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IFストーリー① 3 バランサーが現れる時


そろそろ来ると思ってたが突然、自宅に押し掛けて来たからビックリだ。


この世界を均等に保つ為の存在が、バランサーだ。


負のエネルギーを吸うタイミングも、バランサーからの指示があって初めて動く。


今のバランサーは、コードネームK。

この世界じゃ、影なる存在に徹してるらしく名は偽名だし、表舞台に姿を現さない。

どこの家がバランサーなのかも分からない。

まぁ〜、分からない事ばかりだ。

深入りもしない。してはいけない。

馴れ合いは御法度だか、常に冷静に判断してくれるので助かっては居る。


魔の神徒と聖の神徒が、たまに小競り合いをするので、それで世話になる事もあるのだ。


「今日は、珍しくKが直々に自宅に来るとはね。

そんな急ぎ?それとも問題かい?」


部屋に招き入れながら話し掛ける。


「いや、近くまで来たので。

たまには顔を合わせないとね。

自分の目で確かめる事も仕事だよ。」


抜き打ち訪問ってか。

喰えないね〜。


「なるほど。

別に、俺は真面目に俺の仕事をしてますけどね?


たまに、勝手にウチの神徒が暴れる事はあるけどさ〜。

あれはアッチも悪いでしょ〜。

犬猿の仲だから許してね。


それで、エネルギー回収かい?今日やる?」


そう言えば、Kは淡々と


「神徒達の管理も貴方の仕事では?

あまり、煩わされたくありませんね。下らない。

エネルギー回収は、今日中にお願いします。


それと、暫くは夜の街の個人的な魔のエネルギー回収を控えて頂きたい。

こちらが許可するまで傍観してて下さいね。」


表情ひとつ変えない、ほんと冷たく綺麗な顔をしてやがる。

少しくらい笑えばいいのに、勿体無い。


「なんで、夜の街限定なんだ。

また、画策してんのか?

俺たち魔が、また悪者だなぁ〜。

嫌だね。嫌われ者は。


暫くは、夜の帝王さんと遊べないって訳ね。

了解〜。


今日中に、仕事は終わらせますよ。」



俺が、そう言うと「失礼した」と、さっさと帰っていく。

バランサーである者は、人間だ。

俺や聖王の様な半分人間ではない。

けれど、本質を視る眼を持って生まれる。


彼の前では、嘘もまやかしも通用しない。

そして、バランサーは群を伴い画策してるらしい。


全ては、らしい。だ。


「楓〜。

さっさと、仕事終わらせるか〜。

そんで、腑抜けになった俺は2日は自由だよなぁ。ずっとゴロゴロ出来るし最高〜。」


そんな俺を見て楓は


「私が、魔力補給すれば直ぐに元気になるかと」


確かに、それも一理あるが

それもそれで腑抜けになるのに変わりない。


快楽の果ての余韻で夢心地ではあるが、人としての活動は無理だ。


「魔力が回復しても、俺の精神が馬鹿になったら一緒だろ?

楓は、俺の為に甲斐甲斐しく世話してね。

それに、夜の街は暫く出禁にされたし。

他の仕事っていっても神徒達が馬鹿しなきゃ大丈夫でしょ?

最悪は、またKに怒られればいいんでしょ?」



そんな話をしながらゲートを潜る。

魔の世界の次元と、この世界の狭間に向かう。


巨大な魔石に、この世界の負のエネルギーを注ぎ込む。

随分と大量だった。夜の街への出入り禁止の理由が何となく分かる気がする。


特定の誰かを悪役とやらに仕立てたいのかも知れない。

そして、大多数の奴等の不安と恐怖を薄める。


泳がせてる奴が夜の街に出入りするのだろう。

下手に俺と接触されては困るとかね。


いつもより大量で、魔力もかなり持ってかれる。

終わる頃にはフラフラだった。


楓に抱えられながら帰路に着く。


「悪いな。

これでフラフラとか魔王が廃るな。」


苦笑いを浮かべると楓が


「星夜様、御自身の欲望を満たす事に専念して下さい。魔王の魔力を強めるためには星夜様ご自身が、心を満たす事なのですよ。

貴方に我慢は必要ありません。心が求めるままに欲して下さい。

その為の後始末も支援も我等が仕事ですよ。


聖王が精神の解放が神聖力を高めるならば

魔王が心の解放が魔力を高めるのです。」


心の解放ねぇ〜。

深いんだよな〜いちいち。


「心の解放ってなんだ?

