地球の温度 - 2 -
前回の検証です。
§3. 計算結果の検討
太陽から地球上空の人工衛星で測定した太陽からの輻射エネルギーは、1366W/m^2です。上の計算では、式(8)のことでり、1842W/m^2であり、私の計算は1.348倍大きく見積もっています。太陽表面の温度は太陽からの光スペクトル形状から求めたものです。実験値からのずれの原因としては、1/1.348=0.7418だけが太陽から放出されるのかも知れません。他の要因としては、ステファン-ボルツマンの法則、式(1)より、ワットは温度の4乗に比例して、温度に敏感なことです。太陽表面の温度を6000Kから5568Kに補正すると、人工衛星の実験値にあいます。太陽表面の温度は6000Kは、太陽からの黒体輻射スペクトルから測ったもので、数百度の誤差があるようです(太陽の表面温度は6000℃の記載が多いです。すると、絶対温度では、5727Kで、1.348倍だった計算値は1.119倍に補正されます)。
式(8)を実験値数値1366W/m^2に変更して、後の計算をします。0.7418^(1/4)=0.928なので、地球表面の温度は、式(13)の274 [K]から274×0.928=254 [K]=-19 [℃]に修正されます。そして、人工衛星で地球の放つ赤外スペクトルを測定すると、地球表面の温度255 [K]となります!私の計算は太陽の温度を幾分高く設定して、太陽から幾分出てこない分を無視したせいでしょう。
ちなみに求めた255 [K]は、地球の放射平衡温度と呼ばれます。
§4. 地球温暖化について
私はこの計算で、温暖化について何某かを言えるかもしれないと考えました。結論をいうとこのモデルで温暖化のメカニズムを扱うのは危険です。
一つの危険な使い方は、地球の放射平衡温度255 [K]は地表の室温300 [K]よりも低く、これが温暖化因子によるものだとする考え方です。この考え方によると、温暖化そのものは既に起こっていて、そのおかげで適度な温度下で私たちは過ごすことができました。最近の急激な温度上昇を危惧する、というものです。ここまでの考え方は問題ありません。しかし、この計算方法では、地球の放射平衡温度255 [K]は地球のどの高さの温度を明確にはできません。もしかしたら上空85kmの温度255 [K]かも知れません。しかし、85kmを超えると熱圏で再び温度は上昇します。つまり、地球「内」からみると、地面から上の温度は一定ではないのです。この稿の計算で言えることは、地球「外」から眺めたら地球が何度に見えるかという話です。地面から上空まで50 [K]くらいの変動があるなかで、数 [K]の上昇を議論には適しません。とはいえ、地球の外側からは255 [K]に実際に観測されて、地面が300 [K]であるということは、地面は暖かいのは確かです。日光の反射率の低いアスファルトが熱いように、内側が暖かいのでしょう。問題は温まった地面がどのような経路で宇宙にエネルギーを放出するかを見ないと、地球「内」のことはあまり言えることがないのです。
もう一つの危険は、先の話の続きではありますが、地表の温度を一緒くたに扱うことです。上空では温度は変化することは重要です。上昇気流をつくったり、雨風、水の循環をもたらします。二酸化炭素は昔よりも放出されているのは確かです。温暖化の原因になるうるでしょう。しかし、定量的にどのくらいの影響かが示されません。地球の放射平衡温度255 [K]よりも室温が高いという事実だけではなく、室温が高い原因の解明が必要です。私は、二酸化炭素を減らすこと自体は賛成です。二酸化炭素が増えていて、温度が上がっていることは確かです。二つに因果関係があるのか、あるとしてもどのくらいの影響かはわかりません。しかし、解明を待つ間にも温暖化は進みます。効果の程度はさておき、二酸化炭素は抑制した方が良さそうです。しかし、一度大気に放出された二酸化炭素を回収するのは反対です。大気のシステムに入ったら、二酸化炭素は温暖化以外にも影響しているでしょう。それこそ、上空の大気循環にだって影響するかも知れません。
§5. さいごに
以上のように、エネルギーや環境は物理学の対象として、興味深く、また、重要ながら、まだ理解が不十分な未開の研究がたくさんあります。
注: 私は地球温暖化に関する研究をよく知りません。
§4は、専門外の私の個人的な見解です。
では、地球の地面から宇宙まで、どうしたら放出できるかを考えました。
熱伝導率という考え方があります。温度差ΔTがあると、熱エネルギーが温度が高い場所から低い場所に流れます。空気の熱伝導率は、1気圧、0℃では、0.0241 W/m・Kです。エベレストよりも少し高い10 [km]=10000 [m]までは、気体もあるので、この熱伝導率が使えると仮定します。エベレスト山頂(高さh=8800m)は夏季でも-19℃に達します(地球の放射平衡温度まで下がります!)。地面の平均温度15℃との差ΔT=34 [K]です。このとき、熱伝導により、放熱される熱量Q [W/m^2]は以下です。
Q=σΔT/h
=0.0241×34/8800
=9.3×10^(-5) [W/m^2]
これでは、 前作の式(11)のUe=322.2 [W/m^2] にはとても足りません。つまり、空気の熱伝導ではたりません。
この現象を記述するには、熱輻射(途中で温暖化ガスを含む気体による吸収と放出を繰り返して熱が上空に移動する)や気体の対流を考慮する必要があります。まして、温暖化の原因を探るのは、現状かなり困難です。いつか、大気の気象を語る機会があればと思います。