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#7 路地裏と探し物と秘密の依頼

「ゲホ……手も足も出なかった……」

「まさかあんなに強いとは思わなかったね」

「ねぇ~。オーラからすごかったもんね~」

「神に選ばれた私ですら封印に手間取ったからな。相当の手練れだったのだろう、中間考査というやつは……」


 中間考査(小学生のみんな! これは中学生になると出てくる鬼テストのことだよ!)の最終日。成瀬和己、九四六土星、早乙女美音、雀野瑠花の4人は一緒に帰っていた。なお4人とも考査の出来は……まあ上記の会話を見れば分かるだろう。


「でも考査が終わって解放されたよ! 記念にカラオケ行こう!」

「このメンバーで行くのかい? 成瀬君はカラオケとか興味無さそうだしここは僕と美音ちゃん2人で行こう(キラーン」

「あれ、私は~? 雀野瑠花を忘れていませんか~?」

「どんな組み合わせになろうと私も行く。カラオケに興味は無いが、庶民の生活を観察するのも闇の泉の主たる私の使命だからだ……」


 4人でワイワイ騒ぎながら歩き、カラオケまでの近道なので裏道を通ったら、ヤクザに会った。


 ヤクザに会ったのだ。


「あァ? 何だお前ら……」


 凄みを効かせるヤクザが2名。スーツの襟には「悪」の文字。由緒正しき悪玉組だ。


「やば、間違えました!」


 早乙女が叫び、


「ごめんなさい!」


 雀野が謝り、


「すぐに行きますんで僕ら!」


 成瀬が言い、


「何だお前らとはご挨拶だな。貴様らのような愚民が冥府の覇者たる私に声をかけるなど身の程知らずも甚だしいことだ!」


 九四六が締めくくった。


 当然2人のヤクザはキレた。正確に言えば、しばらく( ゜д゜)な表情になってから「ほぅ……口が達者だなァ」「滑車だなァ」とキレた。片方は何か間違えている。


 高校生4人、大ピンチである。ヤクザが近寄ってきて、九四六に向かって「そのよく動く口を叩き直してやるよ!」と拳を振りかぶった。


 4人は目を瞑った。拳が迫り来る直前、「待てぃ」と低く鋭い声がした。ヤクザが手を止め、路地の入口を見る。4人も振り返った。


 紺の和服を着た、背筋のシャンとした男性が立っていた。路地の入口からの光の陰になって顔は見えないが、若くは無さそうだ。室外機がブォンブォンと音を立て始めた。


「何ですかァ? オッサン」

「高校生に手を上げるのかい? あまり感心できないね」

「コイツらから煽ってきたンですよォ? 1発殴ッたら帰してあげても良いかなッて」

「そんなことをしたら許さないよ」

「オッサン。アナタと私達の間に子供がいるのに、どうやって許さないンです?」

「それは私じゃあできないよ。昔のようには動けなくてね」


 男性は穏やかながらに芯のある声を建物の間に響かせた。


「ただ君達の後ろにいる彼ならできるね」


 室外機の音が止まり、ヤクザは振り返った。昼なのに暗い路地、その闇に銀の光が浮かび上がった。それは黒と銀のジャケットだった。ジャケットがあるということは、着ている人がいる。


「金沢サン……コイツラ、本当にやっちゃっていいんスか?」

「構わないよ、銀」


 ヤクザが「金沢? 銀? おいまさか」「金沢組の銀光銀ぎんぎらぎんかッ!」と叫ぶ。銀光銀というらしい若い男は「お、俺も知名度、爆上げだなァ!」と笑い、動いた。


 ユラッ……と歩き出したかと思うと一瞬で片方のヤクザに接近、上半身を駆動して相手の顔を殴った。拳が頬に沈み、1人目はその場に倒れた。もう一方は流石に戦闘態勢に入っている。無骨な拳銃を取り出した。


 いったん動きを止めた銀光銀に、路地の外からの光が当たる。金髪と、鋭い目が光った。笑いをこらえきれない、という風に口の端が緩み、同時に斜め上から何か降ってきた。金属の棒、シャフトだ。さっきの和服の男が、高校生4人の頭上を通過するように投げたのだ。それを銀光銀は見ないでキャッチする。


 ヤクザが発砲するが、その弾はシャフトにはじかれた。はじかれた銃弾がコンクリートの地面に落ちるまでの刹那に銀光銀はシャフトを振るい、遠心力の加わった金属塊が拳銃を吹っ飛ばした。さらにその勢いでシャフトが顎に向かって伸び、2人目のヤクザは「あ゛」と呻いてから、ドサと崩れ落ちた。


 「ギンギラギンはさり気なく……」と、銀光銀は呟く。1人目のヤクザは「何言ってんだコノヤロー!」と立ち上がろうとしたが、路地の入口にいたはずの男が、いつのまにか拳銃を手に移動してきており、すぐにそれを頭に突きつけられて動けなくなった。


