文字から伝わる感情
翌日。
昼休憩になり。
焦燥感に駆られて。
皆に、一斉送信メールを送る。
『皆。 さっそく、なんだけど。
次はいつ、集まれそう?』
そしてすぐに。
分太から、返信がくる。
『は? お前、なに言ってんだ?
昨日、会ったばかりだぞ。
それともあれは。
おれの夢なのか?』
それに僕が返信する。
『もちろん、現実だけど。
また、集まりたいな、と思って』
次は、泰樹から返信がくる。
『なにか、あったのか?
たとえば、心音さんのお母さんから。
連絡あったとか。』
今度は、泰樹の文に、返信する。
『いや。 なにもない。
昨日は、皆と会ったあと。
いつも通り。
こうきと一緒に、帰っただけ。
そのあと、心音さんのお母さんから。
連絡もきていない。』
それからしばらく。
皆が一斉送信メールにて。
僕の意見に、誰かしらが。
返信するという、やりとりが続いた。
泰樹から、返信がくる。
『じゃあ、どうしたんだよ!』
そして続けて、優介からも。
メールが届く。
『勇大。
もしかして、焦ってる?』
『心音さんに、なにか、してあげないと。
早く皆で、考えまとめて。
行動に移さないと。
早くしないと。
急がないと……。
心音さんが。
どこか遠くに、いってしまいそうな、気がして。
怖いんだよ!
なにもして、あげられないまま。
恩返しができないまま。
取り返しのつかないことになったら。
どうしよう! って。
このままだと、一生、後悔する気がして。
居ても立っても居られないんだよ!』
僕がこの、焦る気持ちを。
素直に、皆に送ると。
優介から、返信がきた。
『気持ちは、分かるけど。
皆、予定があるだろうし……。
勇大も、暇じゃないでしょ。』
『でも、僕は……。 僕は!』
気持ちは焦るのに。
具体的に、心音さんに。
なにをしてあげたらいいかは、分からなかった。
でもとにかく、集合して。
会議して。
皆で、案を出し合うことで。
なにか、名案が出たり。
少しでも、心音さんの力になれることが、あるかもしれない。
そう思ったら、じっとしていられないのだ。
それでつい、言葉にならない文字を送ってしまっていた。
メールでのやりとりは、文字でしか、伝えられないのに。
これがもし、電話でのやりとりなら。
沈黙ともいえるような、心の声のような文字まで。
思わず。 打って、送信してしまった。
送信したあとで。 そのことに気づいたが。
もう、送信したあとに気づいても、遅い。
そして、分太から、返信がきた。
『分かった。 そんなに言うなら。
近々、会おうぜ!
そのかわり。
皆が、そろうかは、分からねぇけどな。
そこは、理解しろよ!』
『分かった。』
僕が返信して。
またすぐに、分太から、返信がきた。
『それで、いつにするんだ?
今週末か?』
『できれば。
それが、ありがたい』
僕が返信すると。
『なら、決まりだな!
都合、わりぃやついるか?』
今回もまた、分太が仕切ってくれた。
なんとか、分太のおかげで。
話が、丸く収まりかけたとき。
泰樹から、返信がきた。
都合が悪いのかな、と思いながら。
メールを確認すると。
『俺は、集まっても、意味ないと思う。』
意外な内容だった。
その文に、すかさず。
分太が返信していた。
『は?
お前、せっかく、まとまってきたのに。
なに言いだすんだよ!』
対して、泰樹も負けじと、返信している。
『この場は。 皆には。
言いたいこと、言い合っていいんだろ。
だったら、俺も。
遠慮しなくて、いいだろ。』
そして、分太が、返信していた。
『まぁ、そりゃそうだけど』
次は、優介からの返信があった。
『なんで、そう思うの?』
続いて、泰樹の返信が届く。
『俺たちに、やれることは、ねぇから。
医者いがい、病人にしてやれることは、ねぇから。』
優介が、それに、返信している。
『それ言ったら、なにも、言い返せないよ』
やはり、文字だけの。
周りから見たら、静かなやりとりなのに。
この、優介の送った文からは。
しょげている感じが、伝わってきた。
『だから、そんなことないって。
医者いがいでも、出来ること、あるよね!』
やはり、どうしても。
諦めきれない思いを、僕が送ると。
『あるとしたら、家族だろ!
部外者の俺たちが、出来ることなんてない。』
泰樹から、すぐに、返信がきたが。
その文からは。
イライラしている感じが、伝わってきた。
そして、分太から、返信がきたが。
『部外者?
お前、そんなこと思ってたのか!』
分太も同じく、怒っているみたいだ。
泰樹から、返信がくる。
『思ってないけど。
家族からしたら、そうでしょ。
他人なんだから。
それに結局。 勇大の言うように。
心音さんのために、なにかしてあげた、としても。
俺たちの、自己満足でしかない。
家族からしたら、ありがた迷惑かもしれねぇだろ。
見舞いだって、行くの、躊躇してんのに。
なんで、なにか出来ると、思うんだよ!』
たしかに、泰樹の言う通りかもしれない。
でも、どうしても、諦めたくないんだ!
『でも、あきらめたくない!
絶対に、微量でも。
なにか、出来ることは、あるはず!』
素直な気持ちを、そのまま送ると。
『だから、無いって!』
泰樹もまた、譲れないようだ。
ハァッハァッハァッ……。
メールでの、やりとりなのに。
まるで、言い合っているかのように。
白熱してしまい。 無意識のうちに。
息が上がっていることに、気づく。
「先生! 大丈夫ですか?」
そんな僕を心配して。
横にいた、先生が。
僕の顔を、覗き込んできた。
「あっ。 すみません。
……大丈夫です」
やっとの思いで、答えた。
「なら、よかったです」
心配していた先生も、安心したようだ。
そして、一呼吸おいてから。
再度、一斉送信メールに、目を通して。
泰樹とのやりとりを、見返して。
心音さんへの想いが、溢れすぎて。
とうとう、泰樹とも。
ケンカしてしまったと、反省していると。
優介から、返信がきた。
『一旦、落ち着いて。
メールとはいえ、ケンカしたら。
2人とも、午後からのことに。
影響が出るでしょ。
とにかく。 ここは、一旦、落ち着いて。
深呼吸して。
週末まで、それぞれが。
それぞれの案を、考えることにしよう。
会う日時については。
あした以降。
内容は抜きにして。
また、やりとりする、として。
今日はもう、休憩も終わるだろうし。
これくらいに、しておこう!
皆。
仕事と、プライベートの区切りを、つけるために。
仕事に戻る前に。
一旦、深呼吸してね!
特に、勇大と泰樹はね!
じゃあ、また明日!
返信不要。』
さすがの、優介が。
僕らのケンカを止める、と同時に。
締めくくってくれた。
僕は、そんな優介に感謝しつつ。
予鈴を聞いてから。
授業に向かうのであった。




