音の波の唸り
これから何回か、量子力学による半導体の説明をします!誰に頼まれた訳でなく。
半導体の集積回路は、AIはもちろん、スマホやその通信、パソコンなど欠かせません。自動車にも、エンジンからパワステ、ミラーの開閉の制御など半導体回路が満載です。冷蔵庫、テレビ、掃除機、多分、電気で(少なくとも動作を制御して)動くものは全て。
量子力学では、粒子は波動と考えます。これを頭の中でイメージできている人は世の中にいません。だから呪文をかけます。電子は波です、電子は波です。波だから二つ(かそれ以上)の電子は干渉します。唸ります。今回は、音の唸りで比喩します。
二つの波の重ね合わせを考えます。共鳴したり、唸ったりの重ね合わせです。今回は、二つの波の波長や周波数が「微妙に」ずれている唸りについてです。音なら周波数が微妙にずれると、うぁーん、と唸ります。
一つの純粋な音(純音)は、正弦波で書かれます。
y=sin(ωt) (1)
です。音は空気を構成する原子の密度が高くなったり低くなったりする振動です。音の進行方向に、密度の高い場所と低い場所ができます。yは平均の密度をゼロとした時の密度のずれを表します。ωは周波数fに、2πをかけたものです。
ω=2πf (2)
周波数fは毎秒の回転数です。sin関数は0〜2πで一周期なので、周波数fに2πをかけます。
角周波数と呼びます。
二つの波を重ね合わせます。
y1=sin(ω1t) (3)
y2=sin(ω2t) (4)
重ねると以下です。
y1+y2=sin(ω1t)+sin(ω2t)
=2*sin[(ω1+ω2)/2]*cos[(ω1-ω2)/2] (5)
二行目の変形は、三角関数の和積の公式を使いました。ω1を442Hz(に2πをかけたもの、以下同様)、ω2を400Hzとします。式(5)のsinの波の周波数は以下です。
(ω1+ω2)/2=(402+400)/2
=401 Hz
二つの波の周波数の平均です。440Hzにチューニングしているとするともう一息です。
式(5)のcosの波の周波数は以下です。
(ω1-ω2)/2=(402-400)/2
=1 Hz
です。この波の周期は、1秒、つまり1秒間隔で、わぉーん、と唸ります。
今回は、時間変化だけを考えました。次回は空間も伝わることも考慮しましょう。
高校数学の三角関数の積和の公式は例えば、以下から求まります。
咲いたコスモスコスモス咲いた、で覚えた方も多いかと思います。
sin(a+b)=sin(a)cos(b)+cos(a)sin(b)
sin(a-b)=sin(a)cos(b)-cos(a)sin(b)
二つの式を足すと、以下になります。
sin(a+b)+sin(a-b)=2×sin(a)cos(b)
a+b=A, a-b=Bとおくと、以下を得ます。
a=(A+B)/2
b=(A-B)/2
よって、以下の公式を得ます。
sin(A)+sin(B)=2×sin((A+B)/2)cos((A-B)/2)
これが本文の式(5)です。
この公式が唸りを表すと知っていたら、ちゃんと勉強したかも。