ノンフィクションに騙された〜「君を愛する事はない」と言われたヒロインのザマア&幸せエンディングの軌跡を信じていたのに〜
何となく思い付きました。
ねぇ、カードしていかないかい? ああ、そうだよ、賭け事だ。ははっ、そうこなっくちゃね!
ヒュー、やるね~、お客さん、そんなに賭けるのかい? じゃあアタシは……、え? お金じゃない? 賭けるのは黒歴史の過去? 黒歴史って何だい? ……つまり恥ずかしい秘密の過去って事かい? え? 別にアタシのじゃなくても構わないって??
へー、ほーん。OK。アタシが負けたら客の恥ずかしい話をしてやるよ。じゃ、始めるよー。
………凄いね。完璧にアタシの負けだね。良いよ、話して挙げる。まだ此処が観光客賑わっていた、30年は前の話さ。
当時、この近くには綺麗な湖があってね。ああ、15年くらい前に埋め立てられるまでは観光客がそれなりにいたんだがね。埋め立ての理由? そりゃアタシ等みたいな下の人間には分からんさ。
只、綺麗な湖のお陰で、それなりに観光客は昔々からあったそうだ。で、さっき言った30年以上前に爆発的に訪れる人が増えた。2、3年で落ち着いたけどね。
客が増えた理由? 恋愛小説さ。ほら、そこに置いてあるだろ? 「君を愛する事はない」から始まる長いタイトルのヤツ。それ、隣国で目茶苦茶流行ってね。態々裕福層の人間が此処に国を超えて観光してきたんだわさ。
ん? 恋愛小説との関連が分からない? ああ、済まないね。ちゃんと話すさ。その小説、ノンフィクションって話でね、ああ、正しくは「事実を元にしたフィクション」だったかな?
兎に角、ファン達は小説の元になった事実にも興味を持った。小説のヒロインは、愛する夫と暮らして、可愛い息子と娘を産んだ処で終わるんだが、そのヒロイン達の家が在るのがウチの湖の近くって設定だったらしいんだ。
ん? 聖地? ファン達の聖なる場所って事かい? 成る程ねぇ、言い得て妙だ。
でさー、不思議なのはさ、小説は隣国で作成されたんだよね。ウチの国じゃないんだわさ。客が来る様になって、そんな小説がある事を知った訳。で、ノンフィクションだと謳われてる訳だろ? ウチの国にそんな事あったの? って評判になった訳だ。
小説のヒロインは最後、ウチを治める貴族夫人になってたからね、当然、ウチの領主様ご夫婦がモデルだと思われた。で、それが領主様の耳に入った。
領主様は激怒なさられた。何故かって? 事実無根だったからさ。
まずヒロインなんだけどね、ヒロインは子爵令嬢様だった。ヒロインは辺境を治めるーーこの辺境がウチだと思われたみたいーー辺境伯令息様と婚約していた。
え? 身分差? ああ、珍しいって話だね。確か遠い親戚関係とかだったかな? 更にヒロインのオトンがとても有能で本来なら伯爵になってた筈だけど〜、とかなんとか設定があったかな?
まあ兎に角婚約してたのさ。2人の仲は良好。結婚まで秒読みって処で、横槍が入った。侯爵家様が子爵令嬢を是非嫁に、って頭下げて来たのさ。
何でも侯爵家の当主様は大ポカをやらかしたとかで侯爵家は破滅寸前。子爵家様に援助して欲しいって訳だ。で、子爵家の先代が侯爵家の先代に助けられた、つまりは今、子爵家が潤っているのも先代の頃に助けられたお陰、ってんで恩義を感じた子爵家には断る事が出来なかった。
そんで泣く泣く婚約者と別れたヒロインは悲しみに浸る間もなく、侯爵家に嫁いだ。にも関わらず、初夜の寝室でこう言われる訳さ。
ーー君を愛する事はない。
ってね。しかもそのまま寝室を出て行かれてね。理由? 平民の女性と愛を育んでいたんだって。
ん? 質問? 構わないさ、何だい? そもそも侯爵令息に婚約者が居なかった理由? さあ? 新居に当主夫妻が居なかったのか? いや、翌日には登場したから……、え? 両親が気付かなかった理由? さあ? まあ、恋愛小説だし、細かな事は気にしなくて良いんじゃないかい?
