なんでも食べ放題だよ
ともかく、マレーヌは今度は兄たちに口をきいてもらい、また王子に会いに行ってみた。
破談にしてもらえるよう、直談判しようと思ったのだ。
「マレーヌ。
君が日参するから、結婚にノリノリだと思われているようだよ」
君自身は乗り気ではないようだけど、と王子は苦笑いする。
すみませんとマレーヌは謝ったが。
引く手あまたな王子様だ。
別に私ごときに断られたところで、痛くもかゆくもあるまいと思っていた。
そもそもこの縁談は、宰相様が進めているもので、王子が望んでのものではないことだし。
……宰相様め。
なんで私に目をつけやがったのでしょうね、とマレーヌは思っていた。
「それにしても、何故、そんなに私との結婚を嫌がるんだい?
王宮にいれば、ほら、君の好きな異国の菓子も食べ放題なのに」
テーブルの上は、王子の妃候補の公爵令嬢が来ているというので、見たこともないような菓子が山積みになっていた。
確かにこれはこれで魅力的なのだが……とむせかえるような甘い香りを嗅ぎながら、マレーヌは思う。
「私は贅沢はあまり好きではないが。
ある程度なら、王宮の中のことも好きにして構わないし。
君が妃になってくれれば、早く相手をとか、うるさく言われなくなって、私も助かる。
それに、君が王妃になれば、君の家も安泰だと思うんだけど」
そんなに私が嫌いなの? と問われ、
「そうではありません」
とマレーヌは答えた。
「王子は聡明な方ですし、学園でも人気者でした。
でも……」
でも? と王子がマレーヌを見る。
「私……他に好きな方がいるのです」
とマレーヌが赤くなると、王子は身を乗り出す。
「へえ、誰なんだい?
相手によっては、協力してやらないこともないよ」
「そうですか? 実は……」
とマレーヌは声を落とした。
なんだかアルベルトが近くで聞いていそうな気がしたからだ。
「宰相様なのです」
王子がいきなり目をそらした。
「いや、それは無理かな」
「王子~っ」
「君が宰相の好みかそうじゃないかは知らないけど。
そもそも、人が勧めたからといって、じゃあ、結婚しましょうとか言うような男ではないからね。
王子の私がなにを言っても、いつもなにも聞いていないし」
いや、どんな宰相ですか……。
「君の好きな相手が宰相だというのなら、協力のしようもないね。
しょうがないから、諦めて私の嫁になるといいよ」
「いやあの、王子こそ、諦めないでください。
私なんかが嫁でいいのですか?」
そうマレーヌは言ったが、王子は、
「いや、私は君で別に構わないよ」
と微笑む。
「え?」
「見た目は好みだし。
年回りも悪くない。
シルヴァーナの妹だから、話も合いそうだ」
「いや、そんなのなら、いっそ、姉と結婚してくださいよ……」
力なくマレーヌが言うと、王子は渋い顔をして言う。
「確かにシルヴァーナも美しく、聡明なのだが。
気が強すぎて、嫁にするには、ちょっと、というか。
そもそも向こうも私に興味なさそうだしね」
と。