番外編:休憩室での雑談 ~南米を旅しよう!~
(本編の収録の休憩中、スターゲートから退場した4人は休憩室に集まっている。テーブルの上には、コーヒー、紅茶、そしてなぜかドイツビールとベネズエラ産のラム酒が並んでいる)
(緊張感のあった本編とは打って変わって、4人の表情はリラックスしている)
ルーズベルト:(大きく伸びをしながら)「ふぅ、いい議論だ!しかし、疲れたな」
ビスマルク:(ビールを手に取りながら)「君が疲れるとは珍しい。いつも元気だけが取り柄だと思っていたが」
ルーズベルト:「おい、それは褒め言葉か皮肉か」
ビスマルク:「両方だ」
グロティウス:(紅茶を淹れながら、穏やかに)「まあまあ、お二人とも。休憩ですから、少しくつろぎましょう」
ボリバル:(窓の外を見ながら、コーヒーカップを手に)「それにしても、久しぶりに祖国のことを深く考えた。複雑な気持ちだが……悪くない疲労感だ」
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ルーズベルト:(椅子に深く腰掛けながら)「しかしボリバル、君の話を聞いていて思い出したんだが、私は南米に行ったことがあるんだ」
ボリバル:(振り返って)「ほう、そうなのか」
ルーズベルト:「ああ。1913年、大統領を退任した後だがね。アマゾン川の支流を探検したんだ。『疑惑の川(Rio da Dúvida)』という、まだ地図にも載っていない川をな」
グロティウス:「探検ですか。大統領経験者が、そのような危険な……」
ルーズベルト:「危険?それがいいんだ!マラリアにかかり、足を怪我し、死にかけたが、最高の冒険だった!」
ビスマルク:(呆れたように)「君は本当に、じっとしていられない男だな」
ルーズベルト:「人生は冒険だ、ビスマルク。机の前に座っているだけでは、何も見えない」
ビスマルク:「私は机の前でヨーロッパの地図を動かしていたがね」
ボリバル:(少し笑って)「二人とも、やり方は違うが、スケールの大きさは似ているな」
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■アマゾン探検
グロティウス:「ルーズベルトさん、アマゾンの探検について、もう少し聞かせていただけますか。私は書斎の人間ですので、そのような冒険には縁がありませんでした」
ルーズベルト:(目を輝かせて)「ああ、喜んで!アマゾンは……言葉では表せない場所だ」
(身を乗り出して)
ルーズベルト:「まず、そのスケールに圧倒される。川幅が何キロもある。対岸が見えないんだ。そして、密林。どこまでも続く緑。鳥の声、猿の叫び、得体の知れない生き物の気配……」
ボリバル:「私も独立戦争の時、オリノコ川流域を進軍したことがある。あの密林の中を、軍隊を率いて進むのは……地獄だった」
ルーズベルト:「軍隊を率いて?それは私の探検より遥かに大変だったろう」
ボリバル:「兵士たちは飢え、病気になり、多くが命を落とした。だが、自由のためには進むしかなかった」
ビスマルク:「……戦争の話は、収録で十分だろう。今は、もっと気楽な話をしないか」
グロティウス:「そうですね。観光地としてのアマゾンは、どうなのでしょう」
ルーズベルト:「観光か!今の時代なら、エコツーリズムというやつがあるらしいな。私の探検とは違って、ガイド付きで安全に楽しめるようだ」
ルーズベルト:「ピンクイルカを見たり、ピラニア釣りをしたり、先住民の村を訪問したり……。私の時代では考えられなかったことだ」
ビスマルク:「ピラニア釣り?あの人食い魚をか」
ルーズベルト:「ああ!私も釣ったぞ。小さいが獰猛な魚だ。指を噛まれそうになった」
グロティウス:「それは……私には少し刺激が強すぎますね」
ボリバル:(笑って)「グロティウスさんには、もっと穏やかな場所がいいかもしれない」
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■ マチュピチュ
グロティウス:「そういえば、南米にはマチュピチュという遺跡があると聞きました。インカ帝国の……」
ボリバル:「ああ、マチュピチュか。私の時代には、まだ『発見』されていなかった。ジャングルに埋もれていたんだ」
ルーズベルト:「1911年にハイラム・ビンガムという探検家が『発見』したらしいな。私のアマゾン探検の少し前だ」
ビスマルク:「『発見』というのは、西洋人の傲慢な言い方だな。地元の人々は、ずっと知っていたのだろう」
ボリバル:(少し驚いて)「ビスマルクさん、意外と繊細なことを言うな」
ビスマルク:「私は現実主義者だ。事実を事実として認めるだけだ」
