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IFストーリー① 4 何気ない日常の中で


楓が戻る前に、食事に合うワインを選んでた。


冷えた白ワインを選んでグラスを持ってリビングに戻る。


コルクを開けて先に飲んでようとグラスに注いでいると楓が戻る。


「早かったな」


そう声をかけると


「魔王の許可が降りるで大人しくしてないと消すと脅してきただけなので。」


楓は、俺には優しいが他の神徒には冷たい。


「消すとは、物騒だな。

もう少し優しくしてやれよ。


まぁ、飲め飲め。

どうせ、暫く動くな言ってる訳だしさ。

今日は、出掛ける気分でも無いし。


気晴らしに旅行でも行くか?

南の島がいいなぁ〜。

常夏で、波の音をBGMに自然を満喫なんて優雅でいいだろ?


最近、オマエと笑って過ごして無いよな。

ぷりぷりしてる事が多くて困る。

俺の心を満たす為に、面白おかしく過ごさせてくれよな。」


そう言って乾杯して腹を満たした。


ソファーに寝転びながら、映画を観て酒を飲みダラダラと過ごす。


時間の無駄遣いと言う贅沢な時間。


あくせくと動いてるより、よっぽどいい。



「そう言えばさ〜。

寝てる間に、夢を見たんだ。

俺じゃ無い俺の夢。

他人事の様に眺めてる夢。


なのに、アレは俺だと分かってるみたいな。

不思議な感覚だったな〜。


オマエの魔薬のせいで、幻想を見てたのか?

それとも前世か何かか?」


夢の話をする俺に楓は少し考えてから


「精神と意識がトリップしたと星夜様は、仰ってましたよね?

前世の記憶の様なものを、覗いたんじゃ無いですかね。


魔力を使い切る手前だった様ですし

あの日、私は唇しか奪ってませんので魔力酔ですかね?


余程の快楽でしたの?」



そう言って笑うのだ。

あの日、俺はされるがままに抱かれたかと思っていたが違うのか。


「凄まじい快楽だったんだけどな〜。

感覚がな。抱かれてないんだ俺。

なんか、包まれてく感覚があったんだけどな。


前世の記憶を覗き見たか…。

アレが本当に俺なら、女を探してるらしい。

めちゃくちゃ狂気的な愛で求めてる女。


けど、俺にしてみたら他人事なんだよな。

前世の俺は、心が弱いんだ。

常に他人を試すような奴。

求められたがりの甘ったれなんだ。


まぁ〜、可愛いけどな。

もしも、見つけるなんて約束した女が

本当に待ってたとしてさ

俺は何が出来るんだろうか?


記憶で見た男の様に愛せない気がするよ。

まぁ〜向こうも前世の記憶なんて無いんだから

関係ないか。」



想いを素直に言葉にした俺に


「そうですね。

前世の記憶は、普通は消えてしまいます。

意識世界の何処かに仕舞い込まれる。


けど、執着や想い残し、無念や憎しみなんかの強い感情は心に刻まれる。


何かしらのえにしは結ばれてるかも知れませんがね。

運命が重なるかは分かりません。


無限の選択肢が広がる世界で、一瞬の関わりを手繰り寄せて重ねるのは自分次第ですかね?


ただの記憶としか認識出来なかった星夜様に

見つけられるとも思いませんけど。


記憶の中の容姿で現れませんからね。


それに、いくら魔王を課せられたとしても

恋愛は自由ですわよ。

ただ、半魔ですからね。

人より少し寿命は長いのですよ。


完全体にならないとは言い切れません。

半永久的に魔王となる可能性も秘めてます。


私としては、覚醒していただいて永遠を共にしたいですが、星夜様にとって牢獄になりかねない。


星夜様次第ですけどね。全ては。」



俺次第か。

ワインを流し込み


「何も分かりたくもねぇな。

星夜として永遠を過ごすのも

色んな人生を繰り返すのも


結局は、無限の繰り返しだろ?

どこの世界も人間は二元論だ。

相反するものの中に居る癖に、一つに決めたがる。


なぁ〜、ずっと魔王だと、新たな魔王は生まれないのか?


俺の前の魔王なんて会ったこともないしな。

死んだら、次が生まれるのか?


影片家に生まれたが、あまり家族と過ごしてないしな。

オマエが、ずっと世話してくれてるし。

オマエが俺の親みたいだよな。


オマエは、ずっと同じ見た目だ。

俺は、楓が大事だよ。

家族の様な気もするし、愛しく思う事もある。

不思議な感覚だよ。


けど、ハッキリ言えるのは

楓を失いたくないよ。

変わらない俺の欲だ。」


そう言って、楓の顔を指で撫でる。

その手を握りながら


「星夜様。酔ってるんですか?

随分と素直ですこと。

完全な魔王になる者は稀です。

完全に覚醒し、闇に溺れず闇に溶けない者。

闇を愛し闇に愛されてこそですからね。


居なかった事も無いのですよ。

新たな魔王に世界を託すと、闇の深淵に消えました。


次元を超えちゃうんですよ。

だから結局は、この世界から離脱するのですよ。


私を失いたくないなら

貴方が、この世界の永遠を手に入れたら?


魔力が回復してなさそうですね。

私を大切だなんて言葉を言うなんて。

弱ってるのですか?


誘ってると受け取っても?」



確かに、今日の俺は弱いのか?

前世の記憶に触れて人格に影響したのか?


どうでもいいか。

俺は今、コイツが欲しい。



「誘ってるが。

オマエが欲しいよ。」


そう囁いて、楓の唇を奪う。

キスだけで快楽に呑まれそうだ。


意識を保つ為に魔力を使ってしまう。

俺の目が赤く光る。


綺麗な顔も綺麗な肌も、何もかも美しい。

愛おしむように、優しく扱う。

全身で感じ、全身で感じて貰うように。



「優しいのですね。

貴方の激しさも欲していいですか?」


吐息混じりの声で言葉を紡ぐ楓の、おねだりに答えるように激しさを増す。


楓を快楽へ導くように。

俺の快楽より楓を俺に溺れさせたかった。

俺への執着を植え付けるように。

何度も何度も絡み合う。


楓が果てるまで。



果てた楓をソファーに寝かせて。

タオルケットを掛けてやる。

スヤスヤ眠る楓のおでこにキスをする。


シャツだけ羽織り

ワインで喉を潤す。


魔力を使ったが、心が満たされたからか調子が良かった。

魔力が減るどころか完全回復してそうだ。


心を満たすと魔力は無限に溢れそうだった。



ワインを飲みながら、床に座る。

俺は、誰かに依存して執着されたいのだろうか?

支配欲なのか。求められたいのか。


星夜である俺の本質なのか。

前世の記憶がそう思うのか。


考えても無駄か。



風呂の浴槽に湯が溜まるまでと

キッチンに行き、タバコに火を付けた。


お湯が溜まると、楓の元に行き優しく起こす。

抱き上げて、浴槽まで連れて行く。


初めて俺が身体を洗ってやった。

くすぐったそうに笑う楓。


普通に楽しんだ。

普通の恋人のように。



そんな日常も有りかも知れない。

穏やかに過ぎる毎日と幸せ。



けれど、俺たちに普通は有り得ない。









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