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量子力学がやりたかった私の話  作者: ばーでーん


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大気圧 -2-


分子レベルで大気圧を求めます。



 この稿では、分子レベルの計算から、大気圧を求めます。考えかたは、単純です。単位面積の壁に分子が衝突して、反射されるとします。単位時間あたりの衝突回数と、衝突毎に分子が正反対に速度の向きをかえることから算出します。


§4. 分子計算でつかうパラメータ


・温度T=300 [K] (=27℃)


・空気分子の平均質量m=4.8×10^(-26)kg

 例えば、窒素原子の質量数は14(プロトン7,中性子7)で、窒素分子の質量数は28です。同様に、酸素分子の質量数は32です。大気を80%の窒素分子、20%の酸素分子とすると、大気の平均分子量は、28×0.8+32×0.2=28.8です。プロトンと中性子の質量は1.67×10^(-27) [kg]です。中性子の方が重いですが、1.67の次の桁から変わるだけなので、この稿では同じにします。すると、空気分子の平均質量は、28.8×1.67×10^(-28)=4.8×10^(-26)kgを得ます。


・気体分子密度ρ=2.7×10^25個/m^3

高校生の物理と化学では、常温常圧の理想気体22.4リットルに1 [mol] の粒子が含まれると教わると思います。molを個数、リットルをm^3に換算します。ρ=6.02×10^23/22.4/0.1^3=2.7×10^25個/m^3です。


・気体分子の平均速度v=510 m/s

 これをこの短い稿で説明できません。次の式を認めてください。


1/2・m・v^2=3/2・kB・T


左辺は気体分子の平均運動エネルギー、右辺は熱エネルギーで、ボルツマン定数kB=1.38×10^(-23) [J/K]です。この式は、熱力学と統計力学から導かれます。上を解くと、v=(3・kB・T/m)^(1/2)=(3×1.38×10^(-23)×300/4.8×10^(-26))^(1/2)=510 m/sとなります。気体の分子は、音速よりも、早いのです。でもてんでばらばらの方向に飛んでいるので全体としては、それほど激しく感じません。風速10m/sの風は、例えば、気体の平均速度515m/sと505m/sの場所の間に流れる風です。



§5. 大気圧の計算

空気分子の平均質量m=4.8×10^(-26)kg、3平均速度v=500m/sなので、平均運動量の変化2×mv=4.9×10^(-23)kg・m/sです。2×の因子は、vで壁に衝突した分子が-vで跳ね返るためです。気体分子密度は、ρ=2.7×10^25個/m^3なので、単位面積に毎秒衝突する分子数は、ρv=1.4×10^(28)個/s/m^2です。よって単位面積あたり毎秒壁衝突で失う運動量は、4.9×10^(-23)kg・m/s× 1.4×10^(28)個/s/m^2/6=1.14×10^5Paです。最後の/6は、この事象が±x,±y,±zの6方向の壁で起こるためです。誤差は12%でよく合います。




前稿では、万有引力から、地表の大気圧を求めました。この稿では、気体の分子の運動から大気圧を求めました。これにより、大気圧が重力の位置エネルギーと分子の運動エネルギーを熱力学を通じて説明されることが示唆されます。

 既に、地表の温度が太陽と地球のステファン-ボルツマンの輻射の平衡から、まずまずの精度で求まることを見ました。今回は、地表の空気密度が求まれば、万有引力と分子からそれぞれに大気圧が求まることをみました。

 前稿も今稿でも、地表の空気の密度として実験値を用いました。もしかすると、地表の空気の密度ももっと基本的な原理から求まると心強いです。しかし、前稿の後書きに見たように、地球全体に対する大気の量はとても少ないです。どのようにして今の大気の量になったのかに迫るのはチャレンジングな課題です。

 今回はこれでおしまいです。また機会があれば取り上げます。


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