欲望を満たす事が心の解放か。

それとも言葉通りじゃねぇ〜のか。

お前らの話は、ふわっとし過ぎだ。

言いたい事は分かるがな。


もぉ〜、思考するのも、ままならない。

喉渇いた。なんか飲ませて…」


部屋に戻り、ベットに寝かされる。

意識が朦朧とする中、唇が重なる感触と共にワインが流し込まれた。


ゴクリと喉を通す。

楓の口から注がれるソレは、魔力を補いながら身体の中を熱くする。


魔力が少しずつ回復されると共に快楽の波のような感覚だけが身体を支配していく。

楓が俺を弄んでいるのだろうが、されるがままだし。快楽の感覚が凄すぎて精神が意識が、どっか別の場所にトリップして訳が分からない。


意識は、永遠にも感じる快楽に堕ちていく。




夢を見た。

夢の中の俺は、全くの別人で

一人の女に執着していた。

狂気にも似た愛をぶつけ、受け入れて貰う。

情けない男。

弱くて儚い不器用な男。




目覚めると、2日経っていた。

夢か幻想かって所だ。



気怠さが残る身体を起こし寝室を出る。

キッチンに向かうと楓がいた。


「おはよ〜。喉がカラカラだ。」


楓は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り手渡してくれる。


「おはようございます。

よく寝られましたね。

2日も起きないと、流石に心配になります。

魔力は完全回復しましたか?」



水を一気に飲み干して


「はぁ〜。なんか気怠い。

魔力ねぇ〜。完全とは言えないかな?

オマエが、口移しで魔力を大量に注ぐから何がなんだかだ。

快楽の波は、普通では味わえない快楽だけどさ

俺としちゃ、反則技っていうかさ、性欲満たした〜って実感もないのよ。

精神の意識のトリップなんて、幻想と一緒だ。

現実的な、欲望を叶えたいね俺は。


って事で、食欲を満たしたい。

なんか作って。」


そう言って、楓の頬に口付けする。


「あら。ご褒美ですか?嬉しいです。

星夜様の好みの物をお作りします。

お待ちください。」


その間、シャワーを浴びてスッキリした。

ラフな格好でキッチンに戻り冷蔵庫から缶ビールを取る。


「リビングで飲んでるわ。

食事もダイニングじゃなくてリビングに持ってきて〜。」


料理をしてる楓に声を掛けリビングに移動する。


テレビの電源を入れて何となく眺める。

缶ビールを飲みつつ、チャンネルを変えていく。


緊急速報が流れる。

ある政治家の秘書が捕まったと。


何をする気だろうねぇ〜。と

俺は無関心だ。


怒りのエネルギーが国を包むかも知れないが

そのエネルギーは、光の力にするんだろう。


その前の負のエネルギーの回復ねぇ。


国が動くか。

関係ないけど。


料理をワゴンで運んでくる楓に向かって


「聖王側が動く。

魔の神徒達は、暫く魔の世界から出すな。

問題を起こされるのも小競り合いも嫌だからな。


俺達も、面倒に巻き込まれたくないし

大人しくしてようぜ。


その内、Kが連絡してくるだろ。

夜の街の出禁も、そろそろ解除されるだろうし。」



そう言う俺に楓は呆れた顔で


「アッチは御膳立てされて、コッチは動きを見て察するとか贔屓じゃないですかね?


だから、他の神徒達が怒るのですよ。」


確かに、こちらに余り情報は来ない。

コッチは、何もしなくても勝手に人間さんが闇を活性化しちゃうからだ。


娯楽は、世の中に溢れてる。

欲望は、勝手に増殖し受け付けなくても広がる。

どちらかと言えば魔が増殖しない様に回収してる程だ。


負のエネルギーを抑える為に、願いを叶え夢を叶える。


慈善活動さながらだ。


この世界には、光を創らなきゃならない。

希望って奴だ。


その為にバランサーは画策し善の御膳立てをする。


聖王側は、人の願いを叶える為には存在していない。


精神性に作用するのだ。

希望を持たせ人は救われると心の安定を齎す存在。


物質世界には干渉などしない。

アッチは悪く言えば幻想なんだ。

分かりやすい幻想。


人間が、その本来の意味を履き違えば毒になり得る。



けれど俺には関係ない。

世界の均衡が整っていれば、それでいい。


「まぁ〜、精神に作用する聖王側の方が大変なんだろ。

コッチは、ある意味で楽チンだしな。

分かりやすいだろ欲望とか。

人間は、心を満たす為に物質に頼る。

本当に満たしてくれるのは見えない物なのにな。

分かりやすく無いからな。

感情が喜んでるのを分かりやすい物の作用だと勘違いしてる事に気付く為には骨が折れるんだろ?」



食事を並べ終わると、楓はゲートの向こうに消えて行く。


直ぐに帰って来るだろうから待つ事にした。








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