泰樹の思い
金曜日。
結局、今日まで。
泰樹からの、メールは、送られてこなかった。
そして、昼休憩になり。
携帯電話を見ると。
ようやく、一斉送信で。
泰樹から、メールが、届いていたので。
さっそく、確認する。
『勇大と、ケンカした日から。
今日までずっと、考えてた。
心音さんのため、と思って、したことでも。
結局、自己満足に、なってしまうから。
なにも、力になれることは、ない。
それが、分かっているのに。
なにをするべきか、話し合う会議に。
参加する意味、あるのかな、って。
いや、無いだろ。
だから、参加するべき、じゃない。
そう、自分に言い聞かせて。
納得したはず……だったんだけど。
なんか、心に引っかかる、モノがあって。
後ろめたさがあって。
このままじゃ、いけない気がした、っていうか。
参加しないことで。
心音さんを見捨てる、というか。
言わば、恩返しする手段を。
話し合うため、のような会議、なのに。
それを、拒絶することで。
恩返しすること自体に。
反対しているみたいに、なるのかもしれないし。
俺だけ、恩返し出来ない、気もして。
そう思ったら。
参加しないのも、失礼っていうか。
悪い気がして。 後悔もしそうで。
すんなり、不参加でって、言えなかった。
そのせいで。
皆には、日時が決まらず。
モヤモヤ、させてしまった、けど。
心音さんに、なにもして、あげられない、自分と。
なにをしても、無駄だと、諦めてしまっている、自分に。
イライラしてしまって。
やるせない思いで、いっぱいになって。
なにも、返信できずに。
気づけば、金曜日になっていた。
それからこれは、完全に。
皆には、関係ない話、なんだが。
プライベートでも。 少し、嫌なことがあって。
なにもかもが、嫌になって。
せっかく、相談できる、仲間が出来た、と思ったのに。
そんな、ありがたい存在の、皆を。
自分で、阻止してしまって。
自ら、相談しづらい状況に、してしまって。
頭の中を、いろんな感情が、飛び交って。
モヤモヤ、イライラして。
頭の中が、ごちゃごちゃ、してしまって。
全然、整理つかなくて。 考えが、まとまらず。
皆に、なんて返信したら、いいのかも。
分からなかったから。
なかなか、返信できなかった。
そのせいで、皆も、不安にさせてしまって。
申し訳ない。
けど、金曜日が、タイムリミットだと。
自分の中で、決めていたから。
今日、思い切って、返信してみた。
それなのに。
皆が気になっていた、であろう。
肝心の、出欠より。
俺の思いが、先立ってしまって、悪いが。
結局。 要するに。
……参加、するから。
この、モヤモヤを、晴らすためにも。
参加せず、心音さんのことを考えないのは。
心音さんを、避けているみたいで。
なんだか、嫌だし。 失礼かな、とも思うし。
遅くなった、にも関わらず。
希望を言うのは、図々しい、かもしれないが。
俺は、日曜日を、希望したい。』
なかなかの、長文に。
僕が、驚いていると。
優介から、返信がきた。
『泰樹も、葛藤していたんだね。
誰にも相談できずに、辛かったよね。
気にせず、相談してくれても、よかったんだけど。
やっぱり、気になるよね。 切り出しづらいよね。
日時の希望は。
その人、それぞれの、都合によるから。
そこは、気にしなくて、大丈夫だよ。
それより、連絡してくれて、ありがとう!
泰樹の返信を、待っていたから、嬉しいよ。』
優介が、日時の調節を、してくれていたこともあり。
話を丸く収めて、まとめてくれた。
そして、僕が確認した、直後に。
泰樹が、返信していた。
『ありがとな! 優介』
ブーブーブー。
携帯電話を。
しばらく、眺めていると。
バイブ音が、鳴って。
手の中に、振動が伝わる。
なんだろう?
