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エグゼキューター  作者: 結城 春
迷々編
9/24

化け物③

 上段から繰り出される大剣の一撃。

 ―——疾い。

 ライアと呼ばれた男は躱しきれないと判断すると、急停止して両手の短剣に魔力を注ぎ、クロスさせて大剣を受けた。

 剣と剣のぶつかり合い。ひとつ前の衝突と違い、今度は剣の強度を限界まで魔力で強化したはずだった。だが、ライアの剣は二振り共無様に砕け散った。

 「!?」

 馬鹿な。

 勢いそのまま迫る大剣。体を反るようにしてそれをよけようとする。幸いそれは掠るだけにとどまったが、ただそれだけでライアは後ろに吹き飛ばされた。

 地面に叩きつけられたが、何とか受け身をとってダメージを最小限に減らす。

 「くっ」

 まるで違う。先の闘いが嘘のようだ。思考が読めない。何も考えてはいないのか。ただ純粋に楽しんでいるだけなのか、本能のままに。

 それならば厄介だ。そういう奴は恐れを知らぬが故にどこまでも無謀だ。だから厄介だ、止まることを知らない。

 ゆらゆらと体を揺らしながら吸血鬼は近づいてくる。どうやら、こちらが武器を出すまで待っているらしい。

 小細工は通じないだろうな。

 ならばどうするか。

 「簡単だ」

 お前の得意で戦ってやる。

 魔力を司る経脈をフル稼働させる。

 「———開始。———analyze(解析)。———memorize(記憶)。———glaze(絡めて)。———ooze(滲む)。万物は我が手の内に。 真の一を為すために」

 何もなかった空間に、光と共にそれが現れた。

 「Copy(模倣)

 一層激しい光の中から、ライアは掴んだ。目の前の吸血鬼の持つ大剣とまるで同じものを。

 「へぇ。見ただけでマネできるんだ」

 それほど驚いてもいない様子である。きっと、本能だけで動いていて頭が回っていないからだ。それとも、目の前の男があの英雄だと分かっているからだろうか。男はそう考え、

 どうでもいい。

 すぐに考えを一蹴した。

 余分な思考をそぎ落とし集中する。

 俺はただ。

 魔力が高まる。

 体がまるで自分の者ではないような感覚。

 ただ、相手を始末するだけの冷徹な操り人形のよう。

 そうだ、

 「殺す」

 一言告げた。

 刹那。

 血しぶきをあげながら、吸血鬼の体はバラバラに切断された。

 

 

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