ん? ヒロインは元婚約者をまだ想っていたのかって? そりゃそうだろ、幾ら切り替えが早い女だって、あんな流れじゃねえ……。
え? それ性別が逆ならヒロインは同じ事やってたんじゃないかって? それ処か立場が間違いなく強いんだから、もっと卑劣な事した可能性?
……う〜ん、そりゃあ否定出来ないかもねぇ。何せ可哀想なヒロインが幸せになる序に悪役をザマアするって話で、要は設定も心情もヒロイン贔屓だからねぇ……。けど主人公に贔屓する内容になるってのは仕方無いんじゃないかい?
ま、兎に角だ、そんなヒロインだったが、強く生きて、旦那からの冷遇に負けず、婚家をも味方に付けて、そこに別れたけどヒロインを忘れられず、独身で新たな婚約者も作らなかった、別れた辺境伯令息様と再会し、なんやかんやで旦那と愛人の平民女にザマアして、白い婚姻を理由に婚姻白紙にし、2人は漸く結ばれメデタシメデタシ、って訳さ。ヒロインは辺境へ嫁入りし、湖近くの屋敷で子供2人を出産したって話だ。ん? 元婚家? 没落したってさ。
味方に付いてくれた元義両親を助けなかったのかって? まあ、でも同時に諸悪の根源だからねぇ……。納得して諦めた感じ……。ん? 高位貴族が落ちぶれて平民になって無事に生きていける保証はない? それを見捨てて幸せになれる人間がお涙頂戴ヒロインなのは違和感? だからそんな細かな事は気にすんなって!
それより本題は此処からさ。
辺境伯様と奥様はそんなドラマ経験なんてなかった。普通に貴族らしく婚約して、結婚した仲。それに奥様は確か伯爵令嬢様だったかな、身分も違う。そうなると自分達がモデルなんて事は絶対にない。けどノンフィクションと謳っているなら、別所にモデルは居る事になるね。
で、問題は辺境伯様に心当たりがあった事。そう、本当のモデルをご存知だったのさ。で、激怒された。何故って、その件の話、実は王命と絡んだ話で、下手したら王様への不敬に当たるからさ。そんなのに巻き込まれるなんて冗談じゃなかった、と言う訳さ。で、プチ国際問題になっちゃったのさ。プチで済んだのはそれだけ関係者が頑張ったからかもね、知らんけど。
で、詳細はさっきも言った通り知らんけど、私達には小説のファンに実際の出来事を教えて、その小説は詐欺ですよ、って教えて挙げる役割を持たされた。
実際の出来事? 勿論、話すさ。
まず国を上げての一大事業があって、それに複数の貴族家が関わった。その中心にあったのは2つの侯爵家。片方の嫡男の令息ともう片方の令嬢がその事業契約の為に婚姻する様に王命が出されたんだって。
一大事業の件が持ち上がる前、両家の令息も令嬢も婚約者が居たんだけど、それが理由で別れたのさ。
そして迎えた結婚式後の初夜。そこで嫡男は令嬢に向かってこう言ったんだって。
ーー君を愛する事はない。だから安心してくれ。
そうさ。互いに不本意な結婚。だから白い婚姻にして婚姻白紙化しようと言う訳さ。ん? 王命絡みの婚姻でそれは不可能じゃないかって? らしいね。けどそこはお2人の婚姻無しでも事業を進められる様にかなり嫡男様が頑張ったんだってさ。
ん? 令嬢様の望むお相手は元婚約者かって? そうだって言ってたよ。婚姻白紙化の後に嫁いだのもその人らしいからね。
……ああ、そうだよ。元婚約者様にも話を通していたらしい。え? そもそも旦那の嫡男様は令嬢様の事をどう思っていたんだって? さあ……、少なくとも好意は無かったと思うよ。何故かって? ああ、ちゃんと説明するさ。
王命が出されて婚約が解消になった後、お2人は交際期間を設けてたんだけど……、切れてなかったんだよ、令嬢様の方が。コッソリ元婚約者様と会っていてね、何でも思い出が欲しいとかで肉体関係も持ったとか持ってないとか……、この辺はハッキリしてないね。
けど嫡男様は託卵の可能性を疑わない訳には行かない。婚姻してからも関係を続けていたら、そう言う事もあるかもしれないだろう?
