われる為に、私達は孤立する為に設計されている。



 私の場合は、大体何でも出来る祝福を得た。

 他者の共感を阻み、差別と嫉妬と妬みを宿命付けられた。


 私の場合は、高度な倫理観という呪いを得た。

 ありとあらゆる他者を傷付ける行為は、心に痛みを走らせ続ける。


 要らない。普通に過ごしたいだけだ。皆の輪に入ってただ楽しく居られたら…。

 何度も祝福も呪いも外そうと苦心する。


 自分の頭を壁や柱に打ち付ける。首を絞める。ダメだ…壊れてくれない。外れてくれない。

 私達の時限爆弾はただただ時を刻む、いつ爆発するか分からない。だが途中で気付くのだ。猶予はほとんど無いと。


 私は暴力も暴言も下品な言葉も、普段内在する無自覚の差別や無自覚な悪意にすら反応し続ける。


 いつしか決壊が始まる。

 追い詰められ続けた。精神が。自己と他者から傷付けられる身体が。もう耐えられないと悲鳴を上げる。

 初めて本気の暴力を自分を守る為に振るった。他人を傷付けてしまった…。誰も裁いてすらくれない…。


 私はもう二度と他人と関わる気が無くなっていく。また傷付けられるのが、また傷付けるのが怖い。自分は悪魔か何かだ。

 何故人を傷付けた時笑ったのだ。それは安堵か悪意かすら区別はつかない。自分でも分からないから。


 社会も家族も先生も。私が他者と関わらないのを許さない。許してはくれない。

 何故なら…私は怠け者にしか見えないからだ。

 出来る才能があり、今までやってきたのだから。


 努力が足りないと叱られる。皆が当たり前に出来る事すら出来ないのは何故だ。ただ学校に行くだけが何故と。

 親の脱力感と涙が私を追い詰める。どうして生まれてきてしまったのだと、私は死に最後の希望を見出すのだ。


 だから私は目標を設定する。自分の決めた地点まで行ったら死のうと。それまでの我慢だ。

 もう良いのだ。私の才能も祝福も努力も、環境を変える程の力は無い。もう努力すら出来ないのだから、私は要らないのだ。他人を不快にするだけである。


 社会に異物として残り迫害され続けるか。それとも迷惑を掛け続けるしかない。


 私にとってのゴールは兄の大学進学だった。

 それまで我慢しなきゃ。勉強の邪魔はしたく無い。他人の邪魔など私なんかがしていい筈は無い。


 私は友人も家族も先生も好きだ。だが、皆は本当の私を好いてはくれない。理解してはくれない。

 理解させてはいけない。彼等を苦しめるだけだから。


 共感者が生まれたとしても関係ない。これは死へのレールなのだ。結局私達につけられた時限爆弾の時間が多少変わるに過ぎない。



 …やっと死ねる。もう苦しまなくて良いのだ…。達成感と共に首を吊る。

 私は幸せだった…だってもう生きなくて良いのだ…。涙が頬を伝う。


 首を吊ったまま目が醒める。失敗した。私は努力を怠ったのか…。首から紐を外す。


 次の瞬間、恐怖が身体を蝕む。足先から脳まで一気に危険信号を出す。息を吸っても吸っても身体は動かない。麻痺している。


 …私は気付いた。この身体は…生きようとしている。

 裏切り者め…。裏切り者め…!

 私の精神と才能と身体は喧嘩を始める。


 貴様の所為だ、邪魔をするな!と互いに傷付けあう。


 私は生き残ってしまった。

 身体に同情する。才能に同情する。精神に同情する。私の思考は…誰のものなのだ。分離していく。


 精神すら分離していく。自分は誰だ。

 何が本当で、何が嘘なのだ。探しても分からない。そして人が死ぬニュースが私を更に追い詰める。

 同情と羨ましさを込めて彼を、彼女を見る。


 そして聞こえるのだ。"迷惑な奴だ。死ぬなら邪魔にならない所で死ねよ。"


 別に当たり前の事だ。迷惑を掛けた。他人を不快にしたのだから。


 だが、それすら私には耐えられない。他人の死に無自覚だ。無責任だ。何故?と理解しようともしない。

 だが話しても同じだ。精々悲しみの数が1つ増えるだけ。


 無駄な祝福だな。無駄な呪いだな。

 全くそう思う。


 

