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4回目の会議にて

 


 僕と同じことを思ったのか。


 皆が、読み終えたはずなのに。



 優介に、声をかけようとする人は、誰もいなかった。


 かなり、疲れているんだろうなぁ……。

 休ませるために。 このまま、起こさず。 

 眠らせておいたほうが、いいのかもしれないな。


 皆も、そう思っているのかは、分からないが。

 僕と同じように、声をかけるのを。

 ためらっているように、見えた。


 そして、そのことを、証明するように。

 皆が、優介を見つめたまま。

 心配そうな表情をしていた。


 優介は、もしかして、日頃は。

 仕事から、帰ってからも。


 家に仕事を、持ち帰って。

 引き続き、家で。

 仕事をしていたり、するんだろうか?


 叔父さんが言うように。

 優介は、僕らにも。

 自分のことは。 ほとんど、話してくれないから。

 分からないな……。


 そんなことを考えながら。

 僕も、優介を観察していると。


 初めのほうは、ウトウトしていたが。


 一気に、前のめりになって。 

 ベンチから、落ちそうになる。


 そこへ、慌てて。

 勢いよく、分太が、駆けつけて。


 地面に倒れてしまう前に。

 受け止めていた。


 そして、受け止められたことに、驚いて。

 優介が、目を覚ましていた。


 その様子も。 もちろん、僕らは。

 一部始終、見ていた。


 「あいつ。 大丈夫か?

  意外と、運動神経、ないのかな」


 泰樹が、笑いながら言うが。


 僕には、かなり疲れているからこそ。

 そうなってしまったように、思えた。



 そして、優介と分太が。

 僕なら、照れてしまいそうな、近距離で。

 なにかを話していたが。


 僕らと2人の間に。

 少し距離があり。

 内容までは、分からなかった。


 それから、さらに。

 2人の様子を見ていると。


 やはり、近距離だということに、照れたのか。


 分太が、慌てて。

 優介をベンチのほうに。

 勢いよく、押し返していた。


 そして、優介を、ベンチに置き去りにしたまま。


 分太は、僕らのほうに。

 スタスタと、歩いて来ていた。


 分太と会話している間、ずっと。 

 優介は、寝起きだからか。

 キョトンとした、表情をしていた。


 それから。

 分太が僕らと、合流したときくらいに。


 優介も、ベンチで背伸びをしてから。

 立ち上がって。 こちらに、歩いて来ていた。


 「皆。 もう、読み終えたの?」


 僕らのところに。

 合流して来た、優介が。


 ずっと。

 優介を目で追っていた僕に。

 訊いているようだった。


 「うん。 おそらく皆も、読み終えたと思うよ!」


 「そうなんだ」


 「大丈夫? 疲れてるんじゃない」


 僕が訊くと。


 「ん? どうして? 大丈夫だよ」


 不思議そうに、優介が答える。


 「ならいいけど」


 「無理するなよ!」


 僕が言った直後に。

 分太が言う。


 「分太は、そればっかりだね」


 優介が、笑いながら言うと。


 「当たり前だろ!」


 分太が、少し怒りながら言う。


 「ありがとうね」


 対して、優介は。

 寂しそうに、微笑みながら言う。


 なんだか、このやりとりは。

 気になったけど。


 深く聞いてはいけない。 そんな気がした。


 「それで、どうだった?

  叔父のメモの内容に。

  失礼はなかった?

  たとえば、皆を疑っていたり、してない?」


 優介が訊いてきた。


 本当に、中身を見ていないんだな。


 「気になるのは、分かるが。

  内容、聞いたら。


  わざわざ、メモ用紙に。

  書いてもらった意味がねぇだろ!」


 たしかに、分太の言う通りである。


 「そうだよね。 ごめんね。


  実は。

  叔父から、メモを書く前に。 

  俺と皆の、関係について。

  訊かれたから。


  もしかしたら。

  まだ、怪しまれているのかもしれないなと。

  思ったんだけど。 考えすぎだよね!」


 優介が言うと。


 「因みに、なんて答えたんだ?」


 泰樹が訊く。


 「警察官に聞いた通りだよ、って答えた。 

  皆が、警察官に既に、説明しているだろうから。

  皆と一致していないと、悪いなと思って。


  でも、祖父のことについて。

  問いつめられた。


  本当は、死んでいないのに。

  警察官からの説明では。

  死んでいると言われたんだぞ!

  おかしいだろって。


  それに、俺が。

  皆に騙されているんじゃないかって。


  もちろん、否定してから。

  その場は、なんとか、ごまかしたけど。


  反応からして。

  納得した感じ、ではなかったから。


  もしかして、メモを介して。

  皆にも、問いつめたりしてないかな、と思って。

  気になったんだよね」


 対して、優介が答える。


 「ごめん。

  それ、完全にオレのせいだわ。

  設定、考えたのは、オレだし」


 そして、泰樹が謝る。


 「いや。

  泰樹を責めようと思って。

  訊いたわけじゃなくて。


  もしもまだ、叔父の誤解が。

  解けていないんだとしたら。


  新たに、誤解の解き方を。

  考えないといけないな、と思って」


 優介が少し焦りながら、言う。


 「詳しくは言えないが。

  メモの内容からして。

  誤解は、解けていると思うぞ」


 「本当に? なら、よかった!」


 泰樹の一言で、優介が安心したようだ。


 「でももし、帰ったあとで。

  直接、叔父さんから。

  更に、問いつめられたりしたら。


  そのときは、すぐに。

  オレに言ってくれ。


  あのときは、急いでいたとはいえ。

  生きている人を、死なせた設定なんて。

  失礼すぎる。


  だから、この件について、手伝うことで。

  せめてもの、罪滅つみほろぼしをさせてくれ」


 泰樹が決心する。


 でも、泰樹のおかげで、僕らは……!


 「でも、泰樹のおかげで。

  僕らの無実が証明されたんだから。

  そんなに、自分を責めないでよ!」


 ほとばしる思いが、言葉となって。

 気づけば、僕は、怒鳴っていた。



 対して、泰樹は。

 しばらく、驚いていたが。


 「ありがとな!」


 そう言ってから。

 歯を見せて、笑った。


 そんな、泰樹の表情を見た瞬間。

 僕は、少しだけ、胸が動くのを、感じた。


 なんとも言えない気持ち、になったのだ。


 でも、悪い気はしなかった。

 むしろ、嬉しい気持ちに、近かった。


 この気持ちは、なんなのだろう?


 同性を見て。 こんな気持ちになったのは、初めてだ。


 そして、そんな泰樹が。 眩しくも見えた。


 これは、心を掴まれた……ということ、なのだろうか?


 

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