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同じ意見

 


 「じゃあ、どうするんだ。

  もう、解散にするのか?」


 分太が、切り出す。


 「あのさ、確認したいことが、あって」


 けど、僕には。

 どうしても、確認したいことがあった。


 「なんだよ」


 「僕が、中断させた、かもしれない、けど。

  皆も、洸希の意見には。

  反対なの?」


 僕が訊くと。


 「せっかく、まとまったのに。

  また、振り出しに戻す、つもりかよ」


 分太が、少し嫌そうに言う。


 「だって、はっきりさせておかないと。

  僕は洸希に、報告しないと、いけないから。

  曖昧なことは、伝えられないでしょ」


 「まぁ、そうかもしれねぇ、けどよ!」


 分太は、意外と。

 すんなり、納得してくれた。


 「たしかに」


 優介が、頷きながら、言ってから。


 「勇大の意見しか、訊いてなかったよね」


 納得したようだ。


 「優介は、どう思う?」


 僕が、改めて訊くと。


 「ごめん。 

  俺も、洸希の気持ちに。

  応えたい想いは、山々なんだけど。


  ちょっと、厳しいかな……。

  洸希には、本当に、悪いんだけど」


 申し訳なさそうに、言う。


 「純粋な洸希の意見を、つぶすつもりは、ないが。

  やっぱり、勇大の言うように。


  仕事に影響、出て。

  職場にも、迷惑かけると、悪いし。

  洸希にも、悪いしなぁ……」


 分太が、僕の意見に、賛成してくれた。


 「オレは……。

  時間の余裕が、ないわけ、ではないが。


  プレゼントしたところで。


  心音さんのお母さんは。

  せっかく作ってくれたからと。

  断ることもできずに。

  受け取ってしまった挙句。


  置き場所に、困ったりして。

  ありがた迷惑に、なってしまうと思う。


  だから、純粋な、洸希の意見は、認めるが。

  採用まで、する気はない。


  でも、洸希のように、純粋な心は。

  皆がいつまでも、もち続けていかないと、いけない、と思うし。

  というか本来、皆が、当たり前のように、もっていたはずなのに。

  いろんな経験するうちに、汚れていった。


  けど、汚れることなく、もち続けていたら。

  また、違う人生。

  いい人生だった、のかもしれないな、とも思う。


  話が逸れたが、とにかく!

  純粋な心をもっている、洸希が。

  羨ましいというか。


  洸希の、提案自体には、賛成だが。

  実現は不可能ってことだ」


 泰樹の意思は、揺るがないようだ。


 「言い方は、違えど。

  皆、同じ意見ってことだね」


 優介が、少し嬉しそうに、言う。


 「あぁ。

  要するに、さっきの勇大の意見は。


  おれ達の意見を、まとめてくれてた、ってことだな!」


 そう言う分太も。

 なぜか、嬉しそうだった。


 「やっぱり、皆も反対ってこと、なんだね。

  じゃあ、そのことを、洸希に伝えるね」


 少し、ショックを受けながら。

 僕が言うと。


 「洸希。 ショック受けたり、しないかな?

  提案したこと、後悔しないかな」


 僕が、しょげているのを、察してか。

 優介が、心配している。


 「それは、大丈夫だと思うよ。


  洸希自身も、提案するときに。

  皆さん、忙しいでしょうから。

  反対されるかもしれないって。

  言っていて。


  そのつもりで、提案したみたいだから。


  それに、洸希は、強いから。

  そこは、心配しなくて、大丈夫だと、思うよ!」


 僕が言うと。


 「そっか。 そうだよね!

  なら、よかった」


 優介は、安心したようだ。



 「じゃあ、そういうことで。

  洸希には、約束もしているし。

  僕から、報告しておくね」


 「おう!」


 分太が、元気よく返事して。


 「分かった」


 泰樹が言うと。


 「よろしくね」


 優介が言った。


 「じゃあ、あと。

  話しておくこと、あるか?


  どうせなら、会ってしか話せない。

  メールだと、長文になるような、こと。


  話してぇよな!」


 分太が、再び。

 張り切って、仕切ってくれて。


 「だれか、なにかある?」


 僕も、分太につられて、訊くが。


 誰も、なにも言わず。


 沈黙のままだった。




 「ごめん。

  さっき、偉そうなこと、言ったけど。

  やっぱり、名案が思いつかない」


 沈黙のままじゃ、ダメだと、思ったのか。

 優介が、残念そうに言う。


 「同じく……」


 そして、優介に、便乗して。

 泰樹も言う。


 なんだ、皆も、一緒なのか!


