君が僕は③
ブラムは更地になった地上を見下ろしながら地に降り立った。
すこしうるさい。先の爆発で地面が崩れたその音だろうか。
彼の顔からは何とも言えない、複雑な心情が見て取れる。
「これでは、本当に。はぁ」
一つ深いため息をつく。ため息をつくと思い出してしまう、頭に浮かんでしまう、騎士の皮をかぶった狂戦士の姿を。
シェリダンとアンデはいつも衝突していた。その度に我々をひどく困らせたものだ。
「‥‥‥」
面倒だと思ったこともあったが、それでも彼は我々の数少ない仲間で同志だった。あの地獄を経験した同志。人間に反抗していつも返り討ちにされていた、そんな姿も輝かしいものだった。我々は人間に歯向かおうともしなかった、だから余計に彼は輝いて見えた。
「アンデよ。こんな奴に負けたのか」
空を見る。今日の空はひどく歪んで見えた。
トンッ、と軽快な音が後ろで聞こえた。
「えへぇ。爺さん、派手にやったねぇ。これじゃあいつも死んじゃったんじゃないの、あっけない」
「そうだな、あっけない。これでは記憶に残らん。残るのはこの日にアンデが殺されたということだけだ。記憶の風化は早い。あの男を憎むこともできないよ」
「爺さん。物覚えが悪いもんなぁ」
「そうだな」
シェリダンはブラムの目の前に出ると、
「終わったんだぜ。報告しに行こう」
すこし笑ってそういった。
「そうだな」
老人は同じように笑う。老人は目の前の少女を見てこう思った。アンデが犠牲になったのは悲しいが、犠牲が一人だけだったのは幸運だと。
刹那の間に首のなくなった少女を見て思った。
――—血が散る。
理解が追い付かない。
―——少女の体が無様に倒れる。
首を切られたのか、なんで再生しない、なんで切られた、誰に、どこから、わからない、わからない。
―——足に切られた首が当たる。
うつろな目。
―——ゆらりと起き上がる影。
黒い男。
———影から姿を現したのは一人の英雄だった。