グロティウス:「マチュピチュは、標高2400メートルの山の上にあるそうですね。どうやってあのような場所に、あれほどの都市を築いたのでしょう」
ボリバル:「インカの人々は、驚異的な技術を持っていた。石を精密に加工し、モルタルなしで積み上げた。地震にも耐える建築だ」
ルーズベルト:「私もぜひ行ってみたかった!山の上の古代都市、雲海に浮かぶ石造りの建物……。想像するだけで血が騒ぐ」
ビスマルク:「君は何にでも血が騒ぐな」
ルーズベルト:「それが人生を楽しむ秘訣だ、ビスマルク」
グロティウス:「私は、インカの法制度に興味があります。彼らには独自の社会秩序があったと聞きます」
ボリバル:「インカ帝国には、『アイユ』と呼ばれる共同体を基盤とした社会システムがあった。土地は共有され、労働は分担された。ある意味、非常に組織化された社会だった」
ビスマルク:「ほう、それは興味深い。効率的な統治システムだったわけか」
ボリバル:「ただ、スペイン人が来て、すべてが破壊された。文化も、言語も、人々も……」
(少し暗い表情になる)
ルーズベルト:「……おい、また重い話になっているぞ」
ボリバル:(苦笑して)「すまない、つい。観光地の話だったな」
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■ イグアスの滝
ルーズベルト:「よし、もっと明るい話をしよう!イグアスの滝を知っているか」
グロティウス:「名前は聞いたことがあります。非常に大きな滝だとか」
ルーズベルト:「大きいなんてものじゃない!ナイアガラの滝より遥かに壮大だ。幅は約2.7キロ、落差は80メートル以上。滝の数は275もある」
ビスマルク:「275の滝?それは……想像を絶するな」
ルーズベルト:「『悪魔の喉笛』と呼ばれる場所があってな、そこでは水が轟音と共に奈落の底へ落ちていく。虹が何重にもかかり、水しぶきが空を覆う……」
グロティウス:「まるで詩のような描写ですね」
ルーズベルト:「自然は最高の詩人だ、グロティウスさん。人間の言葉では、その美しさの十分の一も表現できない」
ボリバル:「イグアスの滝は、ブラジルとアルゼンチンの国境にある。両国から見ることができるが、それぞれ違う魅力があるらしい」
ビスマルク:「国境に位置する観光地か。両国の関係が悪化すれば、面倒なことになりそうだな」
ルーズベルト:「ビスマルク、君は観光地の話でも地政学を考えるのか」
ビスマルク:「習性だ。許してくれ」
ボリバル:(笑って)「いや、実際に南米の国境紛争は多いからな。ビスマルクさんの懸念は的外れではない」
グロティウス:「しかし、自然の美しさには国境がないですね。滝は、どちらの国のものでもなく、地球のものです」
ルーズベルト:「いいことを言う!その通りだ、グロティウスさん」
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■ ガラパゴス諸島
グロティウス:「ルーズベルトさんは自然保護にも力を入れていらっしゃったとか。ガラパゴス諸島はご存知ですか」
ルーズベルト:(目を輝かせて)「ガラパゴス!ダーウィンが進化論の着想を得た場所だ!もちろん知っている」
ルーズベルト:「あそこには、世界でそこにしかいない生き物がたくさんいる。ゾウガメ、イグアナ、青い足のカツオドリ……。まさに自然の実験室だ」
ビスマルク:「ダーウィンか。彼の進化論は、社会にも応用されて、いろいろと物議を醸したな」
ボリバル:「社会ダーウィニズムというやつか。強者が生き残り、弱者が淘汰される……」
ルーズベルト:「私はダーウィンの自然科学としての理論は尊重するが、それを人間社会にそのまま適用することには反対だ。人間には、弱者を助ける義務がある」
ビスマルク:「ほう、意外と人道的なことを言うな」
ルーズベルト:「私を何だと思っているんだ、ビスマルク」
ビスマルク:「棍棒を振り回す野蛮人かと」
ルーズベルト:「……まあ、否定はしないが」
(4人が笑う)
グロティウス:「ガラパゴス諸島は、エクアドルに属しているのですね」
ボリバル:「そうだ。エクアドルも、私が解放した国の一つだ」
ルーズベルト:「君が解放した国は多いな。ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、そしてボリビア……」
ボリバル:「ボリビアは、私の名前から国名がつけられた。光栄なことだが、重い責任も感じる」
ビスマルク:「自分の名前が国名になるとは、大したものだな。私にはそのような栄誉はない」
ルーズベルト:「ビスマルク、君の名前はビスマルク海峡に残っているだろう」
ビスマルク:「……あれはドイツの植民地時代の名残だ。あまり誇らしいものではない」
