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ラウンド2:人道介入は正当化できるか

(照明が切り替わり、スタジオの雰囲気が変わる。壁面に投影されていた法廷のイメージが、難民キャンプや飢餓に苦しむ人々の映像に切り替わる)


(あすかがクロノスを操作すると、空中に「ROUND 2」の文字が浮かび上がる)


あすか:「ラウンド2、『人道介入は正当化できるか』。ラウンド1では、法的正当性について議論しました。しかし、この問題にはもう一つの重要な視点があります」


(クロノスを操作し、統計データを空中に表示)


あすか:「それは『人道』という視点です。まず、ベネズエラの現状を確認しましょう」


(ホログラムに数字とグラフが浮かぶ。赤い数字が次々と点滅する)


あすか:「国外脱出者・難民——700万人以上。これは国民の約25%、4人に1人が祖国を捨てたことになります」


(グラフが切り替わる)


あすか:「貧困率——90%以上の国民が貧困ライン以下で暮らしています。かつて南米有数の富裕国だったベネズエラが、です」


(映像が切り替わり、空っぽの棚が並ぶスーパーマーケット、閉鎖された病院の映像)


あすか:「ハイパーインフレは2018年に年率100万%を超えました。基本的な食料品、医薬品が手に入らない状況が続いています」


ボリバル:(映像を見つめながら、苦しげに目を閉じる)「……」


あすか:「さらに深刻なのは、政治弾圧の実態です」


(ホログラムに人権団体の報告書が表示される)


あすか:「国連人権高等弁務官事務所の報告によれば、政治犯への拷問、超法規的殺害、強制失踪が組織的に行われています。反政府デモの参加者が行方不明になり、遺体で発見されるケースも報告されています」


(映像が消え、あすかが正面を向く)


あすか:「このような人道危機に対して、外部からの介入は正当化されるのでしょうか。国際社会には、苦しむ人々を救う『責任』があるのでしょうか」


(4人を見渡す)


あすか:「ボリバルさん、これはあなたの祖国の現状です。解放者として、この状況をどうご覧になりますか」


---


ボリバル:(しばらく沈黙した後、ゆっくりと立ち上がる。その表情には深い苦悩が刻まれている)


ボリバル:「……私は、言葉を失っている」


(スタジオの世界地図に歩み寄り、ベネズエラの位置を見つめる)


ボリバル:「1783年、私はここカラカスで生まれた。裕福な家庭だった。だが、私の周りには奴隷がいた。植民地支配の下で苦しむ民衆がいた」


(振り返り、他の3人を見る)


ボリバル:「私がスペインと戦ったのは、まさにこのような状況から民衆を解放するためだった。飢え、弾圧、絶望……。200年前と何が変わったというのか」


ルーズベルト:「ボリバル……」


ボリバル:(声を震わせながら)「いや、変わっていないどころか、悪化している。私の時代、少なくとも人々は祖国にとどまって戦った。今は、700万人が逃げ出している。祖国を捨てて、逃げ出さなければならないほどの絶望なのだ」


(声が高まる)


ボリバル:「私は『解放者』と呼ばれた。だが今、私の祖国は新たな暴君の下で苦しんでいる。私が解放した国が、再び鎖につながれている。これは……これは私の失敗なのか」


グロティウス:(穏やかに)「ボリバルさん、200年の間に多くのことが起きました。それをすべてあなたの責任とするのは……」


ボリバル:(首を振って)「いや、グロティウスさん。私は死の床で予言した。『この国は不可避的に暴君の手に落ちるだろう』と。私には分かっていたのだ。南米の土壌には、独裁の種が根深く埋まっていることが」


(深く息をつき、少し落ち着きを取り戻す)


ボリバル:「だが、今は過去を嘆いている場合ではない。問題は、今苦しんでいる民衆をどう救うかだ」


あすか:「ボリバルさんは、外部からの介入についてはどうお考えですか」


ボリバル:(複雑な表情で)「それが、私の中で最も葛藤している点だ」


(席に戻りながら)


ボリバル:「正直に告白しよう。私自身、独立戦争で外国の支援を受けた。イギリスからの武器、資金。ハイチからの兵士と物資。純粋に自力だけで解放を成し遂げたわけではない」


