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エグゼキューター  作者: 結城 春
迷々編
10/24

化け物④

 何も反応できなかった。

 気が付けば体がバラバラで、気が付けば自分は男を見上げていた。

 「は」

 ありかそんなの。英雄様が少し本気出しただけでこれか、俺はこんなもっと、

 「もっと、なんなんだ」

 目の前の男は、嘲るような目で見下してくる。

 なんなんだこいつは、さっきから、そうださっきから戦ってる最中も俺の考えてることを、

 「そうか、お前心眼を持ってるのか」

 だが、それならおかしいだって、

 「確かに心眼を俺は持ってる。だが、そんなことはいい。お前さっき思っただろう、俺はもっとなんなんだ」

 「俺は」

 俺は、もっと、戦いを楽しみてぇ。閣下のために、俺のために、あの日そう決めた。

 だから、

 「俺はまだ戦える!!」

 バラバラになったからだが繋がっていく、次に見えた姿は継ぎ接ぎ、だが吸血鬼には十分すぎる。動ければ、戦えれば、剣を振れればそれだけで十分だ。

 大剣をおよそ隙だらけで構える。

 閣下。俺はこの一瞬のために使わせてもらいますよ。

 「真・化(オーバードライブ)

 彼は生きることをやめた。

 継ぎ接ぎだった体はみるみるうちに回復し、その体を異形のものへと変えた。その姿はまるで獣のようで、人のような。人のようで、獣のような二つが合わさった姿をしている。

 そう、これこそ吸血種としての真化を遂げた、彼だけがたどり着く境地だ。

 「ガルァ」

 真化を遂げた吸血鬼は唸った。

 まるで最高の気分だ。今この一瞬、一瞬だけは俺が最強だ。

 だが、力を得る代わりに彼は生きることを放棄した。

 真・化(オーバードライブ)

 それは、種としての限界を超え、種の境地へと至る技。

 ただ、その命と引き換えに。

 使えば最後、動けるのはせいぜい十分かそこらだろう。しかし、使えば絶大な力が手に入る、もはや命一つでは足りな程の力が、最強の力が。

 「命を捨てるか」

 覚悟を決めたらしい、厄介だな。

 「はは、ははは。最高の気分だ。今ならお前殺せるかな」

 全身の毛が際立つような感覚、体が、脳が目の前の吸血鬼は危険だと警告する。

 「———わかってる」

 頭の中で何かが変わった、同時に魔力を開放する。

 ———魔力全開放(アクティベーション)

 二人の魔力が研ぎ澄まされる。

 「‥‥‥」

 言葉はない。

 ここから先かわすことはない。

 だから、問題ない。

 「うおおおおおおおおおお」

 駆け出した。

 もう迷いはない。

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