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■ ウユニ塩湖
グロティウス:「ボリビアといえば、ウユニ塩湖という場所が有名だと聞きました」
ボリバル:「ウユニ塩湖か。私の時代には、そこまで有名ではなかったが、今では世界中から観光客が訪れるらしいな」
ルーズベルト:「知っているぞ!世界最大の塩の平原だ。雨季には水が薄く張って、空を映す巨大な鏡になるという」
グロティウス:「空を映す鏡……。それは幻想的ですね」
ルーズベルト:「『天空の鏡』と呼ばれているらしい。空と大地の境界が消え、まるで空の中を歩いているような感覚になるそうだ」
ビスマルク:(少し興味を持った様子で)「ふむ。それは……見てみたい気もするな」
ボリバル:「おや、ビスマルクさんも観光に興味があるのか」
ビスマルク:「私だって、美しいものを見たいと思うことはある。ただ、政治に忙殺されて、そのような余裕がなかっただけだ」
ルーズベルト:「それは残念だったな。私は大統領在任中も、できる限り自然の中で過ごすようにしていた」
ビスマルク:「君は大統領としての仕事をしていたのか?」
ルーズベルト:「もちろんだ!自然の中で考えると、頭がすっきりするんだ。いいアイデアが浮かぶ」
グロティウス:「私も、散歩をしながら法理論を考えることがありました。体を動かすと、思考も活性化されますね」
ボリバル:「私は馬に乗りながら考えることが多かった。アンデスの山々を越えながら、独立後の国家構想を練ったものだ」
ビスマルク:「私は……書斎で葉巻を吸いながら考えていた」
ルーズベルト:「それは不健康だぞ、ビスマルク」
ビスマルク:「放っておいてくれ」
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■ パタゴニア
ルーズベルト:「そうだ、パタゴニアの話をしよう!南米大陸の南端、チリとアルゼンチンにまたがる地域だ」
ボリバル:「パタゴニアか。私は行ったことがない。あの辺りは、私の活動範囲からは遠かった」
ルーズベルト:「氷河、フィヨルド、そびえ立つ山々……。世界で最も美しい風景の一つだと言われている」
グロティウス:「南極に近い場所ですね。非常に寒いのでは」
ルーズベルト:「そうだ。だが、その厳しさがまた魅力なんだ。ペリト・モレノ氷河は、今でも動いている『生きた氷河』だ。時折、巨大な氷の塊が崩落する様子は、圧巻だという」
ビスマルク:「氷河の崩落か。自然の力を思い知らされる光景だろうな」
ルーズベルト:「トレッキングも盛んだ。トーレス・デル・パイネ国立公園は、世界中のトレッカーの憧れの地だ」
ボリバル:「ルーズベルトさん、本当に南米のことをよく知っているな」
ルーズベルト:「冒険家として、世界中の自然に興味があるんだ。本を読み、探検家の話を聞き、可能な限り自分の目で見る。それが私の生き方だ」
グロティウス:「私も、もっと旅をすればよかったと思うことがあります。本からの知識だけでは、限界がありますね」
ビスマルク:「私は若い頃、少し旅をした。イタリア、フランス、イギリス……。だが、政治の世界に入ってからは、ほとんど旅行などしていない」
ボリバル:「私は……旅というより、常に移動していた。戦争のために」
ルーズベルト:「それは旅とは言えないな。戦争が終わった後、ゆっくり旅をする時間はなかったのか」
ボリバル:(苦笑して)「戦争が終わった時には、私の体はボロボロだった。そして、政治的な混乱の中で、休む暇もなく……」
(少し寂しげに)
ボリバル:「私が死んだのは47歳だ。もっと長く生きていれば、平和な時代に祖国を旅することができたかもしれない」
ルーズベルト:(静かに)「ボリバル……」
ボリバル:「いや、すまない。暗い話はやめよう。今は、楽しい話をしたいんだ」
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■ ベネズエラの観光地
グロティウス:「では、ボリバルさんの故郷、ベネズエラの観光地について教えていただけますか」
ボリバル:(表情を明るくして)「ベネズエラか。私の祖国には、美しい場所がたくさんある」
ボリバル:「まず、エンジェルフォールだ。世界最大の落差を持つ滝で、落差は約980メートル。あまりに高いので、水が下に届く前に霧になって消えてしまう」
ルーズベルト:「980メートル!ナイアガラが約50メートルだから、その20倍近いのか」
ボリバル:「そうだ。ギアナ高地のテーブルマウンテンの上から、水が直接落ちてくる。その光景は、言葉では表せない」
グロティウス:「テーブルマウンテン……。平らな頂上を持つ山ですね」
ボリバル:「テプイと呼ばれている。まるで別世界のような風景だ。コナン・ドイルの『失われた世界』は、このテプイをモデルにしたと言われている」