 何も変えられない。せめてまともに生きるフリだけする。死ねなかったのだ。死ぬのが怖いのだ。


 足取りは覚束ない。未来など無い。社会に居場所なんか無い。知っている。そんな事は自殺を目指す前から。


 それは普遍性を知ってしまうから。この国社会は我々を拒む為に出来ている。その方が都合の良いのだろう。

 人の精神は、我々を受け入れない。当たり前だ、理解出来ないのだから。


 きっと皆には私が私達が人に見えているのだろう。仲間として受け入れてくれさえもしないのに勝手な奴等だ。


 何も知ろうとしないのに、誰も助けようとしないのに、何が正しいか考えもしないのに。

 何故あんな奴等は生きて、我々は死ぬのだ。


 私は、私達は同族を…苦しむ同族を助けようとする。だが壊れた者同士が傷を舐め合っても変わらない。我々は…失敗作なのだから。


 各々の祝福と呪いを奇跡的に転化した者が生き残っているのが見える。羨ましい…。でも時限爆弾は外れはしない。


 我々は死ぬ為に生まれてきたのだ。死のレールを爆走する爆発する列車なのだ。速いか遅いかの違いしかない。



 頑張らなきゃ…だって…生きなきゃ…。私は助けられない同族と助けなきゃいけない同族に背を向けて進む。


 才能は残酷だ。小中と学校に半分以上行けなかった私。そんな私が他者を圧倒する。

 くだらない才能だ…。努力は知らない。努力なんかした事が無い。


 瞳から光は消える、増え続ける人格、存在しない幸福。

 誰か…誰か殺してくれ…お願いだ…。僕を、私を、俺を、助けてくれ…。内面だけは叫び続ける。


 他人の迷惑になってはいけない。

 大学の入学枠の1つを他人から奪う。成績優秀者として表彰される。大学内に存在する欠陥を直す様に求めて、改善されていく。


 無意味な人生だな…。別に私がやらなくても誰かがやるのだ。他人の成果や幸福を奪い、足跡だけ残す日々。


 大学在学中に身体の欠陥が見つかる。生まれた時からあったのだろう欠陥が。

 それは私に激痛を与え続けた。眠る事すら出来ない。痛みを抑える薬も効かない。脳に影響を与える鎮痛薬は僕達をかき乱す毒だ。松葉杖で歩く日々。


 もはや安眠すら奪われ、泣きながら日々を過ごす。


 大学院にさえ行けばきっと分かって貰えると信じて進む。居ない…居なかった…僕は一生異物か…。


 同族を踏み付け、他人を不幸にして、同族の骨に背を向けて…それでこれか。楽しかったか?


 眩しい…天才と秀才が凡人が眩しい…。努力する姿が美しい…。凡人?関係ないのだ、努力は美しい。

 尊いものだ、私には僕には俺には無いものだ。


 溜め息が出る。苦手分野の処理が上手くいかない。普遍性が通用しない事が苦手だ。単純作業は苦手だ。

 才能はそれらに興味がない。飽きてしまうのだ。


 才能も努力も使い物にならない。だから素養だけで無理矢理押し通す。

 大学院でも優秀者は変わらずだ。絶望も変わらずだ。絶望の量は変わらない。最初から知っているからだ。



 国家試験は受からなかった。

 僕は笑う。こんなものか。所詮私達の祝福などこんなものか。


 擬態する。国家試験に受かろうとするフリをして、バイトをする。

 合理性の神は私にそっぽを向く。努力が出来ないものにその神は微笑まない。


 熱い…身体が熱い…。吐き気が酷い。行きたくない。生きたくない。試験を受けるフリが出来なくなる。バイトをする事が出来なくなる。


 僕は…私は…俺は…天才とも秀才とも凡人とも違うのだ。枠に入れない。

 精神が死ぬ…死に続ける。分離と統合を繰り返しながら。


 残されたのは罪。祝福。呪い。壊れた身体と精神。


 笑うしか無い。擬態出来ない。歩けない。何も手がつかない。救いは無い。



 どうして…どうしてなんだ…。僕はいつでも復帰をして良いと優しく言ってくれる職場の人に内心から感謝しているのに。


 僕は…弱者だ。俺は…才能だけの失格者だ。私は…私は…。


 諦める。もう諦める。生活保護を受けたいが。それは環境が許さない。親に迷惑が掛かる…皆に迷惑が掛かる…。



 私達を救う制度は無い。当たり前だ。私達は社会に内包されない。規定されない。


 くだらない…精神科に行っても意味は無いのに勧めて来やがる…。取れるはずのない生活保護を勧めて来やがる。

 うんざりする。無能しか居ないこの社会に。その優しさに報えない自分自身に。



 だから私は小説を書き始めたのだ。もう失う外面も自尊心も無いのだから。私は堕ちてしまったのだから。


 そう…私は…。私が何者かなのか評価すら気にしない。ただ書くだけだ。自分に見える世界を。

 人々に、同族に見せるのだ。苦しみと正しい姿を。僕が生きている姿を見せるのだ。正しい死に方を見せるのだ。


 私の下手な文章と、無意味な人生を賭けて、この世界に足跡を一つずつ残していくのだ。



 私は救われない。この身体を焼く罪は消えない。

 でも良いのだ。もし誰かが楽しめたのなら、誰かが癒やされたのなら、何か苦しみを減らせたのなら。私の小説は満足だ。


 私は擬態者、私は模倣者、私は失敗作。

 私の同族を、どうか救ってくれる社会を作っていただけませんか?もし一人でも助かったなら、私は幸福です。

 世界も社会も残酷だ。

 でも、それでも私は好きなのだ。


 変わってくれる。変えられるものだと信じている。

 だって普遍性は私に語り掛けるから。


 きっと道徳を突き詰めれば、それは皆の共通言語になる。だがその道徳を突き詰めきれなければ、また新しい暴力が渦を巻く。

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