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エグゼキューター  作者: 結城 春
英雄伝記編
24/24

泥の記憶

 アルド王国を逃げるように離れてから時間が立ち、空は暗なりとっくに夜を迎えていた。

 ライアたちの視界にはあふれんばかりの木々が立ち込めている。森の中にいるようだ。今の世の中、森ましてや木があるなんてとても珍しい。

 「ここにしよう」

 大きめの木の下で火をおこしそこを今日のキャンプ地とした。シェイは焚火のそばで横にしてある。あれから起きる気配がない。

 「まぁ生きてはいるんだ。こいつなら、大丈夫」

 彼はそう言うと同じように横になった。

 今日での出来事。アルド王国。本当に俺はよかったのか。

 本当に、俺は理想に迎えているのか。

 ‥‥‥わからない。

 わからなくなる。

 俺のように人々が苦しまない世の中を。そのために俺は、今日あの国の人たちを犠牲にした。

 「は、はは」

 乾いた笑いがこぼれる。

 明らかな矛盾。苦しまない人を生み出さないために、人々を犠牲にした。

 ―——だが、それも仕方のないことだ。万人を救うことはできない。何かを為すためには犠牲はつきものだ。

 「また、お前か」

  胸の奥に巣食う声。いつも俺の中で、最も冷たく、正しいふりをして語りかけてくる声。

 ———迷うな。あいつのために。

 あいつのため。

 なぁ。

 俺はこれでいいのか。

 「イオナ」

 こうして英雄は深い眠りに入った。そしてこれから彼の体験する夢は、彼自身の過去の記憶だ。

 そう、これから見るものは彼が英雄と呼ばれるまでの伝記。ただの男が英雄と呼ばれるまでの地獄の話。

 

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