ビスマルク:(皮肉に)「ほう、それは興味深い告白だな」


ボリバル:(ビスマルクを見て)「隠すつもりはない。事実だからだ。だが、重要なのは、その支援の『目的』と『方法』だった」


ボリバル:「イギリスは確かに我々を支援した。だが、彼らの目的はスペイン帝国を弱体化させることだった。我々の自由のためではなく、自国の利益のためだった」


ルーズベルト:「しかし、結果として君たちは独立を勝ち取った。動機が何であれ……」


ボリバル:「そうだ、ルーズベルト。結果として独立は達成された。だが、その後どうなったか。イギリスは我々の経済を支配した。独立したはずの国が、別の形で従属することになったのだ」


(全員を見渡して)


ボリバル:「だから私は問いたい。今回のアメリカの介入は、本当にベネズエラの民衆のためなのか。それとも、石油、地政学、反中国政策……そういった『別の目的』のためなのか」


---


ルーズベルト:(立ち上がり、情熱的に)「ボリバル、君の懸念は理解する。だが、動機を詮索している間に、人が死んでいくのだ!」


(スタジオを歩きながら)


ルーズベルト:「確かに、アメリカには利害がある。石油、地政学、中国への対抗……。否定はしない。だが、それが何だというのだ」


グロティウス:「動機は重要ではないと?」


ルーズベルト:「重要ではないとは言わない。だが、最も重要なのは『結果』だ。苦しむ人々が救われるかどうかだ」


(ボリバルの方を向いて)


ルーズベルト:「ボリバル、君は言った。イギリスの支援の目的は自国の利益だったと。だが、結果として君たちは独立を勝ち取った。それでいいではないか」


ボリバル:「しかし、その後の従属……」


ルーズベルト:「それは別の問題だ!まずは今の危機を解決することが先決だ。700万人の難民、飢える子供たち、拷問される政治犯……。彼らを『今』救うことが最優先ではないのか」


(クロノスの方を向いて)


ルーズベルト:「あすかさん、一つ映像を見せてほしい。ベネズエラから逃れた難民たちの証言を」


あすか:(クロノスを操作)「はい、国連難民高等弁務官事務所の記録映像を表示します」


(ホログラムに、疲れ果てた表情の人々が映し出される。泣きながら証言する母親、痩せ細った子供たち)


ルーズベルト:(映像を指さしながら)「見てくれ。この人たちの顔を。この子供たちの目を。彼らは何を待っているのだ」


ルーズベルト:「『法的手続き』か?『国際社会の合意』か?『主権免除の原則』か?——違う!彼らが待っているのは、『救い』だ!」


グロティウス:「しかし、ルーズベルトさん、感情に流されては……」


ルーズベルト:(声を荒げて)「感情ではない!これは数字の問題だ、グロティウスさん!」


(指を折りながら)


ルーズベルト:「700万人の難民。毎日増え続けている。彼らが通過するコロンビア、ブラジル、ペルー……周辺国も限界に達している」


ルーズベルト:「90%の貧困率。子供たちが栄養失調で死んでいる。病院には薬がない。医者は国外に逃げた」


ルーズベルト:「何千人もの政治犯。拷問、強制失踪、超法規的殺害。国連が『人道に対する罪の可能性がある』と報告している」


(グロティウスを見つめて)


ルーズベルト:「これでも『法的手続きを待て』と言うのか。これでも『国際社会の合意を得ろ』と言うのか」


ルーズベルト:「私に言わせれば、これは『人道に対する罪』そのものだ。そして、人道に対する罪を止めるために行動することは、義務だ!」


---


ビスマルク:(腕を組んだまま、冷ややかに)「ルーズベルト君、君の演説は実に感動的だ。涙が出そうだよ」


ルーズベルト:(睨みつけて)「皮肉か、ビスマルク」


ビスマルク:「皮肉ではない。本心だ。君の情熱は本物だろう。だが、情熱だけでは国は動かせない。ましてや、他国を『救う』ことなどできない」


(ゆっくりと立ち上がる)


