エネルギーの話をするその前に
エネルギー資源を大切にするのか
エネルギーが環境に及ぼす影響から守りたいのか
は、実生活で重要です。
しかし、エネルギーって何?
式が多いです。面倒な方は、後書きの【これが言いたいだけです】、だけに飛んでください。
前回、質量mの物体の速度vを微小時間dtの間に.速度をdvだけ変化させるものを力Fと定義しました。
F・dt=m・dv (1)
F=m・dv/dt (2)
力が加わり、速度も変わると、物体の位置(座標)も変わります。いま、座標は、x方向の1次元だけを考えます。物体座標xの微小変化dxは、以下です。
dx=v・dt (3)
時間変化dtの間はvで、dtが経過した直後にvからv+dtに変化します。vは時間dtの間は一定なので、(3)のように書きます。前後関係がまどろっこしいですが、微小時間dtを限りなくゼロに近づければ問題なくなります。
*もしも、コンピュータで、dt=0.000....1秒のように、ゼロの極限をとらずに、微小なまま計算する場合は、物理量をどのタイミングで変化させるかで、精度が変わります。
式(1)の両辺に、vをかけます。
F・v・dt=m・v・dv (4)
となります。式(3)より以下を得ます。
F・dx=m・v・dv (5)
両辺を積分します。
∫F・dx=∫m・v・dv (6)
右辺は、積分できます。初速v0、その後の任意の時刻(微小時間後である必要なし、その前に遡っても可です)における速度vとして、以下となります。
∫m・v・dv =1/2・m・v^2-1/2・m・v0^2 (7)
運動エネルギーK(Kinetic Energy)を以下で定義します。
K(v)=1/2・m・v^2 (8)
式(7)は初速v0の運動エネルギーとその後の速度vの運動エネルギーの差です。
実は、式(6)の左辺が、一般論を語るのが難しいです。そこで、地上における重力を考えます。重力加速度gとすると、重力は高さによらず一定です。
F=-m・g (9)
マイナス符号は、重力は高さ方向をプラスにとると逆向きの力になるためです。
万有引力は距離の自乗に逆比例します。なので、重力が高さによらずに一定なのはおかしいと考える人もいると思います。その考えは正しいです。地球の半径は、6400km、エベレストの標高は9kmで、このくらいの高さであれば0.1%しか違わないので、一定と近似します。すると、式(6)の右辺は、以下になります。
∫F・dx=-∫m・gdx
=-m・g・x+m・g・x0 (10)
ここで、x軸を高さ方向として、x0を初期高さ、xをその後の高さとします。重力の位置エネルギーUを以下で定義します。
U(x)=m・g・x (11)
*Uが何かの頭文字には由来しないようです。力FはForce、速度vはvelocity、質量mはMass、時間tはtime、重力加速度gはGravityの頭文字です。
さて、式(7)(10)を式(6)に代入すると、以下となります。
-m・g・x+m・g・x0
=1/2・m・v^2-1/2・m・v0^2 (12)
です。左辺のg・xを右辺へ、右辺の1/2・m・v0^2を左辺に移動すると以下になります。
1/2・m・v0^2 +m・g・x0
=1/2・m・v^2+m・g・x (13)
左辺は初期状態(初速、初期座標)の運動エネルギーと位置エネルギーの和で、右辺はその後の任意の時間における状態です。つまり、運動エネルギーと位置エネルギーの和はどの時間においても一定であることを示します。
xがx0よりも小さい(高さが低い)と、位置エネルギー、-m・g・xは小さくなります。その代わり、運動エネルギーと位置エネルギーの和は一定なので、位置エネルギーが小さくなった分、運動エネルギーは初期よりも大きくなります。つまり、速度は大きくなります。高さが低くなる(落下する)と速度は上がります。確かに現実とあっています。逆に高さが高くなると速度は小さくなります。位置エネルギーが初期の全エネルギーに等しくなると、運動エネルギーはゼロとなりその高さより高くは上昇できません。
以上を一般化します。式(8)と(11)を使うと以下になります。
K(v0)+U(x0)= K(v)+U(x)=いつも一定 (14)
です。
この意味を考えて見ます。式(5)の左辺は、力Fがある距離dx動く間にかかることを表します。力Fがかかったことで、速度がdvだけ変わり、力のかかった距離Fdxはm・v・dvに等しいのでした。積分しても同じなので、運動エネルギーと位置エネルギーの和は一定です。
今回はここまでです。長々と数式を書いてごめんなさい。しかし、エネルギー保存則のさわりだけ説明したかったのです。
位置エネルギーは、重力の場合には、式(11)のようにかけます。位置エネルギーは、座標が同じであれば、常に等しいです。例えば、初期座標x0の高さから上昇したり落下したのち、再び初期座標x0の高さに戻ったら位置エネルギーの値も戻ります。
【これが言いたいだけです】
自然界を構成する粒子間に働く力も、粒子間の座標の配置関係だけで決まるとすると(実際に決まります)、粒子間の力も位置エネルギーで定式化できて、全ての粒子の運動エネルギーと位置エネルギーの和はいつも一定となります。
以上、お読みいただきありがとうございました。