ビスマルク:「『失われた世界』?恐竜が生き残っているという小説か」
ボリバル:「そうだ。実際に恐竜はいないが、テプイの上には、そこにしかいない動植物が多数生息している。孤立した環境で、独自の進化を遂げたんだ」
ルーズベルト:「ガラパゴスと同じ原理だな!私は絶対に行ってみたい」
ボリバル:「そしてカラカス、私の生まれた街だ。今は……政治的に困難な状況だが、かつては美しい街だった。カリブ海に面し、年中温暖で、人々は陽気で音楽を愛していた」
グロティウス:「いつか、平和が戻ることを願っています」
ボリバル:「ありがとう、グロティウスさん。私もそう願っている」
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ビスマルク:(グラスを傾けながら)「しかし、こうして話を聞いていると、旅というものの価値を再認識させられるな」
ルーズベルト:「おや、ビスマルクが旅の価値を認めるとは」
ビスマルク:「私は政治の世界しか知らなかった。地図上の国境、勢力図、同盟関係……。だが、実際にその土地に行き、風景を見、人々と会うことで、見えてくるものがあるのだろう」
グロティウス:「旅は、視野を広げますね。自分の常識が、必ずしも普遍的ではないことを教えてくれます」
ボリバル:「私は南米各地を旅した。いや、戦った。だが、その過程で、各地の人々の違いを知った。ベネズエラ人、コロンビア人、ペルー人……。同じスペイン語を話しても、文化や気質は微妙に異なる」
ボリバル:「その違いを理解せずに、一つの国にまとめようとしたのが、私の失敗だったのかもしれない」
ルーズベルト:「旅は謙虚さを教えてくれる。自然の前では、人間がいかに小さいかを思い知らされる。アマゾンの密林、アンデスの山々、パタゴニアの氷河……。それらを前にすると、人間の争いがいかに些細なことかが分かる」
ビスマルク:「……些細、か。私は一生を国家間の争いに費やしたが」
ルーズベルト:「いや、君の仕事を否定しているわけではない。国家の安全は重要だ。だが、時には一歩引いて、大きな視野で物事を見ることも必要だということだ」
グロティウス:「旅と法は、似ているところがあるかもしれません。どちらも、異なるものの間をつなぐ役割を果たす」
ボリバル:「どういう意味ですか」
グロティウス:「旅は、異なる文化をつなぐ。人々が互いを知り、理解する機会を提供する。法も同様です。異なる利害を持つ者たちの間を調停し、秩序をもたらす」
ルーズベルト:「なるほど。そう考えると、旅も法も、平和のための道具なのかもしれないな」
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(本番開始を告げるスタッフの声が聞こえる)
ビスマルク:「もうこんな時間か。楽しい時間は早く過ぎるものだな」
ルーズベルト:「全くだ。しかし、いい話ができた」
ボリバル:「本編では激しく議論したが、こうして穏やかに話すのも悪くない」
グロティウス:「南米の話を聞いて、いつか行ってみたいと思いました。マチュピチュ、イグアスの滝、ウユニ塩湖……」
ルーズベルト:「行けばいい!人生は一度きりだ。やりたいことは、やるべきだ」
ビスマルク:「私は……生まれ変わったら、旅をしてみたいかもしれんな。政治のしがらみなく、純粋に世界を見てみたい」
ボリバル:「ビスマルクさん、意外と詩人だな」
ビスマルク:「たまにはな」
(4人が立ち上がり、それぞれ握手を交わす)
ルーズベルト:「諸君、また会おう。次は、実際に南米を一緒に旅するというのはどうだ」
グロティウス:「それは素敵ですね。異なる時代の人間が、同じ景色を見る。面白い体験になりそうです」
ボリバル:「私が案内しよう。祖国の美しさを、ぜひ見てほしい」
ビスマルク:「私も参加しよう。ただし、政治の話は禁止だ」
ルーズベルト:「約束しよう!……いや、少しくらいはいいだろう」
ビスマルク:「君は本当に……」
(4人が笑いながら、控え室を後にする)
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(控え室のドアが閉まり、静寂が戻る。テーブルの上には、空になったコーヒーカップ、紅茶のポット、ビールグラス、そしてラム酒のボトルが残されている)
(窓の外では、夜空に星が輝いている。同じ星が、かつてボリバルがアンデスを越えた夜にも、ルーズベルトがアマゾンを探検した夜にも、輝いていたのだろう)
(時代は違えど、人間が美しいものに心を動かされ、未知の世界に憧れる気持ちは、変わらない)
(それこそが、旅の本質なのかもしれない)