ビスマルク:「君は言った。『結果が最も重要だ』と。よろしい。では、『結果』について話そう」


(スタジオを歩きながら、教授が講義をするような口調で)


ビスマルク:「2003年、イラク。サダム・フセインは確かに暴君だった。化学兵器で自国民を殺し、クウェートを侵略した。アメリカは彼を倒すために戦争を始めた。『イラクの人々を解放する』と言って」


ビスマルク:「結果はどうだった?」


ルーズベルト:「それは……」


ビスマルク:「私が言おう。内戦、宗派対立、そしてISIS(イスラム国)の台頭。サダムの下で死んだ人間より、『解放』後に死んだ人間の方が多い」


(指を立てて)


ビスマルク:「2011年、リビア。カダフィも暴君だった。反政府デモを武力で弾圧した。NATO は『人道的介入』として空爆を行い、彼を倒した。『リビアの人々を守る』と言って」


ビスマルク:「結果はどうだった?」


グロティウス:(静かに)「内戦状態が続いています」


ビスマルク:「その通り。今リビアには二つの政府がある。いや、政府と呼べるかどうかも怪しい。軍閥が跋扈し、奴隷市場が復活し、地中海を渡る難民の波が止まらない。『人道的介入』の結果がこれだ」


(ルーズベルトの方を向いて)


ビスマルク:「ルーズベルト君、君は『苦しむ人々を救う』と言う。美しい言葉だ。だが、歴史は教えている。『救おう』として介入した結果、もっと多くの人々が苦しむことになった例は、いくらでもあると」


ルーズベルト:「それは介入そのものが悪いのではない。やり方が悪かっただけだ」


ビスマルク:(皮肉な笑みを浮かべて)「ほう。では、今回は『やり方を変える』と?どう変えるのかね」


ルーズベルト:「それは……」


ビスマルク:「答えられないだろう。なぜなら、問題は『やり方』ではないからだ。問題は、外国の軍事力で他国の政治体制を変えようとすること自体にあるのだ」


(全員を見渡して)


ビスマルク:「国家というものは、外から作ることはできない。内から育つものだ。どれほど優れた制度を移植しても、その土地に根付かなければ意味がない」


ボリバル:(静かに)「それは……私も痛感していることだ」


ビスマルク:(ボリバルを見て)「君なら分かるだろう、ボリバル。君は南米を解放した。だが、その後どうなった?カウディーリョ(軍事独裁者)が次々と現れ、民主主義は根付かなかった。なぜだと思う」


ボリバル:「……民衆の準備ができていなかったからだ。教育、制度、文化……すべてが不足していた」


ビスマルク:「その通りだ。解放は、外から与えられるものではない。内から勝ち取るものだ。そして、その準備には時間がかかる。何世代もの時間が」


(席に戻りながら)


ビスマルク:「ベネズエラも同じだ。今、アメリカが大統領を排除したとして、何が変わる?次の独裁者が現れるだけだ。あるいは、もっと悪いことに、内戦が始まる」


ビスマルク:「君たちの『人道的介入』は、短期的には『善行』に見えるかもしれない。だが長期的には、より大きな混乱を招く。私はそう確信している」


---


あすか:「ビスマルクさんの指摘は重たいものがあります。ここで、グロティウスさんに法的な観点からの補足をお願いしたいと思います」


あすか:「2005年の国連サミットで採択された『保護する責任(Responsibility to Protect)』という概念についてです」


グロティウス:(立ち上がり、書物を手に)「ありがとうございます。これは非常に重要な概念ですので、詳しく説明させてください」


(スタジオを歩きながら)


グロティウス:「『保護する責任』、英語では Responsibility to Protect、略して R2P と呼ばれます。これは、国家が自国民を保護できない、あるいは保護する意思がない場合、国際社会が介入する責任を負うという考え方です」


ルーズベルト:「つまり、人道危機には介入が認められるということだな」


グロティウス:「一面ではそうです。しかし、重要な条件があります」


(指を立てて)


グロティウス:「R2P には3つの柱があります。第一の柱は、国家自身の保護責任。すべての国家は、自国民をジェノサイド、戦争犯罪、民族浄化、人道に対する罪から保護する責任を負います」