令嬢様を叱り付けて解決するならそうしたんだろうけど、そうじゃないかもしれない。万一家出や自殺でもされたら王命を守れない。令嬢様には兄、嫡男様には弟が居たんだけど、姉妹が居なかったからね。
だから取り敢えず白い婚姻をして、その後に白紙化しようと、それに沿った計画を立てる事にしたんだ。その為に嫡男様は両家にも王家にも話をお通したそうだよ。
王命が撤回されるなら、婚約破棄で慰謝料を貰う事も出来たんだろうけどね……。けど国を上げての一大事業、関わる家も両家だけでなく、「浮気されたから」で即日婚約破棄、と言う訳には行かなかったんだねぇ。スキャンダルも御法度。なるべく穏便に済ませようとした。実際、令嬢様が元婚約者様と結婚されるまでは穏やかだったそうだよ。
処がその後が問題だった。早過ぎたらしい……、妊娠が。どう計算しても嫡男様と婚姻期間中にデキたんだろうって話。でも嫡男様とは白い婚姻だ。
そして婚姻中も元婚約者様との逢瀬はあったそうだ。遠くない内に元婚約者様と婚姻出来るんだから我慢すれば良かったのにね。盛りの付いた動物みたいにさぁ……。避妊してなかったのか、避妊に失敗したかは知らないけどね。
嫡男様もまさかちゃんと話をしていたのに、婚姻中にシていたとは思わなかったみたいだし、何より嫡男様は事業を婚姻無しでも上手く回る様にするため、かなり忙しくしていて、気付けなかった。
王家に泥を塗らない様に、事業を上手く回して関係者達に不利益を与えない様にする為に、婚約破棄せず、慰謝料も受け取らず、穏便に済ませたってのに……。
全て台無しさ。
嫡男様は令嬢様に向き合おうとされていたかは知らないがね、少なくとも嫡男様の元婚約者様の令嬢は新たに婚約して、その相手に嫁いだそうだから、嫡男様はお1人に戻られても、その相手と一緒にはなれない。この事実が、令嬢様との違いが、そのまま嫡男様を弁護する形になったから良かったがね、令嬢様達は当然、許されなかった。で、結果的に令嬢様の嫁いだ家は爵位を落とされて一代子爵になったとか。その後はてんでどうなったかは知らない。嫡男様の方も、、あの後、どうされているかは知らない。
私は教えられた部分だけを隣国からの旅行者に語って……、阿鼻叫喚になったよ。夢見た恋愛の真実を知ってねぇ、、それにしても何で隣国はそんなヤバい話をモデルにしたかって? 知らないよ。でも噂ならあるよ。それで良いなら話すよ。ふーん、分かったよ。
あー、要は偶然で元はモデルでも何でも無かった。只、符号が幾つか重なるのを発見した出版社はノンフィクションと偽った、って事じゃないかな?
それはそうとね……、そう言うファン達はね、「自分達も運命の恋をしてみたい!」って想いが強過ぎてね。婚約者にそれを求めたりしてたんだけど、真実を知って、ショックの余り、婚約者と上手く行かなくなったりするケースも多かったそうよ、、それで結局、修道院とか放逐とかもあったみたい。
嘘かどうかまでは知らないけどーー、真実だったら彼女達にとって、正に黒歴史なんじゃないかって思うわけさ!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!
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