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エグゼキューター  作者: 結城 春
迷々編
15/24

君が僕は③

 ブラムは更地になった地上を見下ろしながら地に降り立った。

 すこしうるさい。先の爆発で地面が崩れたその音だろうか。

 彼の顔からは何とも言えない、複雑な心情が見て取れる。

 「これでは、本当に。はぁ」

 一つ深いため息をつく。ため息をつくと思い出してしまう、頭に浮かんでしまう、騎士の皮をかぶった狂戦士の姿を。

 シェリダンとアンデはいつも衝突していた。その度に我々をひどく困らせたものだ。

 「‥‥‥」

 面倒だと思ったこともあったが、それでも彼は我々の数少ない仲間で同志だった。あの地獄を経験した同志。人間に反抗していつも返り討ちにされていた、そんな姿も輝かしいものだった。我々は人間に歯向かおうともしなかった、だから余計に彼は輝いて見えた。

 「アンデよ。こんな奴に負けたのか」

 空を見る。今日の空はひどく歪んで見えた。

 トンッ、と軽快な音が後ろで聞こえた。

 「えへぇ。爺さん、派手にやったねぇ。これじゃあいつも死んじゃったんじゃないの、あっけない」

 「そうだな、あっけない。これでは記憶に残らん。残るのはこの日にアンデが殺されたということだけだ。記憶の風化は早い。あの男を憎むこともできないよ」

 「爺さん。物覚えが悪いもんなぁ」

 「そうだな」

 シェリダンはブラムの目の前に出ると、

 「終わったんだぜ。報告しに行こう」

 すこし笑ってそういった。

 「そうだな」

 老人は同じように笑う。老人は目の前の少女を見てこう思った。アンデが犠牲になったのは悲しいが、犠牲が一人だけだったのは幸運だと。

 刹那の間に首のなくなった少女を見て思った。

 

 ――—血が散る。

 

 理解が追い付かない。

 

 ―——少女の体が無様に倒れる。

 

 首を切られたのか、なんで再生しない、なんで切られた、誰に、どこから、わからない、わからない。

 

 ―——足に切られた首が当たる。

 

 うつろな目。

 

 ―——ゆらりと起き上がる影。

 

 黒い男。

 

 ———影から姿を現したのは一人の英雄だった。

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