グロティウス:「第二の柱は、国際社会の支援責任。国家がその責任を果たせるよう、国際社会は支援する責任を負います。能力構築、予防外交、経済支援などです」


グロティウス:「そして第三の柱が、国際社会の対応責任。国家が明らかにその責任を果たせない場合、国際社会は集団的に対応する責任を負います」


ルーズベルト:「では、今回のケースは第三の柱に該当するのではないか」


グロティウス:「ここが重要なポイントです、ルーズベルトさん。第三の柱に基づく介入には、厳格な条件があります」


(書物のページをめくりながら)


グロティウス:「まず、介入は国連安全保障理事会の承認を得て行われるべきとされています。一国の単独行動ではなく、国際社会の集団的意思決定が必要です」


ルーズベルト:「だが、安保理は機能しない。ロシアと中国が……」


グロティウス:「それは確かに問題です。しかし、安保理が機能しないからといって、一国が単独で行動することが許されるわけではありません」


ビスマルク:(皮肉に)「つまり、安保理が機能しなければ、何もできないということか」


グロティウス:「そうではありません。安保理以外にも、地域機関を通じた対応、国連総会での『平和のための結集』決議など、さまざまな選択肢があります」


グロティウス:「重要なのは、国際社会の広範な支持を得ることです。一国の独断ではなく、複数の国、できれば多数の国の合意に基づいて行動すること。それが、介入の正当性を担保するのです」


ボリバル:「しかし、グロティウスさん。その『広範な支持』を得るまでに、どれだけの時間がかかるのですか。その間に、何人が死ぬのですか」


グロティウス:(ボリバルを真剣に見つめて)「ボリバルさん、あなたの苦悩は理解します。しかし、拙速な介入がもたらす害は、不作為がもたらす害より大きいことがあります」


グロティウス:「ビスマルクさんが指摘したように、イラク、リビアの例を見てください。『人道』を掲げた介入が、結果としてより多くの人々を苦しめることになった」


(全員を見渡して)


グロティウス:「R2P は、介入を『許可』する概念ではありません。介入に『条件』を課す概念です。その条件を満たさない介入は、いかに人道的な動機があっても、正当化できないのです」


---


(長い沈黙の後、ボリバルが突然立ち上がる)


ボリバル:「もう我慢できない!」


(声を震わせながら)


ボリバル:「法的手続き?国際社会の合意?R2P の条件?——そんなものを議論している間に、私の同胞が死んでいくのだ!」


グロティウス:「ボリバルさん、お気持ちは……」


ボリバル:(グロティウスの方を向いて、激しく)「分かる?本当に分かるのか、グロティウスさん!あなたは17世紀のオランダで、快適な書斎で本を読んでいた。私は戦場で仲間が死ぬのを見てきた!飢えた民衆の目を見てきた!」


(声が裏返る)


ボリバル:「あなたの『法的手続き』は、彼らに何の慰めにもならない!」


グロティウス:(静かに、しかし毅然と)「ボリバルさん、私も三十年戦争の惨禍を見ています。何百万人もの死者を。だからこそ、法の重要性を……」


ボリバル:「法!法!法!——法が機能しないから、民衆は苦しんでいるのだ!」


(深呼吸し、少し落ち着きを取り戻す)


ボリバル:「……すまない。取り乱した」


あすか:「いえ、ボリバルさん。あなたの苦悩は、この問題の核心です」


ボリバル:(席に戻りながら、静かに)「私は……本当に分からないのだ。何が正しいのか」


(目を伏せて)


ボリバル:「私は解放者として、圧政と戦うことを生涯の使命とした。だから、今ベネズエラで苦しむ人々を見ると、助けなければという衝動を抑えられない」


ボリバル:「しかし同時に、私は知っている。外国の『解放』が、しばしば新たな従属の始まりであることを。アメリカの介入の歴史が、それを証明している」


(顔を上げ、ルーズベルトを見る)


ボリバル:「ルーズベルトさん、あなたに問いたい。本当に、本当に、ベネズエラの民衆のために行動しているのか。それとも、アメリカの国益のために、『人道』という衣を着せているだけなのか」