 なぜか、少し、安心した自分がいた。




 「じゃあ、今度こそ。

  解散だな!」


 分太が切り出す。


 「そうだね」


 優介が賛成して。


 僕らは、解散することにした。




 「じゃあ、また。

  連絡するね!」


 去って行く、皆の背中に向かって。

 僕が、言うと。


 「おう!」


 「待ってるね」


 分太と優介が、振り向いてから。

 返事をしてくれた。


 続いて、2人と同じく。

 振り向いていた、泰樹が。


 「洸希への報告。

  頼んだぞ」


 なぜか、少し照れくさそうに、言う。


 「任せて!」



 そして、僕は。

 3人を見送り……かけて。


 確認しそびれたことを、思い出す。


 「あっ。 待って!」


 大声で、3人を慌てて、呼び止めてから。

 3人が、立ち止まり。

 再び、振り向いたのを、確認しながら。


 早歩きで、坂道を下り。

 3人のもとに、駆けて行くが。

 転がり落ちそうになった。


 マズイ!

 制限できない!



 このまま、転がり落ちたら。

 どうなるのかな……。

 大けが、するのだろうか?


 そんなことを、考えて。 冷静になろうとして。

 むりやり、恐怖心を、消そうとしていると。



 3人の横を、通り過ぎた直後。


 誰かに、後ろから、手を掴まれる。

 

 きっと、3人のうちの、誰かだろう。 



 僕は、予想外の、出来事が起き。

 自分で、スピードを、制限できなかったことが。

 恥ずかしすぎて。 俯いてから。


 そんな気持ちを、隠すように。 

 

 「ごめん、ごめん。 ありがとう」


 そうやって。

 笑いながら、言うと。


 「どうした?」


 泰樹が、心配そうに。

 僕の顔を、覗き込みながら、言う。


 そして、顔を上げると。

 優介と分太も、心配そうな顔をしていた。


 「ちゃんと、待つから。

  焦らなくて、いいんだよ」


 やさしく、優介が言った後に。


 「そうだぞ!

  転んで、けがしたら。

  どうすんだ。


  ただでさえ、この坂は。

  きついん、だからさ」


  分太も、続けて言う。


 「ありがとう」


 「気をつけろよ!」


 「うん!」


 「それで、どうしたの?」


 分太と優介に、言われてから。

 本題を、思い出す。


 「あっ。 そうだ。

  秀寿さんへの報告は。

  誰がするのかな……?

  と思って」


 「そんなの、オレがするから。

  勇大は、気にしなくて、いいから」


 泰樹が、当然のように言う。


 「あっ。 そうなんだ。

  ごめん。

  でも、気になって、つい……」


 「勇大に、2人分の報告。

  させるわけに、いかないだろ。

  仕事もあって、暇じゃねぇ、だろうし」


 そしてまた、照れくさそうに。

 泰樹が言う。


 「分かった。

  じゃあ、泰樹も、よろしくね!」


 ここは、泰樹の想いに、甘えることにした。


 「あぁ」




 それから。

 泰樹は、方向が違うらしく。

 バスで帰る、とのことで。


 泰樹と、別れてから。


 泰樹、以外の3人で。

 いつも、利用する駅に、行った。


 けど、3人とも。

 乗る電車も、ホームも。

 バラバラだったので。

 駅に着いたら、僕らも、別れた。


 

 そして。

 “今日は、洸希がいないんだ”。

 そう、心の中で、自分に言い聞かせてから。


 間違えないように。

 自宅の、最寄り駅のみの、切符を買う。


 

 前回、1人で集合したときは。

 たしか、警察署に行ったとき、だったから。


 1人での帰宅を、まったく、意識していなかった、けど。


 今回は、来る時、同様。

 1人なんだ、と実感して。

 一気に、淋しさが、押し寄せてくる。



 あぁ……。 

 洸希は今頃、なにをしている、だろうか?

 勉強だろうな。 分からない問題、ないかな?

 大丈夫かな?


 「はぁ。 淋しいなぁ……」


 ふと、呟いたら。


 なんだか。

 足が重いのに、気づいた。


 なんで、こんなに。

 重いんだろう?


 いや。

 重いというより。

 なんだか、力が抜けたようで。


 足を動かしているのに。

 動かしていないような。

 不思議な感覚になった。


 それは、洸希がいないことへの、淋しさと。

 なにか、関係があるのだろうか?



 いつもなら。

 プチ勉強会をする、ホームも。


 洸希がいない今日は。

 立ち入ることもない。


 いつものホームを、遠目に見ると。

 洸希がいない、というのは。

 やはり、物足りなく感じる。



 そして、いつもなら。

 洸希を送るために、乗る電車を。


 今回は、見送るだけ。

 という事実に。

 再び、淋しさが、押し寄せて。


 今日は、いつもと、違うんだ。


 改めて、そう、思い知らされる。

 


 いつもと、違う。

 その思いは、帰宅するまで。

 良くも、悪くも。

 胸の中に、残り続けていた。




 そして、帰宅してから。


 いつも、洸希のいない場所、になったからか。


 “洸希への報告、ちゃんとしないとな!”


 改めて、そう、思い直す。


 帰宅後は、淋しさより。

 その思いで、いっぱいに、なっていたのだ。




 そして、とりあえず。

 昼ご飯を食べた。



 

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