確認したら。
泰樹から、電話が、かかってきている。
僕は慌てて。
職員用の、男子トイレに、駆け込んで。
切れる前に、急いで。
電話に出る。
『もしもし』
『悪いな、急にかけて。
今、時間あるか?』
『うん。 大丈夫』
『メールでも、よかったが。
やっぱり、直接、言いたくてさ』
『そう……なんだね』
なにを言われるのか、と思うと。
怖気づいてしまい。
つっかえたように、言ってしまったが。
怖がってばかりも、いられないよな……。
『さっきも、言ったが。
前に、優介が言ったように。
俺が、心音さんのために。
してあげられること、について。
暇さえあれば、ずっと、考えていたが。
やっぱり、考えは変わらず。
してあげられることは。
なにもないと思う。
けど、俺だって。
なにかあるなら、すぐにでも。
してあげたいとは、思うから。
勇大の気持ちも、分からないわけでは、ないんだ。
ただ、あのときは。
心音さんに。
なにも、してあげられないと。
自分で、勝手に決めつけて。
そんな自分に、苛立っていた。
けど、勇大は、俺がムリだ、と思うことでも。
諦めずに、まだ、可能性を信じているから。
羨ましかったのかもしれないな。
俺が失ったものを、勇大は、持っている気がしてさ。
それに、俺が既に、諦めてしまったことを。
まだ、諦めていない勇大が、眩しくて。
本来、自分も、そうあるべき、なのに。
汚れてしまった自分を、認めたくなくて。
ムリだと、諦めて。
押し付けてしまっていた、のかもしれない。
いろんな意見が、あっていいはず、なのにな。
心底、自分が、嫌になる。
勇大たちは、明るいほう、なのに。
暗いほうのヤツらに。
引きずり込まれそうに、なっていたんだと思う。
ごめん。
プライベートは、プライベートでも。
ちゃんと、区別しないと、いけないのに。
混ざりかけてた。 本当に、ごめん』
『明るいほうと、暗いほうって。
なんのこと?
意味が、分からないんだけど』
『まぁ、そこは、分からなくていいから。
気にするな。 とにかく!
さっきも言ったが。
今回は、参加するから』
僕も、今日まで、待たずに。
泰樹に、謝れば、よかったのに。
勝手に、自分は、悪くないと。
思い込んでいた、ような気がする。
悪いのは、僕も同じなのに。
ケンカをした場合。
大抵、双方に。
悪い点があるモノ、なのに。
それが、分かっているようで。
分かっていなかったんだな。
泰樹も、自分の意見を述べた、だけで。
悪くないのに。
ただ、僕の意見と、噛み合わなくて。
対立してしまっただけ、なのに。
泰樹は、今日まで。
連絡できなかったことを、認めて。
ちゃんと、僕に、謝罪できている。
それに比べて、僕は。
謝るどころか、自分の悪いところさえ、認められず。
ただ、泰樹の連絡を。
待っていただけ、なんて。
卑怯だな。
心の中で、反省してから。
泰樹との、やりとりを、続けた。
『たいき。 ごめんね。
僕も、言い過ぎた、と思う。
やっぱり僕は、自分の意志を。
相手に、押し付けすぎてしまう、のかもしれない。
それに、本当なら。
もっと早くに。
謝らなければ、いけなかったのに。
泰樹に、先に謝らせて。
僕のほうこそ。
今日まで、謝るどころか。
連絡さえ、しなくて。
ごめんなさい』
『いいってことよ!
じゃあ、お相子ってことだな。
お互い、悪くて。
お互い、良い、ってやつだな!
そういえば。
気になっていたことが、あるんだが。
そもそも、“してあげる” っていう。
言い方、自体。
間違っている、というか。
相応しくない、気がするんだよな……。
だって、“して当然”、だもんな!
それと、反省しているよう、だが。
微量でも。
なにか、出来るはず、と。
諦めずに、思えるお前は。
すごいんだから。
あまり、自分を、責めるなよ。
自分の意志を。
押し付けたのは、俺も同じだし。
誰かに対する想いが。
人一倍、強いのがお前、なんだから。
それでこそ、勇大なんだから。
自分を否定するなよ。
勇大の、熱い想いは。
勇大にしか、出せないんだからな』
『泰樹、ありがとう。
おかげで、前向きになれたよ。
これで、午後からの仕事も。
頑張れそうだよ!
またね』
『おぅ! またな』
こうして、電話を切った。
それから、まるで。
僕らの、やりとりが、終わるのを。
待っていたか、のように。
優介から、一斉送信にて。
メールが届いた。
『それじゃあ。
今度の日曜日の。
10時に。
いつもの公園に、集合でいいかな?
参加する人で。
都合が、悪ければ。
個人的でも、いいから。
メールください。』
さっそく、返信する。
『了解!』
すると、分太と、泰樹も。
返信していた。
『オッケー!』
『それで、大丈夫。』
これで、ようやく。
次回の会議の。
日時が、決まったようだ。