ルーズベルト:(真剣な表情で)「両方だ、ボリバル。私はそう答える」


ボリバル:「両方?」


ルーズベルト:「そうだ。アメリカには確かに利害がある。それは否定しない。だが、利害があるからといって、人道的動機がないとは限らない」


ルーズベルト:「私は大統領として、常にアメリカの国益を考えた。同時に、正義のために行動した。その二つは矛盾しない」


ビスマルク:(皮肉に)「都合のいい話だな」


ルーズベルト:(ビスマルクを睨んで)「都合がいい?ビスマルク、君は国益だけで動いた。私は国益と正義の両方を追求した。どちらが『都合がいい』のかね」


ビスマルク:「少なくとも、私は自分を欺いていない」


---


ビスマルク:(立ち上がり、静かに、しかし重みのある声で)「ボリバル、君の苦悩には同情する。本心だ」


ボリバル:(驚いて)「ビスマルク……」


ビスマルク:「私は皮肉屋だと思われているだろう。確かにその通りだ。だが、私も人間だ。苦しむ人々を見て、何も感じないわけではない」


(スタジオをゆっくりと歩きながら)


ビスマルク:「だが、政治家として、私は感情よりも結果を重視する。そして、介入の『結果』について、もう少し詳しく話させてくれ」


ビスマルク:「ルーズベルト君、君は大統領を拘束した。素晴らしい。では、その後はどうする」


ルーズベルト:「民主的な選挙を実施し……」


ビスマルク:「誰が実施する?」


ルーズベルト:「国際社会の監視の下で……」


ビスマルク:「国際社会?具体的には誰だ?アメリカか?国連か?」


(ルーズベルトが答えに詰まる)


ビスマルク:「仮に選挙が実施されたとしよう。誰が立候補する?野党は何年も弾圧されてきた。まともな政党組織がない。カリスマ的な指導者もいない」


ビスマルク:「軍はどうする?ベネズエラ軍の幹部は、麻薬ビジネスで利益を得てきた。彼らが黙って民主化を受け入れると思うか」


グロティウス:「確かに、移行期の不安定さは大きな懸念です」


ビスマルク:「懸念どころの話ではない。これは確実に起こることだ」


(指を折りながら)


ビスマルク:「シナリオ1。軍がクーデターを起こし、新たな軍事独裁政権が誕生する。前の大統領より悪いかもしれない」


ビスマルク:「シナリオ2。複数の派閥が権力を争い、内戦が始まる。リビアと同じだ」


ビスマルク:「シナリオ3。アメリカが長期駐留を余儀なくされ、『占領者』として憎まれる。イラクと同じだ」


ビスマルク:「シナリオ4。奇跡的に民主化が成功する。だが、これは最も可能性の低いシナリオだ」


ルーズベルト:「可能性が低いと決めつけるな。努力すれば……」


ビスマルク:(遮って)「努力?アメリカはイラクで20年努力した。アフガニスタンでも20年努力した。結果はどうだ」


(沈黙が流れる)


ビスマルク:「私が言いたいのは、介入には『その後』があるということだ。大統領を拘束するのは簡単だ。だが、その後の国を安定させ、民主化させることは、はるかに困難だ」


ビスマルク:「そして、アメリカにはその覚悟がない。歴史が証明している。熱しやすく冷めやすいのがアメリカだ。数年で『疲れた』と言って撤退する。残されるのは混乱だけだ」


(席に戻りながら)


ビスマルク:「だから私は言う。この介入は間違いだと。短期的には『正義』に見えるかもしれない。だが長期的には、より大きな混乱を招く。10年後、君たちは今日の決断を後悔するだろう」


---


(長い沈黙の後、ボリバルがゆっくりと立ち上がる。その表情は、先ほどの激昂から一転して、静かな決意を宿している)


ボリバル:「ビスマルクさん、あなたの分析は正確だ。私もそう思う」


ルーズベルト:「ボリバル……」


ボリバル:「待ってくれ、ルーズベルト。私の話を聞いてほしい」


(スタジオの中央に歩み出る)