「どうしますコイツラ。悪玉の連中っスよね」

「ゴミ箱に捨てておこう」


 そんなやり取りをする2人の服の背中にはコアラの紋章が。


「あのコアラのマーク……金沢組だ!」


 雀野が気付いた。金沢組は、この蝶々町で最も勢力の大きいヤクザの組だ。悪玉組とは敵対関係にあるが、テリトリーが分かれているため、基本的に衝突はしないはずだ。


 成瀬は完全にビビッていた。そして周りを見るが、雀野は自分の発見を喜んでいる。九四六は問題を引き起こした張本人なのに平然としている。一番マトモそうな早乙女も何故か「かっこいい……」と目をキラキラさせていて、成瀬の恐怖に共感できる人はいなさそうだ。


 しばらくして悪玉組のゴミを処理した金沢組の2人が近付いてきたが、高校生に危害を加える気は無さそうだった。和服のおじさん(恐らく金沢組の親分である金沢昌・かなざわ あきら・だ)はニコニコして「早く帰った方が良い」なんて言ってくるし、さっきまでオラオラ動いていた銀光銀はつまらなそうに「ガキがヤクザと関わってンじゃねーよ」と呟いてるし、何故か大通りまで見送ってくれたし、なんなら世話好きな大人だった。


「何だったんだろ、コアラのマークの人たち」

「あまりコアラのマークとか言わない方がいいよ、お菓子会社に怒られる気がする」

「ふん、面倒なことに巻き込まれた私の方が怒髪冠を衝く気分だ(訳:激おこ)」

「九四六君が原因でしょ~」

「あれ、早乙女?」


 振り返ると、早乙女は歩いてどこかへ去っていく金沢組の2人を見ていた。その瞳は完全に「こーいーしちゃったんだ♡」な目である。


「美音ちゃん、もしかして恋しちゃった……?」

「マジで!?」

「あれほど年を重ねた人間に想いを寄せるとは愚かな」

「いやいや、少なくともおじさんの方ではないでしょ」


 4人はヤクザに会ったことで疲れており、カラオケで4時間歌ってから、家に帰った。



× × ×



 さて数日が経ちました。


 1-Eの教室に英語の先生が入ってきた。なぜかクラゲみたいな帽子を被った、金髪の女性の先生だ。ベージュの服もセンスが良い。


「すごい綺麗な先生だね……」

「英語ペラペラなんだろうなぁ」

「えっ待って僕、英語まじめに勉強するわ」

「なぜ誰もクラゲにツッコまない」


 先生はボォルド♪ な良い香りを漂わせて教卓についた。そして、


「皆さんおはようございます」

「……バリバリ日本語⁉」

「私はジェリー。アメリカ人ですが、日本生まれの日本育ちなんです」

「じゃあ……英語は?」

「ンェ、アー、アイム……ジェリー……ナ、ナーストー……ミートー……」

「うわひどい」


 ジェリー先生は綺麗な青い目でまばたきしてニッコリ笑った。


「ですから、むしろ皆さんが私に英語を教えてくださいね!」

「英語の先生のスタンスじゃない……!」

「いーじゃん!」


 口調が急に砕けたので1-E生徒はポカンとした。ちなみに全員ではない。ポテトとか池上零児は寝ている。それはともかく。


「1-Eだから、イーじゃん、です! 互いのミスにも、いーじゃんって言えたら、それってすごく仲良いでしょ?」

「それ、素敵ですね!」


 早乙女は感動しているが、神社の巫女である妖神寺椿から鋭い質問。


「E組以外は?」

「あー……A組だったら、ええやん、かな……」

「他は?」

「……それじゃあ授業を始めましょう!」

「誤魔化した!」


 ジェリー先生は何事も無かったかのように「『~したい』は英語で『I wont to ~』だけど、これは『I wanna ~』と略せますよ」などと言っているが、それはかなり先の単元である。それを誰かが指摘すると、先生はいたずらっぽい顔で「いーじゃん」と言い放ったので、このセリフが誤魔化しに使えることも明らかになった。



× × ×



 放課後。アーカリウス・アーノルドは、夕日によって橙色に染め上げられた教室の中をウロウロしていた。時々しゃがんだり、ロッカーの裏を覗いたりしている。そこにチエと雀野瑠花が近付いた。


「何してるの?」


 チエは灰色のフードに話しかける。


「いや、別に何も……」


 アーカリウスは素っ気ない。


「ふっふっふ、名探偵・瑠花が推理するのです」


 雀野は何か言っている。


「アーちゃん(いつの間にか定着したあだ名)は、床にしゃがんだり、ロッカーの裏を見たりしていた……つまり! アーちゃんは何かを探しているのです!」


 赤い眼鏡の奥、ハチミツ色の瞳がキラキラ輝く。チエは、突っ込もうかどうしようか、2秒考えてから言った。


「……それは知ってた」

「え゛」


 そこに早乙女美音と押屋真奈も寄ってきた。


「なになに、探し物~?」

「アーちゃんの? 手伝おうか」

「いや……結構です……」


 アーカリウスは遠慮するが、チエや早乙女は「何を落としたの~?」などと言いながら既に捜索を開始している。アーカリウスは少し迷ったが、「黒いケースのスマートフォン」と言った。


