心音さんのために
僕が、しばらく。
泰樹を見つめていると。
「本題は終わったが、どうする?」
分太が切り出したので。
僕は目線を、泰樹から分太に。
切り替えてから。
「それなら、心音さんのことについて。
話さない?
このメンバーでしか、話せないことだし。
せっかく今日は、皆が揃っているし」
そう提案した。
「いいけど。 心音さんの何について。
話すんだよ」
分太に、訊かれたので。
「心音さんに、なにか。
してあげられることって。
ないかなと思って。
微量でも、なにかある気がして。
というか、作らないといけないとも。
思うんだよね」
僕が答えると。
「なにかって、なんだよ!」
分太が、少し怒りながら言う。
「だから、それを話し合いたいんだよ!」
僕も。 なんで、理解してくれないんだよ。
という思いを。 つい、分太にぶつけてしまう。
そしてまた、ケンカが始まってしまう。
「それならそうと、初めから。
はっきり言えばいいだろ。
お前の言い方は、いちいち。
回りくどいんだよ!」
分太に言い返される。
「僕は……!」
即座に言い返そうとしたけど。
この思いをどう、言葉にしたらいいのか。
分からず。 言葉に詰まる。
「……なんて言ったらいいのか。
分からないんだけど。
皆と僕は、違う意見なのに。
皆を、僕の意見に合わさせたら。
悪いなと思った、っていうか。
自分でも、よく言い表せないんだけど。
とにかく!
少しためらっただけ、なのに。
なんで、それが分からないんだよ!」
「お前。 まだ、そんなこと、言ってたのか。
言っただろ! なんでも言えって。
それに、分かるわけないだろ!
人が考えてることなんか。
本人が、想い、伝えねぇ以上。
相手に想いが伝わることなんて、ねぇんだよ!」
「でも僕は!
発する言葉に、気をつけなきゃいけないんだよ。
職業柄、発言に気をつけないと。
今の時代。 すぐに、問題になってしまうんだよ」
感情が高ぶって。
つい、分太に関係ないことを、ぶつけてしまう。
「それは、仕事場でのことだろ。
言っただろ。 ここは、プライベートの場だって」
分太が、冷静に言うが。
「それ言ったの、オレなんだけど……」
泰樹が、さりげなく、つっこんでいた。
そして、そのつっこみが、面白かったのか。
洸希と秀寿さんが、笑っていた。
コホンッ!
分太が咳ばらいをしてから。
「……とにかく!
おれたちの前では。
発言なんて、気にするな!」
少しためらいながらも。
話を続けた。
「でも。 急には、無理だよ」
こういう場合、大抵は。
感謝するべきなんだろうけど。
相手が、分太だからか。
素直に、お礼を言えない自分がいた。
「まぁ。 お前のペースでいいが。
遠慮は、すんなよ!
おれが。 いや、おれたちが!
受け止めてやんからさ」
「ありがとう!」
こういうときも。
分太のほうを見て。
お礼を言うべきなんだろうけど。
やはり、素直になれずに。
分太以外の皆のほうを見て。
お礼を言った。
「仲直りできたみたいで、よかったな!」
お礼を言う僕に。
泰樹が、声をかけてくれた。
泰樹の言葉で。 いつの間にか。
分太と仲直りできていることに。
気づいた。
「それで、お前の言った、本題だが。
お前は、なにをするつもりなんだ?
言い出したやつが。
1番に、答えろよな!」
分太が話を戻すが。
“なにをするかについて。”
僕が、訊きたいのに。
相変わらず。
そのことが、伝わっていないのは。
納得いかないし。
分太の言い回しには。
やはり、気になる部分があったが。
ここは、ぐっと我慢して。
また、ケンカが始まらないように。
指摘しないで。
そのまま、スルーすることにして。
「お見舞いに行くことしか。
思いつかないんだけど。
皆は、どう思う?」
唯一、思いつくことを。
皆に、訊いてみた。
「たしかに、それでもいい、と思うけど。
頻繁だと、迷惑になるよね。
最初のうちは。
心音さんのためだから、と思って。
心音さんの、お母さん自身も。
来てほしかった、としても。
頻繁となると。
それだけ、来客応対も、しないといけないから。
迷惑になってくると思うし。
よさそうだけど。 難しいよね」
優介が、僕の意見に、共感しつつ。
自分の意見も言ってくれた。
「たしかに、そうだよね。」
そんな優介に。
僕も、共感すると。
「それはおれも、考えたが。
見舞いがダメとなると。
想い、伝えるために。 勇大を介して。
連絡しようかとも、思ったが。
心音さんのお母さんも。
暇じゃねぇだろうから。
それも、迷惑になるだけ、だろうしな!」
続いて、分太が意見を述べた。
「そうだよね。
じゃあ、他になにか……」
僕が、他の案を考えていると。
「医者でもない、オレたちが。
出来ることなんて、ないと思うぞ!」
泰樹がとどめを刺す。
「でも……。
諦めきれないよ。
だって、僕らは。 心音さんに。
せっかく助けてもらったのに。
僕らは、心音さんに。
なにもしてあげられない、なんて。
不公平だよ。
だから、なんとしてでも。
なにか、心音さんの力になれないかな?
って思うんだよ」
ダメだ。 僕の、素直な想いを伝えたけど。
このままじゃ、今度は。
泰樹とも、ケンカしてしまうかもしれない。
「でも。 なにをしたって。
迷惑になってしまうなら。
オレたちに出来ることなんて。
ないんじゃないのか?」
泰樹も、やはり。
譲れないようだ。
「勇大の気持ちも分かるけど。
泰樹の言うように。
迷惑にも、なりかねないし。
こういうときは。
やっぱり、慎重にならないと、だよね」
優介が、僕と泰樹。
双方の意見に。
共感してくれた。
「ただ、我らが出来ること、と言えば。
彼女の回復を祈ることくらい、じゃろうかのぉ」
そして、秀寿さんが。
呟くように言う。
優介と、秀寿さんのおかげで。
僕と泰樹は、ケンカせずにすんだけど。
「でも。
もっと、心音さんのために出来ることが。
あると思ったのになぁ……」
そう、呟いて。
僕が、しょげていると。
「やっぱり。
直接、治療もできない。 素人のオレたちに。
出来ること、なんて。 ……ないんだよ」
泰樹が、改めて言う。
この泰樹の一言で。
皆が、ごもっともだ。
と言わんばかりに。
一斉に、黙り込む。
「とりあえず。
このことは。
今後、じっくり、考えていくとして。
お昼も近いし。
今日はもう、解散にしない?
泰樹も、開封するのに。 疲れただろうし」
優介が、公園の時計を見てから、言う。
「そうだね」
僕が言うと。
優介が、僕を見ながら、頷いてから。
「異論ある人、いますか?」
久しぶりの敬語で。
僕以外の皆に、訊いた。
「異論なし!」
分太が、心なしか。
嬉しそうに、答えて。
「僕も、同意見です!」
洸希が、キリッと、答えてから。
「もちろん、賛成っす!
ありがとな。 優介」
泰樹が優介に、お礼を言っていた。
「賛成じゃ」
そして。
秀寿さんが、ボソッと言った。
「じゃあ、解散!」
そして今回は。
優介が、締めくくってくれた。