ボリバル:「私は200年前、南米を解放した。少なくとも、そう思っていた。だが、解放の後に何が起きたか」


ボリバル:「カウディーリョが次々と現れた。軍事独裁、内戦、経済破綻……。私が夢見た統一された南米共和国は、分裂と混乱の中に崩れ去った」


(苦い表情で)


ボリバル:「なぜだ?私は長い間、この問いに苦しんできた。答えは……私自身の中にあった」


グロティウス:「どういう意味でしょう」


ボリバル:「私は民衆に『自由』を与えた。だが、民衆は自由を使いこなす準備ができていなかった。教育も、制度も、文化も——すべてが不足していた」


ボリバル:「真の解放とは、外から与えられるものではない。内から育つものだ。民衆自身が、自らの力で勝ち取り、自らの手で守るものだ」


(ルーズベルトの方を向いて)


ボリバル:「ルーズベルトさん、あなたの情熱は本物だと思う。ベネズエラの民衆を救いたいという気持ちは、私も共有している」


ボリバル:「だが、アメリカが大統領を拘束し、民主化を『与える』ことで、ベネズエラは本当に自由になれるのか。私には、確信が持てない」


ルーズベルト:「では、何もするなと言うのか。見殺しにしろと」


ボリバル:「いや、そうは言っていない」


(全員を見渡して)


ボリバル:「私が言いたいのは、介入の『方法』を考え直すべきだということだ」


ボリバル:「軍事介入、大統領の拘束……。それは確かに即効性がある。だが、その後の混乱は誰が収拾する?ビスマルクさんが言ったように、アメリカにその覚悟はあるのか」


ボリバル:「むしろ、民衆自身が立ち上がれるよう支援すべきではないか。反政府勢力への支援、民主活動家の保護、国際的な圧力……。時間はかかるかもしれないが、それこそが『真の解放』につながるのではないか」


ビスマルク:「ふむ。それは私の考えに近いな」


ルーズベルト:「だが、その間に何人が死ぬ」


ボリバル:(苦悩を滲ませて)「それが……それが私の葛藤なのだ。今苦しんでいる人々を見殺しにすることはできない。だが、拙速な介入が、より多くの苦しみを生む可能性もある」


(深く息をつく)


ボリバル:「私には、答えが出せない。本当に分からない。ただ一つ言えるのは、もしこの介入が行われるなら、その後の責任もアメリカは負うべきだということだ」


ボリバル:「新たな独裁者を据えて手を引くのではなく、真の民主化を支援し続けること。混乱が起きても逃げ出さないこと。何年、何十年かかっても、責任を果たし続けること」


ボリバル:「それができないなら、この『正義』は偽物だ。そして、私の祖国は、また新たな悲劇の舞台になるだろう」


(ボリバルの言葉が重く響く中、スタジオに沈黙が流れる)


---


あすか:(静かに)「ボリバルさん、ありがとうございます。解放者としての経験と苦悩から紡ぎ出された言葉、深く心に響きました」


(4人を見渡す)


あすか:「人道介入の是非。これは、答えの出ない問いなのかもしれません。苦しむ人々を救いたいという願いと、介入がもたらすリスク。その狭間で、私たちは常に葛藤し続けるのでしょう」


(クロノスを確認して)


あすか:「ルーズベルトさんは、『今苦しむ人々を救うことが最優先だ』と主張されました。ビスマルクさんは、『拙速な介入は、より大きな混乱を招く』と警告されました。グロティウスさんは、『国際社会の合意に基づく介入が必要だ』と説かれました」


あすか:「そしてボリバルさんは、『真の解放は内から育つものだ』という、ご自身の経験に基づく洞察を示してくださいました」


(視聴者に向かって)


あすか:「どの主張にも、一定の正当性があります。そして、どの主張にも、限界があります。だからこそ、この問題は難しいのです」


(照明が切り替わり始める)


あすか:「ラウンド3では、さらに視野を広げます。過去の介入事例から、私たちは何を学ぶべきなのか。歴史の教訓を、4人の賢人と共に探っていきましょう」


(ルーズベルトが腕を組んで考え込み、グロティウスが書物に目を落とし、ビスマルクが皮肉な笑みを浮かべ、ボリバルが遠い目をしている)


あすか:「ラウンド3、引き続き、熱い議論をお届けします」

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