「ん」

「わかった」


 4人はくだらないことを話しながら探し始める。


「ほらーっ男子も手伝いなさいよーっ。成瀬とか暇でしょ?」

「女子の手伝いかい? それなら僕に任せたまえ~」

「あ、じゃあ僕も時間あるし手伝うよ」

「我の天眼は封印されているから、地道な作業に手を貸してやる」

「探し物⁉ 俺が1番最初に見つけ出す!」

「なんか予想以上にたくさん来た!」


 男子もワラワラ集まり、それを見た他のクラスメイトも集まってきた。


「あ、華廉さん」


 雀野が令丈華廉に声をかける。


「皆様で何をしてますの? 床に這いつくばる遊びが流行っていますの? ……あら、相田さんはゴミ箱を漁る遊び……何だか楽しそうです! 私もゴミ箱をあさ……」

「ち、ち、違うの華廉さん、これは探し物で」

「ああ、探し物……」※素です。


 結局、クラス全員による大捜索会が開始された。


「瑠花ちゃん、探偵なら場所分からないの?」

「えーと……な、何か、黒い……暗い場所?」

「落とし物はだいたいそういう所にあるの!」


 みんなが笑う。その時、ボブが異能力【スーパーパワー】で大きい棚を持ち上げ、みんなが「おー」と言った。しかし棚があった場所には、まあ色々な何かがいたので、女子一同(と一部の男子)は悲鳴を上げた。ボブも「きゃー」と言って棚を下ろした。


「……ゼェゼェ。スマホあった?」

「いや、ありませんでしたね」


 バーガーはアーカリウスに質問をしている。


「そもそもいつから無いんだ?」

「アレはたまにしか使わないから正確にいつ失くしたのかは分からないけど、遠足の時まではあった」

「もし学校の外で落としていたら分からないな……」


 最後には見回りの先生が来て「5時だけにゴーホーム」とか言ってくるので、捜索は中止になった。


「ごめんなさい、付き合わせちゃって」


 アーカリウスが謝ると、早乙女が「いーじゃん!」と言った。アーカリウスは、顔を上げた。白く綺麗な顎の線と、薄い色の唇が見えた。その口が意外そうに少し開いていた。


「探し物、見つかるといいね!」

「明日も僕が探そう」

「何言ってるんだ、俺が1番!」

「静かにしろ」

「「ヒィ……」」


 小首を傾げるアーカリウスの後ろで、ポテトは田中に話しかけた。


「機械の扱いが上手な人、知ってる?」

「あ、あっ、あっ、僕の部活にいますよ!」

「ヤ部だっけ」

「いや、あの部活、部室でめっちゃヤブ蚊飼ってて、刺されまくったんですよ、信じられます?」

「信じられる。いいから部活を言え」

「コンピューター部ですよ。そこの友達が……っていうか、延長届け出てるんで、今から来ます?」



× × ×



 パソコン室に入ると、コンピューター部員がチラホラ活動していた。廃部が心配になる人数ではない。みんなモニターに真面目に向き合っている。


「何をしているんだ?」

「今はゲーム制作です。そして! 僕が今からすごい人を紹介しますから!」

「いいから早くしろ」


 田中がポテトを誘導した席には、白みがかった茶色……アッシュブラウンと言うのだろうか、そんな色をしたショートの髪の、女子生徒がいた。


「オオガミ先輩」

「田中君、レイさんで良いって言ってるのに。ん、その人は?」

「初めましてポテトです」

「初めまして。レイ・オオガミ・レイトニアです」


 夏の空みたいな色の目と、野原に咲く花のような笑顔を見ながら、ポテトは「レイトニア?」と記憶を探った。


「ああ、>49で田中がレイトニア・オンラインとか言うゲーム会社を……ってまさか」

「そうです! オオガミ先輩はその社長のご子息なのです!」

「そうなんですか」

「そうなんです」


 彼女はさらっと肯定したが、ポテトの記憶によればレイトニア・オンラインは、世界のゲーム市場のトップカンパニーだ。机の上に出してある筆箱や、中の文房具も高価な物に見える。恐らくはかなりの金持ちのお嬢さんだが、それでも、レイには全く気取った雰囲気が無い。親しみやすいお姉さん、といった印象だった。


「なるほど。それでレイさん、この限界オタクから、あなたが機械の扱いに長けていると聞きまして」

「素人だけどね。壊れた機械修理したり、あと端末のロック解除したり」

「それじゃあ折り入って頼みがあるんだ。これを……」


 ポテトがレイに何か渡した。その後も何事か言っている。田中はそれを聞いて、ポテトさんらしいなぁ……と呆れた。


「お願いしたいです。報酬は……」

「要らない要らない。あ、でも、うーん……じゃあ今度ジュースでも奢ってください!」

「はい、承知しました」


 ポテトにしては珍しく、相手に丁寧に接している|(時々敬語が抜けるが)。田中は2人を見ながら、今後のこの小説の展開について考えていた。

 バーガーやレイトニアは、他の方からアイディアを募集したキャラクターです。こういうところは掲示板の小説ならではって感じがします。

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