円周率を求めよう!
円周率が求めたくなっただけです。
唐突ですが、円周率について語ります。半径rの円を考えます。円は半径を変えても、円の図形は相似なので、円周の長さa(以後、円周)は、半径に比例します。そのときの比例定数として、円周率πを定義します。
a=2・π・r (1)
因子2は、歴史的な検討順番によると思います。例えば、円周率は円の面積Sの比例定数として、S=πr^2のように、面積の比例定数として導入されたのかもしれません。この稿では、(1)から出発点とします(円の面積がr^2に比例するのを自明に説明するのが面倒なので)。どちらからはじめても同じです。
半径rの円を、n等分します。円周がn等分されます。円の中心と、n等分された円周上の隣り合う2点を結ぶ二等辺三角形がn個できます。二等辺三角形の長さの等しい二辺は半径rです。円をn等分したので、二辺のなす角度は、360°/n (円一周は360°)です。
この二等辺三角形の等分数nを大きく、つまり、二等辺三角形を細長く、すると限りなく円に近づきます。そこで円をn等分した二等辺三角形の底辺(二等辺三角形の円周側の辺)の長さBを求めると、n×Bが二等辺三角形の円周側の辺の総長さで、nを無限に分割すると、円周の長さになります。
よって、2辺の長さr、2辺のなす角度θ(=360°/n)の二等辺三角形の底辺の長さを求めます。二等辺三角形は、斜辺がr、先端の角度がθ/2の直角三角形二つに分けられます。直角三角形の円周側の長さは、r・sin(θ/2)です。二等辺三角形の底辺Bはこの2倍なので、以下となります。
B=r・sin(θ/2) ×2 (2)
従って、円周に区切って二等辺三角形の底辺の和は以下です。
a=n×B
=n×r・sin(360°/n/2)×2 (3)
(n→♾️)
です。いま、πを直接算出するために、r=1とします。すると、(1)と(3)から以下となります。
π=n×sin(360°/n/2) (4)
(n→♾️)
さて、n=6を代入してみましょう。n=6では、360°/6/2=30°で、sin(30°)=1/2です。よって、6×sin(360°/6/2)=3.0です。6等分と粗いですが、円周率3.14159に対していい線いっています!以下、倍角の公式でnを大きく等分できます。最近の教科書はわかりませんが、昔は三角関数表がのっていました。パソコンの表計算ソフトやスマホの関数電卓でもできます。以下、n=6から細かくした結果です。
n=6, π≒3.0
n=12, π≒3.106
n=24, π=3.1326
n=48, π=3.1393
n=96, π=3.1410
n=192, π=3.14145
n=384, π=3.14155
n=768, π=3.14158
n=1538, π=3.14159
少数点以下5桁までで四捨五入した円周率はπ=3.14159なので、私たちにも計算できました!
ちなみに、細かく当分した二等辺三角形の面積の和がπ・r^2に一致するように、πを決めても同じです。二等辺三角形の面積が半径r^2に比例することに気づきます。よって円の面積もr^2に比例して、比例係数がπです。
以上の考え方を最初に考えたのはアルキメデスだと言われています。上の計算のn=96相当まで求めたそうです。今では何兆桁まで求まっていますが、計算方法にはいろんな工夫が施されています。
ちなみに、円周率が無理数(整数n,mに対して、π≠n/m、小数点以下がずっと続く)であることはご存知だと思います。証明を見た方は少ないかもしれません。考え方は単純で、π=n/mとすると、πが満たすべき公式に矛盾が生じることを使います。高校数学の範囲では、その公式を探して解く手間が長いです。大学の数学を使うと、短く証明できますが、前提知識を必要とします。私がここに噛み砕いて書ければ良いですが、断念します。ごめんなさい。
*関数電卓で計算するとき、角度の単位は、°(deg)にすることをおすすめします。ラジアン(rad)という単位もあります。°(deg)は一周を360にとります。ラジアン(rad)は、一周を2πにとります。ラジアンを使うと円周率を求めるのに、円周率を使うという変なことになります。ラジアンは、半径1の円の円周の長さを角度にする合理的な単位で、専門的にはこちらが使われます。しかし、円周率を求めるというこの問題では、360°で構いません。
ラジアンとdegに次の関係があります。θ(rad)=θ(°)/360×2πです。
お読みいただきありがとうございました。
注: 式(2)の二等辺三角形の底辺の長さは、三平方の定理から算出できます。アルキメデスもそうしたと思います。上の計算は、二等辺三角形が円に内接しているので、円周率を小さい側から精度をあげます。外接円を使うと大きい側から精度をあげます。アルキメデスは両方を計算して、円周率の上限と下限をこみで示しました。