隠し事はなし
翌日。
本来なら、僕は、洸希に。
連絡するべきなのだが。
少し、気になることがあり。
まずは、分太に、電話した。
『もしもし』
『もしもし』
『お前、電話する相手。
間違えてんぞ!』
『いやいや。
分太でしょ。
あってるよ!』
『間違ってんだろ。
お前は、おれじゃなくて。
洸希だろ!
そもそも、おれは。
昨日、行ったから。
おれには、報告しなくて、いいんだよ!』
『だから、違うんだよ。
分太には、報告するために。
電話したんじゃ、ないんだよ』
『はっ?
じゃあ、なんで。
電話してきたんだよ!
おれも、泰樹に、しなきゃいけねぇってのによ!』
『だから、今から。
それを話そうとしているのに。
勝手に、話を進めたのは。
分太でしょ』
ダメだ。
少し、電話するだけなのに。
すぐ、ケンカをしてしまう。
今回は、仲裁してくれる人が、いないのに!
『じゃあ、さっさと。
話せよな!』
『だから。 今から、話すって。
言ってるでしょ』
ダメだ。
このままだと、きりがない。
『おう。 話せ!』
分太も、僕と。
同じことを、思ったのか。
僕に話すように、促す。
それから僕は、ようやく。
話を切り出す。
『それで、気になったんだけど。
昨日、優介と。
隠し事は、なしって。 話したけど。
それって。
昨日は、来てない皆にも、いえること、なんだよね?』
『あぁ。 もちろんだ』
『だったら、報告する内容も。
包み隠さず、正直に、報告するべきなのかなって。
それなら、優介が、過呼吸になったことも。
優介の過去も、報告したほうが、いいのかな。
って、思ったんだけど。
それだと、なんだか。
優介に、悪い気がして。
どうすればいいか。
分からなかったから。
分太に、訊いてみようと、思って。
今に、至るんだけど』
『なるほどな』
『それで、どう思う?』
『あいつが過呼吸になったことも。
その原因も。 報告するかは。
あいつ次第だろ。
隠し事はなし。 とはいっても。
話すか、話さないかの判断は。
おれたちがすること、じゃねぇだろ。
隠さず、打ち明けるのも。
時と場合によるってことだ。
ただ、気になることは。
できるだけ、打ち明けてほしいけどな!』
『なるほど』
『それに、あれは。
優介の過去だろ。
なのに、おれたちが。
出しゃばって。
語るわけには、いかねぇだろ。
頼まれてもねぇのに。
勝手に、優介の過去を、言いふらすのは。
最低だぞ!
もし、そんなことしたら。
あいつ、おれたちを。
信用できなくなるぞ!』
『僕は、そんなつもりじゃ』
『真面目なお前は。
“隠し事はなし” という。
決まりごとを、守ったつもりでも。
相手には、それが。
伝わらないことも、あるんだよ!
お前が、それを1番、理解しているはずだろ。
それともまた。
同じことを、繰り返すつもりか?』
『そうだね。
反省したはず、なのに。
危うく、繰り返すところだった。
想いを伝えるって。 難しいね。
僕は、そんなつもりなくても。
相手の捉えかたによっては。
悪いように、捉えられてしまうことも、あるから』
『あぁ。 そうかもな。
ただ。
優介の身になって、考えたときに。
自分の過去について。
辛さを、押し殺してまで。
せっかく、話したのに。
いとも簡単に。
自分の知らないうちに。
その話が、皆にも。
知れ渡っていたとしたら。
お前なら、どう思う?
いい気は、しねぇだろ
裏切られた気がするだろ。
おれたちを、信用できなくなるだろ』
『たしかに、そうかも……』
『そういうことだ』
『かといって。 あいつが。
心配させるの、分かってて。
わざわざ、皆に、打ち明けるとは。
思えねぇが。
そこを、強制的に。
打ち明けろっていうのも。 違うだろ。
それだと、優介の意思は。
無視してしまうことに、なるからな!
だから、お前は。
難しいことは、考えずに。
このことに関しては。
なにも触れずに。
優介に、任せておけばいいんだよ!
なにもしないことほど。
簡単なことはねぇだろ。
ただ唯一、おれたちに。
出来ることが、あるとするならば。
もし、あいつが。
言わない選択をした、としても。
あいつが、決めたことだから、と思って。
それを、尊重することだ。
おれも、そう思うし。
あいつが、おれたちと同じ立場でも。
きっと、そう言うと思うぞ!』
『そうだね』
とにかく、気になっていたことの、答えが出て。
スッキリした。
『分太。 ありがとう。
優介のことは。 分太が言うように。
なにも触れずに。
謝罪したことや。
心音さんのお母さんに。
全て、打ち明けたことを。
報告するね』
そして、信じられないが。
分太に。 お礼を言っていた。
『おう!
お前も、早く、洸希に。
連絡しろよな。
おれも、泰樹に。
今から、連絡するからさ』
『うん。 そうする。
じゃあ、またね!』
『おぉ! またな』
分太との、電話を切り。
それから。 僕は、早速。
洸希に電話する。
『もしもし』
『もしもし。
洸希。 今、電話、大丈夫?』
『はい。 大丈夫です!』
『じゃあ、早速。
本題に、入るけど。
昨日、ようやく。
3人で、心音さん宅に、伺って。
心音さんのお母さんへの、謝罪と。
心音さんの、お見舞いに、行けたから。
その、報告をしようと思って』
『それで、どうでした?』
『ちゃんと、謝罪、出来たよ』
『それは、よかったです!』
『それと、心音さんのお母さんに。
僕らの関係とかを、全部。
正直に打ち明けたら。
意外とすぐに、信じてくれたんだよね』
『そうなんですね』
『それでね。
心音さんに。
皆、君に。 感謝しているからね。
ってことも、ちゃんと、伝えたから。
安心して!
だから。
今度は、洸希たちも。 お見舞いに……』
“いけることになった”
という言葉を、言いかけて。
言葉に詰まる。
そして、そういえば。
心音さんの、お母さんに。
6人で、お見舞いに伺っていいかの。
再確認をしていないことに、気づく。
『ゆうた……くん?』
そして、洸希に、心配させてしまう。
『あっ! ごめん。
とりあえず、今は。
謝罪が、上手くいったのと。
事実を全て、打ち明けたことの。
報告だから。
次のことは、また。
連絡するから』
そのことに気づいて。
急に、焦って、早口になってしまう。
『はい。
……分かりました』
洸希も、ためらっている。
『ごめんね。
じゃあ、またね』
『はい。 また』
そして、電話を切り。
次は、心音さんのお母さんに。
連絡することにした。




