プチ勉強会
日曜日。
6人で、集合する日が、やってきた。
皆と再会できることが、嬉しすぎて。
今日まで、あっという間だった気がする。
僕は、まず。
いつものように。
洸希を迎えに行った。
そして、静かに、合流し。
駅に向かう。
「ここでも……。 勉強。
教えてくれませんか?」
ホームについてから。
ためらいながら、洸希が言う。
公園に近い駅とは、違う駅だから。
ためらっているのかな?
いや。
やっぱり、分太が言うように……。
「もちろん、いいよ!」
口では、そう、明るく答えたが。
内心は、不安だった。
それから、僕の一言で。
ホームのベンチに座って。
問題集を、取り出そうとしている、洸希に。
分太に言われてから。
気になっていたことを。
訊いてみることにした。
「ねぇ。 こうき」
「はい。 なんですか?」
「実は、僕に。
気を遣ってたりしない?
気を遣って、わざわざ。
勉強を教わったり、してない?」
「えっ」
「いや。
前に、本当は、勉強が嫌いだけど。
むりして、勉強している、って。
まるで。
お母さんの期待に応えるために。
しているみたいなこと。
言っていたのに。
僕と電車を待つときの。
気まずい時間を、埋めるために。
休みの日だから、本当は嫌だけど。
わざわざ。
勉強を、教えてもらっているのかな。
って思って。
それに、僕が、教師だから。
なおさら、気を遣ってくれているのかな。
とかも、思ったんだけど。
本当は、休みの日に、勉強するなんて。
嫌なんじゃない? むりしてない?
大丈夫?」
「とんでもないです!
むしろ、僕のほうが。
休みの日なのに。
授業みたいなことさせて。
申し訳なく、思っていたんです。
でも、ゆうたくんの。
教え方は、上手いので。
すんなり、頭に入ってきやすくて。
今まで、分からなかった問題が。
家に帰ったら。 難なく。
解けるようになっていて。
今まで、解けなかったことが。
嘘のようなんです。
本当の先生に。
教え方が上手いっていうのも。
失礼なのかもしれませんけど。
ゆうたくんのような先生に。
無料で教えてもらえるなんて。
ありがたいなぁ。 貴重だな。
と思っているので。
全然、苦じゃないです。
むしろ、逆です。
実は、学校でも、塾でも。
どんどん、先に、授業が進んでいって。
ついていけない時が、あるんです。
特に、算数は。
解き方を、覚えたばかりの時には。
難なく、解けていたとしても。
ちょっと、難しくなるだけで。
一気に、解けなくなって。
行き詰まってしまうんです。
なんとか、自力で解こうとしても。
全然、解けなくて。
先生に、質問しようとしたら。
もう、先に進んでいて。
次の問題の解き方を。
説明しているんです。
それで、僕だけ、立ち止まったまま。
授業は、進んでいくんです。
それでも、なんとか、追いつこうとして。
次の問題に、目を通すんですけど。
そもそもの、基礎である、最初の問題を。
分かっていないので。
さらに、難しくなった、次の問題は。
なおさら、解けなくて。
そのことについて。 なぜ解けないんだと。
母や、先生に怒られて。
嫌な思いをして。
やる気が起きなくて。
さらに、そのことも。
気合いが足りないとか。
他の子に、置いていかれるぞ!
とか言われて、怒られて……。
悪循環の繰り返しで。
さらに、勉強が、嫌になるんです。
僕にとって。
勉強ができないことは。
母の期待を、裏切ることになるので。
そうならないためにも。
努力しているつもり、なんですけど。
努力が足りないんだろうなって。
思うんです。
このままじゃ、優等生にはなれない、って。
母が、周囲の人に。
“息子さん、優等生で、素晴らしいわね!”
って褒められて、喜んでいたのに。
優等生から、かけ離れていきそうになるんです。
でも、それが、怖くて。
あの日に、戻れないって。
優等生を、キープしておかないとって思って。
必死に、頑張っていたんです。
母の、期待に応えたいのに。
そんな思いなんて、お構いなしに。
実際には、解けない問題も多かったんです。
本当は、優等生なんかじゃないのに。
優等生を、演じている。
そんな気がしていて。
実力はないのに。
優等生と呼ばれるまでの、能力を上げていたんです。
仕方ないですよね。
見せかけの優等生、なんですから。
でもそれが、かなりきつくて。
特に、苦手な算数は。
難なく、スムーズに、問題を解いて。 優等生を演じて。
母に、褒められたい、理想があるのに。
実際には。
問題をすんなり解けないことに。
苛立っていたんですけど。
どうしようもなくて。
やり場のない、怒りを抱えていて。
心が晴れることは、なかったんです。
けど、ゆうたくんに。
教わるようになってからは。
難なく、問題を解けるようになったので。
苛立つことも、きつくなることも。
軽減していきました。
嫌いなことを、強いられているので。
解消されることは、ないのかもしれませんけど。
前よりは、大分、楽になった気がしています。
それに、ゆうたくんに教わる前は。
問題の解き方は、分かっていても。
なぜ、この答えになるのかが。
分からなかったんです。
それでも。
先生が、こうやって解くんだよ、と教えたから。
これで、当たっているんだろう。
そういう風に思っていました。
でも、ゆうたくんには。
こういう理由から、こういう答えになる。
という、過程まで、教わって。
学ぶことができているので。
学校や塾で、分からなかった、モヤモヤが。
ゆうたくんに訊くことで。 気持ちいいくらいに。
キレイに、解決していっているんです。
それに、ゆうたくんが。
算数を担当している、と聞いて。
すごく、嬉しくて。
ゆうたくんに。
教わるようになってからは。
算数の成績も、上がった気がするんです!
だから、すごく感謝しているんです。
ゆうたくん、本当に、ありがとうございます!
なので、ゆうたくんの言うように。
休みの日も、勉強はしていますが。
日頃の、勉強する姿勢とは。
全く違うので。
気まずさを埋めるため、なんかじゃないです!
むしろ、この勉強会を、楽しみにしていますので」
洸希は、驚いたのか。 最初のほうは。
焦りながら、話していたが。
最後のほうは、嬉しそうに、話してくれた。
僕が、むりをさせているのかも。
と思っていたことが。
まさか、洸希にとっては。
楽しみにしていること、だったなんて。
思いもしなかった。
やはり、同じ出来事でも。
その人、それぞれによって。
捉え方が違うんだなと。
改めて、思った。
因みに僕は。
算数じゃなくて。 数学の担当なんだけど……。
そこは。 まぁ、いいや!
「なので、今日も。
よろしくお願いします!」
洸希は、そう言いながら、微笑み。
僕に、問題集を見せていた。
「もちろん!」
それから僕は。
わだかまりがなくなり。
スッキリした気持ちで。
洸希に、算数を教えた。
それから、電車に乗り。
公園近くの駅で降りて。
しばらく、歩いてから。
公園に続く坂道を上る。
今日は、僕と洸希が、1番かな?
それとも、もう既に、誰か来ているかな?
そんなことを、考えて。
僕は、公園が近づくにつれ。
わくわく感が、増していた。




