化け物⑤
幾度目かの剣の衝突。互いに力は互角、速さも互角、さっきからずっと拮抗状態が続いている。ならば、力も早さも差がないのならどうするか、何が勝敗を分けるのか。
ぎりぎりと剣がこすれる音がする。
奴になくて俺にあるもの、それは。
技術だ。
ライアは一度後ろに後退する。すると、逃がさないとばかりにアンデがまた距離を縮めてきた。
目の前の敵を叩き潰さんと吸血鬼の剣がライアを襲う。だが、ライアはそれを最小限の動きで躱す。撃ち込まれた剣は、見事に地面を抉り刀身を埋めた。
しめた!!
間髪入れず、全力で吸血鬼の大剣を足で押さえつける。
「———!!?」
アンデは大剣を引き抜こうとするが抜けず、驚きを隠せぬままその大剣を握ったままだ。これでは身動きもとれまい。
「しっ」
水平に繰り出された会心の一撃。それは、吸血鬼の体を真っ二つに、
しなかった。
「なっ!!」
驚愕。吸血鬼は剣を握っていない腕の血を固めて硬度を上げ、その腕でそのまま一撃を防いで見せたのだ。
そうか、奴は吸血鬼だ。血の操作に長けた一族、血で攻撃を受け止めるくらいわけないか。
だが、ここから何かできるわけでもあるまい。
吸血鬼がにやりと笑った。まるでライアの考えを読み、嘲笑うように。
突然、吸血鬼の背中から腕が二本生えてきた。それは容赦なく目の前の敵を潰しにかかる。
ライアは少し後ろに下がり大剣を構えなおす間もなく腕をはじく。
はじいてはじいてはじき返す。
だんだんと腕の本数が増えていく、もはや大量の腕で前が見えない。
「このままでは、また」
「また、なんだい。英雄さん」
うしろからこえがした。
少し後ろに視線を移す。
当たり前のように奴はいた。




